名探偵がやって来た!
有名な推理小説作家の小此木 遥。
彼女は都内のとあるアパートに住む現役の高校生だ。
そんな彼女が、部屋の壁に設置された液晶テレビでニュースを観ていると、画面に有名な高校生探偵、鷺ノ宮 優助の映像が映され、画面右上に「あの名探偵、またもや事件解決!」と言うテロップが表示された。
「へえ、名探偵かぁ」
遥は頬をほんの一寸だけ赤らめてニヤニヤした。
「会いたいなぁ」
ピンポーン──と、部屋にチャイムが響く。
遥はテレビを消すと直ぐ様玄関に駆けてドアを開けた。
外には、先程画面に写っていた人物が立っていた。
「えっ・・・?」
硬直する遥。
「あの、作家の小此木さんですよね?」
遥は興奮した。
「あっ、あなたはあの有名な高校生探偵の!初めましてっ、小此木 遥です!」
遥はそう言ってお辞儀をし、顔を上げて訊ねる。
「それで、あなたの様な御方が私にどの様な御用件で?」
すると優助は便箋を取り出し、遥に差し出した。
「何です?」
遥は便箋を手に取り、開けて中から紙を取り出した。
「えっ、えぇ!?」
遥は声を張り上げ、頬を真っ赤に染めた。
(こっ、これってラブレターじゃん!こんなの私なんかが貰って良いの!?)
戸惑う遥。
「あの、やっぱり、駄目ですか?」
優助は恐る恐る訊ねた。
「中入って!」
遥は優助を強引に中へ引き入れ、ドアを閉めて施錠し、部屋の全ての窓とカーテンを閉めて電気を点け、彼をリビングに案内して席に着かせ、お茶を用意した。
「あの、何でこんな事・・・?」
その問いに遥はバンッと机に両手を置き、
「何で?って、マスコミに見られたら大変な事になるじゃないですか!」
と怒鳴り散らした。
優助はあまりの声のでかさに耳を押さえた。
「で、私と御付き合いしたいと言う事だけど、私なんかで良いの?てか何で私ん家知ってる訳?住所や電話番号等の個人情報は一切公開してない筈だけど・・・?」
「あの、先ず落ち着いてくれません?順番に話すから」
遥は深呼吸をした。
「えっと・・・じゃあ、最初に私ん家を知ってる訳を聞かせて?」
「それは一寸・・・」
「ふうん。言えないんだ?」
遥は不適に微笑んだ。
優助は俯いて答える。
「す、ストーカーしてたんです」
「えっ?」
「1ヶ月前、出版社から君が出て来たのを見掛けて、可愛いなって思って、後を付けたんです」
(嘘、全然気付かなかった・・・)
「それで、家が解ったから、今度は出版社に行って何してる娘か聞いたんです。そしたらあの本書いてる娘だってのが解って・・・。あ、この本読みましたよ」
優助はそう言って一冊の推理小説を取り出した。
「へえ、読んでくれたんだ?」
「まだ途中だけどね。この他にも家に沢山ありますよ。俺、小此木さんの大ファンだから」
「あら奇遇ね。私もあなたの大ファンなのよ。・・・って、この話しは置いといて、何でもっと早く来なかったの?」
「タイミングが合わなかったんだ。ここのところ、事件続きで時間が無くて・・・」
「・・・成る程、だから今日な訳ね」
「はい。それで、お返事の方は?」
(そうね。悪く無いかも。だって彼と付き合ってれば事件が転がり込んで来る訳でしょ?で、彼が解いた事件を私が小説にして出版社に売り込む。うん、儲かるわ!)
チャキーン!──遥の両目が両さんの如く¥に成る。
「良いわ!あなたと付き合ってあげる!」
「えっ、ホントに良いの!?何か夢みたいだな」
「ホッペ抓ってあげる」
遥はそう言って立ち上がり、優助の頬に手を伸ばして思いっ切り抓った。
「いででででっ、夢じゃないです!てか放して!」
「嫌だ。後1時間は続けるわ。ストーカーした罰よ」
「傷害罪で訴えるぞ」
「ストーカーもいけない事よ?」
言葉に詰まる優助。
そうして1時間が経ち、優助は解放された。
「それじゃあ、俺帰ります」
優助はそう言って席を立って玄関に向かう。
(あ、駄目。行っちゃ駄目!)
そう思った遥は咄嗟に優助の下に駆けて腕を掴んだ。
「あの、もう少しだけ、ゆっくりしてってくれると、嬉しいって言うか・・・。否、良いのよ?あなたが忙しいなら」
(って、何引き留めてんのよ私は!?)
「解った。君がいて欲しいなら、暫くいてあげる」
「えっ・・・?」
刹那、遥の頬が赤く染まり、心臓がバクバク高鳴る。
(ちょっ、何この展開!?夢なんかじゃないよね!?てか落ち着け私の心臓!)
「ん?顔が赤いけどどうしたの?」
「嘘!?」
遥は慌てて顔を両手で覆った。
顔が火照って汗を掻いている。
「ごめん、やっぱ帰って?」
そう言うと、遥は顔から手を退けて優助の背中を押して玄関まで行き、鍵を開けて外へ追い出し、「また明日!そこの角にある公園で待ってるから!」と言って靴を渡し、ドアを閉めた。
遥はドアを背にして寄っ掛かり、「はあ・・・」と溜め息を吐いた。
同じ頃、都内の廃ビルでは、ある男がセーラー服の女子高生に襲われていた。
「やめろ!助けてくれ!」
男は叫んだ。
しかし、此処は屋内。しかも外に音が漏れない仕組みなので、当然男の叫び声等聞こえやしない。
「うわっ!」
男は躓いて転んだ。
女子高生は男を殺意に満ちた顔で見つめ、持っていた金属バットで男の頭を殴り付けた。
「うっ!」
男は呻き声を出して意識を失った。
女子高生は動かない男に対して何度も何度も繰り返しバットで殴り付ける。
そして気が付くと、男は血まみれの肉の固まりと化して死んでいた。
女子高生は血まみれのバットを捨て、徐にその場を跡にした。
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