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  東方な日々。 作者:春風夜風
後編にするつもりだったのですが、先読みの甘さでこうなりました。
というか未だに自分の書き方が分からないです。とくに会話文。試行錯誤です。
なんで、とても読みにくいかもしれませんけどこれからに期待して下さい。(笑)

あと1万アクセス記念のイラストも各キャラ追加しました。平均30分で描いた適当イラストですが、興味のある人は各編のあとがきに追加していますのでご覧下さい。

ではでは本編のはじまりで~す。
紅魔郷組
番外編 東方TRICK 空中浮遊の男②
「かっぱっぱーっ! 見たか、これが科学の力!」
 ……。
 それから何事もなく、ごくごく平和に紅魔館を発った私たちのはずだったが、……現在、河童3兄弟の科学によって造られた、マンボウ型潜水艦の襲撃を受けていた。
「って、なんでだよっ!」
 とりあえずツッコミを入れる私。しかし私の嘆きをよそに海面を跳ねながら3匹のマンボウは迫る。それを潜水艦と呼んでいいのかはともかく、妙にメルヘンチックな光景だ。私が子供だったら喜んだかもしれない。だが、意味分からん。
 いや、本当に意味が分かんらん。完全完璧完膚無きまでに意味が分かんらん。襲われてるっつー状況の意味が分からん。というか私と奴らとは初対面のはずだ。何で襲われなくちゃならないんだ。そもそもなんたってマンボウ型なんだ。そのチョイスはどうなんだ。と、まあ言いたいことは山ほどある。だがどうやら河童たちにも言い分があるらしい。
「科学のロマンに対する理解力に乏しい、お前のところのメイド長に破壊された初号機(メガロドン型潜水艦)の恨みを思い知れ!」
 という事らしい。知らんがな。だが私たちを襲う理由は分かった。よく分からんけどよ〜く分かった。要するに奴らは、メイド長にやられた腹いせに私達を襲っている、というこらしい。つまり咲夜だ。咲夜が悪い。咲夜に河童のロマンを理解するだけの器量が無かったのが悪い。私もそんなもの持ってないっていうか持ちたくないけど、とにかく現状は咲夜が悪い。いやむしろ河童が悪い。何だ。戻ったぞ。結局河童が悪いんじゃないか。一周回って原点に立ち帰った私は諸悪の根元たる河童たちを見る。
「かっぱっぱ。どうだ、新兵器の威力は! 今回は前回の反省を踏まえ、機動力を得るため艦を小型化した上に、複数機による波状攻撃をかけて相手を確実に落とす戦法にシフトしたのだ!」
「予算だって3倍かかったのだ!」
「プレステ3も売ったのだ!」
「「「かっぱっぱ〜っ!!(泣)」」」
 ……うん。どうでもよろしい。感極まっているところ申し訳ないが、実にどうでもよろしい。全然これっぽちも疑いの余地の無いくらいどうでもよろしい。さらに言えば鬱陶しい。非常に鬱陶しい。というかもう面倒くさい。マスパで沈めたい。だが、私の十八番であるマスパは、発射する前にすぐ隣の手によって遮られてしまっった。
「待ちなさい。手を出さないで。これは私の戦いよ」
 パチュリーである。今まで眠っていたように静かだったのに、ついに起き上がってしまった。そのまま眠りの姫と化していればいいものを。というか戦いも何もお前は何もしてなかったろーが。ほらリンゴやるからもう一度寝ていなさい。
「河童よ! それがお前たちの科学か? ふんっ! その程度で科学を語るとは、笑止!」
 ふむ。パチュリーは面倒くさいことに河童3兄弟に対抗心を芽生えさせておられるご様子。自信満々の河童の態度がパチュリーの自尊心をくすぐったのだろう。いやいや待て。落ち着いてくれ。河童と張り合ってどうするんだ。私たちの目的はもっと先だろう? ここはまだ道中だ。まだ早いって。まだ温存しとけって。そんなんだからエクストラどころかラスボスさえも遠のいていくんだって。しかし私の願いは空しく、パチュリーはいきなり切り札を発動する。
