#46~Tsubasa~
「ほ、本当だ…。髪が…!!」
凜桜さんのいうとおり、俺の髪は朱色に、都の髪は浅葱色に変わっていて、シャワーのところにあった鏡まで走って確認してみると、目の色も黒から朱色に変わっていた。今一つ状況がつかめないまま、風呂へ戻る。
「どういうことなんですか、曖斗さん!俺たちは人間界の人なんじゃ…」
「いや、それは家に帰ってから各々の両親に聞いてみるとよい。ついでに凛桜や悠也、誠也も挨拶がてら連れて行ってあげてほしいのだが…」
「わ、わかりました…。でもこの髪と目のままだと…」
心配そうな都に、悠也さんは優しく答える。
「勿論、髪は黒に戻せるぞー。人間界に戻るころになったら教えてやるよ。とりあえず、今日は桜天界の方に泊まって行けよ。疲れてるだろうし。目は…凜桜、"あれ"ってすぐに出せる?」
「あー…作らないといけないと思う。翼くんと都ちゃん、視力検査の結果、覚えてる?」
「私は両方Cです。」
「俺はどっちもAです。」
"あれ"ってなんだろう…すごく気になる。
「了解…じゃあ私はみんなより早めにあがるとするか!みんな、ゆっくりね!」
お風呂から上がろうとする凜桜さんの腕を悠也さんがつかむ。凜桜さんはきょとんとした顔をしている。
「俺も行く。誠也も来いよ。」
「そうだね…凜桜ちゃん、三人で行こうか!」
「…うんっ!!行こう!じゃあ、翼くんと都ちゃんは6時10分になったら8階の受付に来てくれる?外扉からでも、階段からでも、大丈夫。看板がかかっていると思うから。
『わかりました。』
俺と都が返事をすると、三人は浴場の外へ行ってしまった。ふと夢斗さんが口を開く。
「そういえば今年の桜舞祭の"パーティー"、派手にやるみたいだな。お前ら、相手は決まっているのか?」
"パーティー"とは、二日に分けられて行われる桜舞祭の二日目に行われる伝統的かつ一大イベントだ。出し物を片付けた後、学園が誇る大ホールで小中高一斉に行われる。この学校は小中高の男女の比率が教職員含めて2:1のため、パーティーでは二人の男性が一人の女性をその夜だけエスコートするのが桜舞学園の伝統となっている。相手を決めるのは早いもの順のため、桜舞学園の天使である凜桜さんやイケメンである悠也さんや誠也さんを狙う人も少なくはない。
「私は、翼としかまだ約束してなくて…むしろ女子に迫られるんですよ。」
「蘭も、れーくんとしかお約束してない…」
それを聞いた曖斗さんと夢斗さんは、都と蘭ちゃんに提案をしていた。
「では、翼と都は夢斗と組んでくれないか?私たちも相手が見つかっていなくてな…私は蘭と組みたいのでな。」
「全然大丈夫ですよ!!」
「蘭、れーくんとたいちょーさんと一緒にパーティーいける!!やったー!!」
優しく笑いかけた曖斗さんはとても紳士的だった。格好いい…俺もあんな風に…。