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10年ごしの引きニートを辞めて外出したら自宅ごと異世界に転移してた  作者: 坂東太郎
『第二章 ユージはぼっちニートからニートに進化した』
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第四話 ユージ、異世界の幼女を看病する

 森で見つけた子供は薄汚れ、やせ細っており、意識もなかった。雄二は寝ているのかと声をかけ、揺するものの反応はない。

 胸まである赤毛の長い髪と顔つきを見ると、女の子であるようだ。身長は1メートルちょっとであろうか。

 そのままにするわけにもいかず、雄二は幼女を抱え上げる。やせ細っているからか、体重は驚くほど軽い。揺らさないようお姫様抱っこで自宅へ連れ帰るのであった。

 これは誘拐じゃない、保護なんだと己に言い聞かせて。


 家にたどり着いた雄二は、赤毛の幼女をリビングの革張りソファに横たえる。決して汚れや饐えた臭いが気になってベッドを選ばなかったわけではない。

 骨と皮ばかりにやせこけ、目を覚まさない幼女。明らかに健康ではない。さすがの雄二でもわかる。

 汚れを落とす、食事を作って食べさせるなど、目を離すことなく看病するには二階の自室よりもリビングの方が良いと思ってのことである。


「ひくぐらいやせちゃってるし、これたぶん遭難状態だったんだろうなあ。意識がないからスープも怪しいし、とりあえずぬるめの白湯に砂糖と塩いれて飲ませてみるか……」


 雄二がキッチンでお湯を沸かしている間、コタローはだいじょうぶかなあ、しんぱいだなあとばかりに幼女がいるソファのまわりをうろうろと歩きまわる。


 何となく人肌まで冷ました白湯を入れたコップを持ち、幼女の上体を起こす雄二。

 まずはちょっとだけ、と言いながらごく少量を幼女の口に注ぐ。

 だいぶんこぼれつつも、根気強く繰り返し注いでいく。

 コップの半分ほどそんなことを繰り返すと。


 うっすらと幼女の目が開く。


「お? おお! だいじょうぶ? あ、しゃべらなくていいよ、まずはこれ飲み込んで」


 まだ幼い彼女の口にふたたびコップをあて、ゆっくり傾けて少しだけ口に注ぐ。

 コクリ、と喉を鳴らして飲み込む幼女。


 長い時間をかけてコップ一杯分の白湯を飲み干すと、幼女はふたたび目を閉じる。


「なんとかなった、のかな? とりあえず白湯とスープぐらい用意しておくか。コーンポタージュの素がまだあったはず……」


 今日は長い夜になりそうだ、と静かに決意を固める雄二であった。



「もう朝か……太陽が黄色く見えるぜ……」


 雄二の独り言に、もう、こんなときまでなにいってるの? と言わんばかりに冷たい目を向けるコタロー。


 決して雄二がいかがわしいことをしていたわけではない。徹夜明けのテンションならではの小粋なジョークである。そもそも雄二はロリコンではない。巨乳派なのだ。

 それ(雄二の性癖)はさておき。


 最初は塩分とカロリー補給で塩と砂糖を入れた白湯、その後は薄めたポタージュスープ、その間に顔や手足を蒸しタオルで拭いて、と雄二のお世話のかいあってか、スヤスヤと眠る幼女。

 心持ち顔色もよくなったように見える。


「いちおうスープを用意して、お風呂と着替えも準備しておくか……。同じでかい服でも、俺のより妹の服の方がいいだろ」


 幼女が目を覚ました時のため、バタバタガサゴソと準備を進める雄二。


 いつもなら雄二の行動をチェックするようについてまわるコタローだが、今日はリビングで幼女を見守るつもりらしい。だいじょうぶかなあ、しんぱいだなあとばかりに立ったり座ったりうろうろしたり、時にソファに両前脚をかけて覗き込む。優しい女である。犬だけど。


 準備を整え、眠る幼女を見守る一人と一匹。


 緊急事態のために気づかなかったが、雄二にとっては10年ぶりの家族以外の他人である。

 だんだん、目が覚めないかなと心配する気持ちより、目が覚めたらどうしようという気持ちの方が強くなってくる。


 徐々に緊張が高まり、精神の安定のため雄二がコタローを抱え込んでから、どれぐらいの時間が経っただろうか。

 最初はうっすらと、やがて発見してから初めてはっきりと目を開ける幼女。


「め、目が覚めたかな? 体はどう? だだだだだいじょうぶ?」


 お前が大丈夫か、そもそも言葉が通じないだろ、と雄二が脳内でセルフツッコミを入れる。


 幼女が口を開く。


「あの……ここはどこですか?」

※冒頭に「女の子だろう」と判断する描写を付け加えました

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