「見よ、これこそが科学!」
 なんと、どこからともなくロケットランチャー(家庭用)を取り出したパチュリー。いや待ちなさい。どこから持ってきた。すぐに返してきなさい。迷彩服のおにーさんたち来る前に穏便に事を済ませなさい。弾丸一発失したでも、彼らは血眼になって探さなければいけないのよ。しかしパチュリーは私のツッコミを華麗にスルーし、貧弱な体で器用にランチャーを構える。そして、
「とっとと失せな、ベイビー」
 どこかで聞いたことある台詞を吐きながらそれをぶっ放した。途中、どういう原理か三発に分割されたその弾は見事河童3兄弟に命中。3兄弟の断末魔の叫びが聞こえた。そして瞬間、爆発炎上。吉原炎上。湖上に花火が打ち上がる。ついでに爆風を浴びた私たちの船もタイタニックになる。そして輝かしい戦果を上げたパチュリーはというと、
「……肩、外れた」
 致命傷を負っていた。
「パチュリーーーっ!?」
 それは何とも先が思いやられる幕開けだった。


 と、そんなこんなで河童の襲撃を退けた私達は、当初の目的通り人里に帰って来ていた。船頭のおっさんは既に燃え尽きている。むしろこれで元気があったらおっさんはおっさんではない。サイヤ人だ。
 で、人里だ。やっぱりごみごみしているのは変わらない。多くの人間妖怪何やかんやが、そこかしこを歩いている。何を急いでいるのかは知らないが、彼らは皆一様に早足で歩く。彼らは一体どこへ向かおうというのだろうか。『狭い幻想郷。そんなに急いでどこへ行く』……そんな言葉が頭をよぎる。なんとなく感傷に浸っていた私はふと思う。
 パチュリーは大丈夫だろうか。
 いや、奴の神経が伝説の大樹、ユグドラシルの如く図太いのは知っているが、それでもこんな人ごみに出るのは久しぶりだろう。それに引きこもりを外に連れ出す際は、人通りが多い場所は避けた方が良いと、どこかで聞いたことがある。引きこもりとは、外からの刺激から身を守るために自分で創った殻に閉じこもるのだ。その殻を無理矢理開けて連れてきた私が言うのもなんだが、少し悪いことをしたかもそれないと思う。私は何だか心配になってパチュリーを見やる。すると、
「何これ何これ! へ〜。今はこういうものがあるんだ。うん? お・あっちにも何やら面白そうなものが」
 やはりパチュリーはただの引きこもりではなかった。あまりに引きこもりすぎて、未来にやって来てしまった少年のようになってしまっている。瞳が輝いている。キラキラしている。見るもの全てが新鮮に映るのだろう。どうやら筋金入りの引きこもりだったようだ。現代とのジェネレーションギャップを感じてしまうほどの引きこもりだったようだ。どんだけだ。
「なあ、パチュリー。気持は分かるがもうちょと落ち着いてくれよ。私が恥ずかしいぜ」
 そう。そうなのだ。パチュリーがあまりに騒ぐから通行人たちの視線を引き付けてしまっているのだ。私の再三の忠告を一切無視して騒ぐパチュリーを中心に、ぐるりと人の輪も出来てしまっているのだ。路上ミュージシャンが羨むような吸引力を以て、人々を釘付けにしてしまっているのだ。ああ、奇人変人を見るような目で、こちらを見ていらっしゃる。確かに視線の先には変人がいるのだが、しかし痛い。私が痛い。私を見ている訳ではないのに、違う意味で私が痛い。というかさっきまであんなに忙しそうにしてたのに、何でこんなときだけ立ち止まるんだ。何なんだ。プレイか。プレイだったのか。私は忙しいです充実していますプレイだったのか。それならプレイを続けなさい。見るんじゃない。どうぞ”続きから”を選択し、ゲームを再開して下さい。
