小悪魔編です。
原作は体験版しかやったことのない(しかもチルノが永遠のライバル)の作者にはここから先は未知の領域す。
なので一段と原作崩壊が進んでいるかも知れませんがどうか生暖かい目で見守ってやって下さいな。
はじめまして。小悪魔です。「こあ」と、そう呼んでください。
あと、助けて下さい。現在、紅魔館が誇るヴワル魔法図書館は、
――ティラノサウルスのティラちゃんに占拠されました。
……はじめから話します。
私こと、こあは主人たるパチュリー・ノーレッジ様の使い魔としてこの幻想郷にやって来ました。現在は図書館司書の仕事をやっています。図書館の本の整理や、館内の清掃、本の貸し出しなどが主な仕事内容です。しかし私がいるここ、紅魔館の地下図書館は広大です。やってもやっても仕事が終わりません。広すぎです。でも昔はもっと広かった、との事。
なんでも今でこそ、ここは地下図書館となっていますが、昔は現在紅魔館が建っている地上部分も全て図書館に含まれていたそうです。しかし、紅魔館の主レミリア様の妹様が力を暴走させて、地上部分を全て吹き飛ばしてしまいました。そのあまりにも強大な力を危険視され、妹様はこの地下図書館よりさらに地下に、今でも閉じ込められているそうです。
……少し可哀そうですよね。
話が逸れました。
とにかく図書館は広く、司書の仕事は大変です。しかし、私がもっとも時間をとられるのは、我が主たるパチュリー様のお世話だったりします。
――その時もパチュリー様に紅茶をお淹れしていた時のことでした。
「ねえ、こあ。恐竜って食べられるのかしら?」
「……」
私の語学力が低いせいか、パチュリー様は時々私には意味の分からないことを仰います。その時も私はこういう時の正しい返答の仕方はまだ知らなかったし、あまりその話に興味もなかったので、
「食べてみたら分かるんじゃないでしょうか」
などと、適当に答えてしまいました。それがいけなかった。
「……成程。その通りだわ、やってみましょう」
と、パチュリー様。どうやらやる気満々です。さらに、なんか気合いを入れて召喚用の魔方陣も描きはじめました。
マジですか。マジなんですか。
つーかそんな簡単に「実際にやってみた」とか、某トリビア系番組みたいに出来ちゃうものなんですか。
……って、わーお。そんなこと考えている隙に恐竜図鑑まで引っ張り出してきちゃいました。
おおーい。パチュリー様―。帰ってきてー。こっちの世界に帰ってきてー。そっちの世界にいっちゃ駄目ですよー。
しかし、そんな私の心の叫びは届かず、さらに作業を進めていくパチュリー様。ああ、どうやらこあは先程、返答を間違えてしまったようです。
……一生の不覚。こんなことで不覚を覚えていたら一生の内に何回、不覚をしなくちゃいけないのかわかりませんが、こあ、一生の不覚でした。
誰か!パチュリー様の取扱説明書をこあに下さいっ!
またまたいらぬことを考えている隙にどうやら魔方陣は完成したようです。いつもの魔法実験より数倍速い仕事っぷり。つーか何? 何が貴方をそこまで突き動かしているの?
瞬間、魔方陣が光はじめます。……ああ、なんかもう後戻りは出来そうもありません。神様、せめて、お願いだから大人しい恐竜であって下さい――。
「召――喚! 甦れ! ティラノサウルス!!」
……。あるれぇぇー? どうやら神様はいないようです。神も仏もいないとはまさにこの事です。魔法陣の真ん中に立つティラノサウルスと目が合います。ああ、これはどうも初めまして。
……つーか、
「がおーーん」
……マジでけぇ。図書館の天井が高かったから良かったものの、通常の天井ならぶち抜いてしまいそうな大きさ。私はあまりの恐怖にパチュリー様を見ました。するとパチュリー様は恐竜に近づいていき
「……まあ、かわいい。おいでティラちゃん」
何故か可愛らしいニックネームを付けたパチュリー様は、ティラちゃんに友愛の握手を求めて近付きます。しかし、
――ぶんっ!
