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睡夢の人 作者:まつもと なつ
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 女将が帰った後、玄関にタカヤを放置したままマナミはリビングへと戻り、寝床にいたマロを乱暴に抱き上げるとそのままソファーに倒れ込み、ひとしきり泣いた。

 何故こんなにタカヤに苦しめられなければならないのだろう。
 何とも思っていなかったはずなのに、どうして。
 はっきりしたいような、でも、そうすると今の関係を壊してしまいそうで怖い。
 心臓をきりきりと締め付ける感覚に、息も上手くできない。
 いつからこんなにタカヤに心を持って行かれていたのだろう。

 マナミはまんじりともせず朝を迎えた。
 朦朧とした頭の中で、一つの答えだけがはっきりと浮かび上がる。

「ああ……私、タカヤが好きなんだ」

 口に出した途端、瞼が落ちた。


 マナミは微睡みながら、夢を見ていた。
 自分とそう歳の変わらない女性が、何かを一生懸命探している。傍らには小太りの男性。
 二人は必死に何かを叫んでいるが、マナミには聞こえない。
 とうとう女性は座り込んで、顔を覆って泣き出した。男性は女性の背中を優しくさすっている。
 二人の姿がぼんやりと遠ざかり、霧に包まれたように真っ白になると、今度は猫の鳴き声が聞こえてきた。
 マナミは鳴き声がする方に行こうと思ったが、何故か足が動かない。下を見ると、膝まで地面にすっぽりと埋まっているではないか。必死で抜け出そうともがいてみたが、足はびくともしなかった。
 やがて鳴き声も遠ざかり、霧の中にマナミだけが取り残される。途方に暮れていると、突然地面が揺り動き、あちこちにひび割れが入り始めた。
 逃げるために足を引き抜こうと頑張ってみたが、どういう訳か、ますます地面に飲み込まれていく。
 腰まで地面に埋まった時、音もなく地面が崩壊し、マナミは真っ暗な空間に投げ出され高速で落ちていった。


 ガクン! という衝撃に驚いて、マナミは目を覚ました。

「うわっ! ……ああびっくりした。夢か……」

 マロはとうに起きて自分の寝床に帰っていた。
 安心して長く息を吐き出すと、壁の時計が視界にが入ってくる。まだはっきりとしない頭でぼんやり眺めていたが、次第に意識が現実に戻り、マナミは飛び上がった。

「十一時……っ!?」

 出勤時間はとっくの昔だ。慌てて身支度を整えると、マロの食事だけ用意をし玄関へと向かう。
 玄関には、未だにタカヤが転がっていた。

「このロクデナシ!」

 昨夜の事を急に思い出し、無性に腹がたったマナミは、狭い玄関のほとんどを占領するタカヤの太股を思い切り蹴り上げた。
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