 そんな感じで、一通り騒いだパチュリーがようやく落ち着いたのは、それからしばらく経ってからだった。
「素晴らしいわね、今の文明は。私も研究へのモチベーションが上がったわ」
「そうか。それは良かったな。でも私は、しばらく里への出入りが苦痛になるだろうぜ」
「うん? 何で」
 理解していないようだ。まあ、別にいいけど。というかこんなことをしている場合ではない。私たちには使命があるのだ。
 当初の目的をようやく思い出した私達は、エセ魔法使い増田の元に向かって歩き出すのだった。


「マジカルッ☆! またまたようこそ、マホケンからの使者よ。随分早かったですね。もう全額工面出来たのですか?」
 そうして私は、再び増田と対峙していた。再びやって来たボロ屋敷は、やはり異様な雰囲気を醸し出している。正直、ここにいるだけで苦痛だ。信者たちの視線が私に突き刺さる。痛い。前回逃げるように去っていたので尚更気まずい。プレッシャーに耐えられなくなった私は、周りをぐるりと見回してみる。魔奈美は、……ここにはいないようだ。とりあえず相変わらず腹の立つ増田に、私たちの意志を告げる。
「誰が払うもんか! 今度こそお前のインチキを暴いてやるからな、覚悟しろよ!」
 言って増田の出方を窺いながら、無言で睨みつける。増田はニヤニヤしている。どうやっても腹立つ顔だ。しかも眉毛が無い。奴が着ているものも前と同じ、床を引きずる白のだぼだぼローブ。針金で固定した天使の輪っかと背中にある天使の羽は、云わば天使に対する侮辱行為に近い。まさに変態然としている。変態でしかない。
 というかそれ以上に私は、増田に対して何か違和感を感じた。何がどうと言われると困るのだが、前回会った時の増田と、今目の前にいる増田では、少し違うような気がした。ほんの数時間前で何か変わるとは思えないし、腹の立つその雰囲気は同じなんだけど、何かが違う気がする。
 思わぬところで私が困惑していると、増田は私の後ろにいるパチュリーの姿を確認し、指を差して嘲るようにしゃべりだす。
「それで、そちらお方が助っ人ということですか? あまり頼りになりそうには思えませんがね。顔色が悪いようですが、ちゃんとお食事はとられているのですか?」
 増田がそう言うと、信者たちからどっと笑いがおこる。私はそれに言いようのない苛立ちを覚える。だがパチュリーは、それをちらりと見ただけで全く動じなかった。それどころか、食ってかかろうとする私を制止する。
「魔理沙。落ち着きなさい。敵の思うつぼよ」
「でもっ……!」
「大丈夫。私に秘策があるわ」
 自信のありげなパチュリーは、そのまま増田の前に出る。こういう時、こいつの根拠不明の自信は、とても頼もしく思える。何だかんだで頼りになる奴なのだ。そして頼りになるパチュリーは、増田に向かって言い放つ。
「私も入信します。弟子にして下さい」
 ……は? 
「おい、待てよパチュリー! 話が違うじゃないか!」
「ついでに、この五月蠅いのも心を改めて入信するそうです。弟子にしてやって下さい」
「ええっ!?」
 何を言ってるんだ、こいつは。本の読み過ぎで頭がおかしくなったのか? そんなことしたら、私たちが負けを認めたみたいじゃないか。私たちは増田のインチキを暴きに来たんだ。勝ちに来たんだ。屈しにきたんじゃない。私はすばやくパチュリーを引き寄せ、耳元で盛大に抗議する。
(どうしちまったんだよ。そういう話じゃなかったろ? まさか、パチュリーでも勝てないってことなのか?)
(馬鹿ね、潜入捜査よ。こいつの弟子になって、インチキの情報をかき集めるの。その方が確実でしょ。それともまた負けて恥晒すつもり?)