ティラちゃんに友愛の握手を求めたパチュリー様は、……その大きな尻尾で吹っ飛ばされてしまいました。
「って、うそおぉぉぉんんん!!!!」
……とまあそんな訳で、私は気絶したパチュリー様を背負い逃げ回っているわけですが。ピンチです。未だかつてない大ピンチです。
どうやらパチュリー様は恐竜が逃げ出さないように、出入り口を魔法で封鎖しているらしく、図書館から出ることが出来ません。さすがパチュリー様。安全管理もバッチリですね。馬鹿野郎。
パチュリー様と共に、完全にジュラシックパークと化した図書館の中を逃げまわる私。それはまるで映画の主人公にでもなった様なシュチエーション。でも現実の私は超、必死。こういう場合、脇役から先に死んでいって最終的には主人公だけが助かるというものなんですが、この物語では、主役から脇役、カメラマンに監督まで、全て私に預けられています。物語の筋書きは、これからの私の行動次第という訳です。やばいじゃん、私。
一応、弾幕で応戦してみたものの、効果は今ひとつの模様。欠伸しながらこっちに向かってきます。それを見ていちいち逃げ出す私。まともに相手を見れません。てゆーか、あんなの見ながら魔法の詠唱なんてこあには無理なんですってば。
頼みの綱の馬鹿(パチュリー様)は起きる気配は無し。腹立つほど安らかに眠っておられます。その寝顔を見ながらいっそのこと放り投げてしまおうかとも思いましたが、そんなこと出来るわけないし。
とか考えてる間に、
――ドゴォォォン。
あ、やべぇ。来ちゃった。来ちゃいました。厄が。とびっきりの厄が。私は散々逃げ回り疲労困憊な体の鞭打って再び走ります。もう、飛ぶ力も残っていません。それでも止まっていたら食べられる。私は必死になって逃げ回ります。でも、パチュリー様を背負っているせいか、スピードはでません。私とティラちゃんとの距離は段々と狭くなっていく。
……。
ああ、本当やばいなあ……。本当にやばい。どう考えてもティラちゃんの方が速い。私が食べられるのも時間の問題に思えました。私の頭にまた黒い考えが過る。……このまま、パチュリー様を餌にして逃げてしまおうか。
「……だから、そんなこと出来るわけないって言ってるでしょうが……」
私はどこまでいっても“小”悪魔のようです。悪魔のように非情にはなりきれない半端者。でもだからこそ、そんな私を拾ってくださったパチュリー様を見捨てることは、絶対にできませんでした。
……ティラちゃんの足音が聞こえる。もう逃げ切るのは無理そうです。
私は私が使える最高の防御魔法でパチュリー様を覆い、本棚の影に隠しました。きっと、もう少ししたらレミリア様や咲夜さんが気付いてくれるハズ。それまで私が時間を稼ぐ。こんなご主人さまでも私にとって大事な人だった。絶対に死なせたくない。
今、守ってやれるのは私だけ。私が守ってあげなきゃいけないんだから。私がティラちゃんを止めないといけないんだから。
「かかって来なさいっ! この、大トカゲ!!」
…………。
まともに対峙したティラちゃんはものすごく大きかった。私の何倍だろう? そんなことを考えることすら愚かしいほど大きかった。
ティラちゃんが唸る。その口に目がいく。……口も大きいなぁ。びっしり牙の生えたその口で噛まれたら、私なんか簡単に死ねるでしょう。
……恐怖で顔が歪んでいくのが分かる。怖い。すごく怖い。逃げだしたくてたまらない。……でも、
「怖くないぞ。お前なんて怖くないんだからな!」
精一杯の虚勢を張る。足はガクガク。今にも泣き出しそう。横で誰かが見ていたら、なんと滑稽に見えたでしょうか。
「えいっ! えいっっ!!」
もう私にはまともに魔法を撃つ魔力なんか無く、だからそれは、とても弾幕と呼べるような代物ではありませんでした。蚊に刺されるよりも効いていなかったかもしれません。
それでも、あの方の元に近づけさせるわけにはいかない。絶対に!
