挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
睡夢の人 作者:まつもと なつ
しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

25/36

違和感

 不快な電子音がマナミの意識を引き戻そうと、部屋中に鳴り響く。
 布団の中から腕を伸ばし枕元の目覚まし時計を掴むと、手探りでアラーム停止ボタンを押す。まだ開ききらない目で必死に文字盤を見ると、マナミは何やら違和感を覚えた。

「あれ……こんな時計だったっけ……?」

 時計を枕元に戻し、天井を見上げる。昔ながらの板張りの天井が目に飛び込んできた。またもマナミにはしっくりこない。
 布団の上に起きあがり、周囲を見回す。
 六畳ほどの室内には、ハンガーラックと引き出し式の衣装ケース、小さな押入、ピンクのカーテン、そして床の上に布団。
 自分の部屋なのだという認識はあるのだが、マナミはどこか居心地の悪さを感じずにはいられなかった。
 と、ドアの方からカリカリと音がする。無意識に猫だと分かり、布団を出てドアを開けると、足元にやはり猫。だがマナミはその猫を見ても、すぐに名前を呼ぶことができなかった。

「ええと……あれ? 何でだろう。おかしいな……」

 しゃがんで猫の顎をくすぐると、ごろごろと喉を鳴らす。ふと、その首元に何か物足りなさを感じた。

「首輪、どこ行っちゃったの?」

 寝室を出て、リビングを歩く。マナミはここでも現実感を得られない。気持ち悪さを堪えながら首輪を探していると、猫の食事用の皿が目に入った。
 ローマ字で「MARO」と書かれている。

「ま……ろ……? ……あ!」

 マナミは一気に現実に戻って来た。

「ごめんごめん、寝ぼけてたみたい」

 足元のマロに謝ると、やっと分かったか、とでも言わんばかりに、マロは自分の皿の前に陣取った。

「何で首輪してると思ったんだろう……」

 マロは首輪など、初めからしていないのだ。
 マナミは、自分の寝ぼけぶりに一人で顔を赤くする。

「それにしても……嫌な夢だったな」

 いつもなら朧気にしか覚えていなかったが、今日の夢は強く記憶に留まっていた。
 夢の中の夫婦が飼っている猫が、たまたま開いていたドアからするりと逃げ出してしまったのだ。猫が居ないのに気付いたのは、それからやや時間が経った頃である。
 食事の時間になっても姿がないので、部屋中探し回ったが見つからない。外に出てしまったと分かり、慌てて近所中名前を呼びながら歩いたが、一向に姿を現さない。
 すでに夜も遅くなり、この日は引き上げて次の日また探すことにした。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