(うっ……)
 成程。確かにそれは有効な手段かもしれない。腹は立つが。腹は立つのだが、また負けるのはもっと腹が立つ。もう絶対に負けたくない。こんな奴のいいようにはさせない。
「……今まですみませんでした。私も弟子にして下さい」
 私は頭を下げて増田に頼む。屈辱だ。屈辱だった。一瞬軽く下げただけだが、それでも屈辱だった。でもこいつに勝つためならそんなことを言ってられない。私はパチュリーの策に乗ってみることにする。だが、
「ふっふっふ。今更信者になりたいと? そんなことがまかり通るとでも? 特にそこの金髪のオジョーサンは、私に“借り”があるのですよ?」
 それは当然の反応だった。今の今まで私とこいつは敵同士だったのだ。それが急に手のひらを返したように、弟子にしてくれと頼んだところで、そう簡単に受け入れるはずがない。だが、私が返答に困っていると。
「雑用でもなんでもやります。いくらこき使っても構いません。だからどうか弟子にして下さい」
 パチュリーは尚も増田に頼み込んだ。それは有り得ない光景だった。人一倍自尊心の強いパチュリーが、人に頭を下げるなんて。私はそんなもの見たくなかった。そんな事してほしくなかった。パチュリーの背中がひどく小さく見える。
 ……。
 どうしてここまでしてくれるんだろう。私に無理矢理連れて来られただけなのに。どうしてここまで必死になってくれるんだろう。……私は、ようやく覚悟を決めた。
「……お願いします。弟子にして下さい」
 パチュリーに並んで私も頭を下げる。もう私のプライドがどうのこうの言ってられない。パチュリーがここまでやってくれたんだ。私も下手なプライドは捨てる。
「ふっふっふ。それは敗北を認め、自分たちの過ちも認めるということですか? ふっふっふ。いいでしょう。心を改めたというのなら、私も断るわけにはいきませんからね。なぜなら魔法とは全ての人間に“平等”なのですから……」
 そうして、私達は増田の弟子になることになった。


 それから私達は、二階部分にある一番ボロい部屋をあてがわれた。どうやら信者たちは、ここで共同生活をしているようで、二階部分には信者たちの部屋が沢山あった。閉鎖空間に閉じこめて共に行動をさせることで、仲間意識を持たせ信仰をより強固なものにする為だろう。どこまでもセコイやつだ。
 私はさっきのことを思い出しながら、パチュリーの方を見る。案外こいつも怒っているのかもしれない。魔法使いを馬鹿にしたような増田に。そうは見えないけど、本当は悔しくて悔しくて仕方ないのかもしれない。だからあそこまで出来たのだろう。だが素直に礼を言うことが出来ない私は、つい軽口を叩いてしまう。
「案外あっさり入れてくれたな、増田のやつ。もう少し渋るかと思ったぜ」
「そうね。でも、あれ以上はさすがにご免だったわ」
「まあな」
 それはそうだろう。私だって本当はあれが限界だ。増田がそれ以上求めるなら、私は構わずマスパを撃ちまくったかもしれない。しかし、それをやれば私の負けだ。それくらいわかっている。
「でも、最終的には入信させると思っていたわ。これで私達が証拠を掴めなければ、事実上、“マホケン公認”ということに出来るからね」
「責任重大だな。……ん? ということはあれか。増田は私達の狙いが分かっていて、敢えて入信を許したのか」
「そういうこと。よっぽど自信があるのね。楽しませてくれそうだわ」
 なんと。ここまでは増田の思い通りだったらしい。本当に気に食わない奴だ。
「けっ! 絶対後で吠え面かかせてやるからな!」
 私は増田に絶対に勝つことを誓う。そして、そうこうしていると扉をノックする音が聞こえた。
「魔理沙先輩。仕事の説明です。入りますよ?」
 魔奈美だ。そうか。私は表面上、ここで信者として行動しなくてはいけないんだった。覚悟を決めたはずだったが、実際そうなってみるとやはり嫌悪感は拭えない。例え、証拠を掴むまでの間の演技であったとしても、増田なんかの下にはつきたくない。私が心の中で葛藤してると、魔奈美が躊躇いながらも扉を開けてきた。