「止まれ! 止まれぇ!!」
当然そんなもので止まるはずもなく、ティラちゃんは向かってきます。そして終に、私の目の前にティラちゃんがいました。
……あは。動けないや。
私は足がすくんで座り込んでしまいました。私を丸呑みにする気でしょうか。その、大きな口がゆっくりと開いていく。
「……ぷっ」
何故か笑みが込み上げてくきました。もうすぐ食べられようとしているのに。私はどうしてか、それがすごくおかしいことのように感じていました。それを現実として見れなかったのかもしれません。私が死ぬという事があまりに遠く、非現実的だと思っていて。いざその時が来ると、私は笑うしかなかったのかもしれません。
……でも、……あーあ。やっぱり駄目でしたねぇ。パチュリー様、申し訳ございません。私ではこれが限界の様です。私はどこまでいっても半端者の“小”悪魔でした。本当の悪魔ならここで貴女を餌にして逃げるんでしょうけど、それも出来ません。本当に半端者です。
私は先に逝きますが、せめて貴方の無事を祈ります。さようなら。パチュリー様。今まで本当にありがとうございました。どうか、せめてパチュリー様の無事を願います。
…………。
ああ、でもやっぱり、私……。
「まだ死にたくないっ! やっぱり私、まだ死にたくないよぅ!」
「……泣かないの……。あんた一応悪魔の眷属でしょうが」
「――……え?」
――何かが光った。気が付けばティラちゃんは随分遠くに吹き飛んでいました。
「パ、パチュリー様?」
パチュリー様は、いつの間にか私のすぐ後ろに立たれていました。
「……本当はね。ずっと起きてたのよ。でもあんたの背中、気持ち良くってね」
「そんな、ふざけてる場合じゃ……」
「すぐに投げだすかと思っていたんだけど、よく頑張ったわね。重かったでしょう、私。……あんたの背中、結構頼もしかったわよ」
違う。違うのに。私はそんなに強くないのに。
「……私ははあんたが思っているよりあんたを信頼してるのよ? そんな情けない顔しないで」
パチュリー様はそう言ってくれました。その時私は本当に情けない顔をしていたんでしょう。
……でも、だってしょうがないじゃないですか。私、本当に怖くて。死ぬかと思って。でも助かって。そんなに優しい言葉もらっちゃたら、しょうがないじゃないですか。まだパチュリー様の下にいられると思ったら、しょうがないじゃないですか。
……ティラちゃんはゆっくり起き上っていました。そしてそのまま近づいてくる。でも、私はもう怖くありませんでした。もう、大丈夫だって知っていたから。
「……さぁて、今夜は恐竜のステーキね。食べ応えがありそうだわ」
そう言ってパチュリー様は、ティラちゃんに向かっていきました。――堂々と。颯爽と。これ以上ないくらい頼もしいその背中を見ながら私は、
「……やっぱり、貴方の背中には敵いませんよ」
そんなことを、思っていました。
それからしばらくたった後、
「パチュリー様ー。言われていた本見つかりましたー」
「あー。うん。そこに置いておいて」
私とパチュリー様は、ティラちゃんによって破壊された図書館の、復旧作業をしていました。その暴れっぷりたるや、かれこれ一週間過ぎた現在でもまだ片付けが終わっていません。どこにいったのか分からなくなってしまった本も、結構ありました。
……結局パチュリー様は、何で恐竜を食べたいなんて思いついたんでしょうか。それも謎のままです。
でも、ひょっとしたらパチュリー様は、私を試したかったのかも知れません。危機に陥った時、私は主を見捨ててしまうのかどうかを。私とパチュリー様の絆が、どの程度のものなのかを。パチュリー様はそれが知りたかったのかもしれません。
……なんてね。パチュリー様に限ってそんなことを気にするわけがないですよね。
パチュリー様なんとなく恐竜が食べたかった。それだけ。それでいいんです。だから私は……。
「ねえ、こあ。このプリン、どこで買ったの?」
「――……えっ?」
「中々美味しかったわよ。私の為に用意してくれたんでしょ?」
「……そんなっ……」
それは、そのプリンは私が楽しみにしていたおやつでした。
「……うん? 何? どうしたの?」
「……パっ……パチュリー様のっ!…………馬鹿ーーーーーーッ!!!!!!!!」
――盛大な叫びが、図書館の中に響き渡りました。本が何冊か落ちます。
「ええっ?! ちょっとどうしたの? あんたのだったの? いやでも、たかがプリンくらいで……」
「……パチュリー様。しばらく実家に帰らせて頂きます」
そのままパチュリー様に背を向けて歩きだします。知らないっ! もうパチュリー様のことなんた知りませんっ!
「えっ……ちょっと! 待ちなさいよ! あんたがやらなきゃ誰が図書館片づけるのよ!」
私は止まりません。もっと言ってほしいから。もっと私を頼ってほしいから。
「……いや、本当ごめんって。ね? プリンくらい後で買ってあげるから。ほら、図書券も付けてあげるわよ! ね? だから、だから帰ってきてぇーー!」
……なんていうかこの人は、頼りになるんだかならないんだか。
でも多分、こういう方だから私は、この方の側を離れることが出来ないんじゃないですかねぇ……。
お疲れ様でした。この度は東方な日々 小悪魔編をお読み頂き誠にありがとうございます。次回パチュリー編をお楽しみに。
おまけ
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