「あ・やっぱりいるんじゃないですか。ここでみんなと共同生活するんですから、いきなり居留守はやめて下さいよ」
「悪い悪い。で、仕事って?」
「まったく、すぐそうやって誤魔化そうとするんですから。えーと、とりあえず食事洗濯掃除に買い出し。考えうる雑用は全部やってもらいます」
 ……いきなりハードだ。どっかのメイド長並みにハードだ。つーかあの人は実は人間ではなくて、メイド長という名の新しい種族であって、それだから出来ることであって、魔法が使えるだけの普通の人間である私には、そんなに沢山の仕事は無理だ。過労死してしまう。干からびてしまう。しかし、そんな私を、魔奈美が呆れたように見てくる。もしや心が読めるのかと思ったが、私の心中は全て顔に出ていたらしい。
「先輩。露骨に嫌そうな顔しないで下さい。大丈夫ですよ。私も手伝いますから。というか先輩一人じゃ勝手が分からないでしょうし」
「何だ、そういうことか。そういうことならよろしく頼むぜ。魔奈美」
「あ・急に態度が変わりましたね? 本当に調子いいんですから」
「ははは。まあ、いつものことだろ?」
 何か懐かしい気がした。アカデミー時代を思い出す。私が何かやらかして、魔奈美が呆れながらもそれについてきて、結局二人して怒られて。いつもそんな感じだった。
「ところで、魔理沙先輩。お連れの方はどこに行ったんですか?」
「え?」
 言われてパチュリーがいた方を見る。いない。どこにもいない。いや、そんなはずはない。だってさっきは、あんなに協力的だったじゃなか。今更逃げるわけない。もしかして、と思って魔力を探ってみるが、しかし反応はない。
 おかしい。絶対おかしい。そんなはずはないのに。状況が読めない私は、キョロキョロと挙動不審に動く。そして、テーブルの上に小さなメモが置いてあることにようやく気付いた。それはパチュリーの字だ。可愛らしい丸文字。全然似合っていない。若干、引きながらも手に取ってみる。そして恐る恐るその内容を見てみると、
『役割分担でヨロ!』
 ……そうか。そいういことだったのか。つまり奴は一人でインチキの証拠を探して回り、その間私が雑用として働いて増田の目を誤魔化す。と、そういう作戦か。そうかそうか。ってふざけんな。ということはつまりあれか。さっきの『雑用でも何でもします』は、その前に(魔理沙が)という注釈が入っていたということか。成程、道理で。プライドの高いあいつがあんな事するから、おかしいと思っていたんだ。最初からこうするつもりだったわけか。鼻から雑用なんかする気は無かったわけだ。全て計算尽くの作戦だったわけだ。そうかそうか。しかしパチュリーよ、一言だけ言わせてくれ。
「お前、増田よりタチが悪いぜ……」
 ぼそっと、私はそう呟くほかなかったのだった。


「魔理沙先輩。何やってるんですか。雑巾は横じゃなくて縦に絞るんですよ? それじゃあ床が水浸しになるじゃなですか!」
 ……パチュリーがバックレてしまい、一人で雑用を始めることになった可哀想な私は、
「ああ、もう! そうじゃないですって! 床目にそって拭いて下さいよ!」
 ……アカデミーの後輩に怒られていた。
 いや、待て。何この状況。確かに私はこの場所じゃ一番新人だし、雑用やりますと言ったけど、こんな状況は想定外だ。想定の範囲外だ。ホ○エモンだって、こんな状況になるとは想定出来なかったに違いない。
「先輩。それ終わったら、今度は買い出しですからね」
 ああ、スパルタだ。トロイも真っ青だ。ちなみに私の顔は発汗で真っ赤だ。しかし、そんな私のことなど、どこ吹く風と言った感じの魔奈美は、何やら楽しそうに私を扱き使う。そんな子に育てた覚えは無い。もっといい子だったはずなのに。私の言うことなら何でも聞く可愛い後輩だったはずなのに。例えば、定期試験の時、私がこっそりカンニングペーパーを使ってたことをチクったり、私の新開発した魔法の実験台になることを拒否した挙句、調合した薬品を窓の外に投げてしまったりと本当にいい子……あれ? 
 いやいや、いい子だったはずだ。少なくともこの私を、馬車馬のごとく働かせるようなことはしなかったはずだ。何故こんな子になってしまったのか。……増田だ。増田なのか。増田が魔奈美を変えてしまったのか。魔奈美をこんな悪女にしやがったのか。おのれ増田め。
「魔理沙先輩。それじゃあ買い出し行きましょうか」
 ……。
 どうやら魔奈美は、私に休息を与えるなと増田から言われているようだ。そうに違いない。そうでなければ、こんなに晴れやかな笑顔でそんなことを言うはずがない。今までの鬱憤を晴らすかのような、そんな笑顔になるはずがない。まるで天使のような悪魔の笑顔になるはずがない。マッチもそんな悲しい歌は歌ってない。
 まったくもって許せないな、増田の奴。今現在の比率で言うと、増田への怒りと、パチュリーへの不信感と、魔奈美への失望の三つが丁度同じくらいだろう。ん? 同じなの? というか余計なものが増えている気がする。いいのかこれで。
 いや、それにしてもなんて扱いだろう。私の体は、極めて深刻なほどに休息を求めているのに。魔奈美の笑顔は一切それを認めない。さあ、動け働け休みなんて言葉はティッシュに包んで三途の川に捨てて来い、といった顔だ。
 ……しょうがない。私は何度も躊躇いながら、ようやく重ーい腰を上げることにする。全身がだるいし重い。体は立ちあがることを全力で拒否する。でもこれ以上休んだら、もう本気で動けなくなるだろう。仕方なく私は、しぶしぶと立ち上がる。だが、私の体が立ち上がり、足を伸ばしたその瞬間、
「痛ったあぁぁっ!!」
 右の足がつったことで、私は自身の運動不足を悟るのだった。


 それからもずっと魔奈美にこき使われていた私。ライフはすでに風前の灯火。一吹きどころか放っておいても自然消滅してしまいそうな弱い燃焼だ。だが真面目な私は「これで最後」という魔奈美の言葉を信じて、今も怪しい増田の銅像を磨く。だが、ここまでの道のりは本当に長かった。
 ありとあらゆる雑用を押しつけられ、この世に存在しうる全ての雑用は全部こなしたんじゃないかという気分だ。しかも、夕飯の準備の時に、誤って台所を爆発させてしまい、さらに仕事量が増えてしまったといった悲劇もあった。
 だがそれも、もう終わり。ようやく解放してくれるらしい。しかしそれで嘘だったら、私はそのまま天に召されるんじゃないだろうか。そんなことを思いつつも増田像を磨き続ける。何でこんなものを磨かなきゃならないんだ。だが、反抗するだけの体力はすでに無い。つーかこの増田像は、本物より髪が豊富なのは気のせいだろうか。すり減ればいいのに、と頭の辺りを重点的に磨く。そうして意識が朦朧とする中、大体の汚れを落とし終わった。
「おーい。こんなもんでいいか?」
 くたくたの私は、本日の現場監督様の魔奈美を呼ぶ。正直、これ以上はさすがにキツい。私がもう動きませんと体全体でアピールしていると、「お疲れさまでした」と言って魔奈美がこちらに向かってきた。手にはお茶を乗せたお盆がある。
「おお、サンキュ。さっきから喉がカラカラだったんだ」
「まだ少し熱いですか気を付けて飲んでく下さいね」
 魔奈美からお茶を受け取る。成程。確かに熱そうだ。しかし早く飲みたかった私は、忠告も聞かず一気にそれを飲み干す。すると、それはやっぱり熱かった。
「熱いぞ、これ!」
「だから熱いって言ったじゃないですか」
「むむむ。聞いたような気がする」
 そうして二人で笑い出す。私がやりたかった懐かしいこの感じ。やっぱり魔奈美は魔奈美のままだった。変わってなんかいなかった。昔のまま、私の大事な後輩のまま。……だから私は、どうしても聞いておきたかった。
「なあ、魔奈美。なんでお前はそこまで増田の奴を信用するんだ? あいつはインチキだって薄々気付いてるんじゃないのか?」私は問う。
「何を言ってるんですか。今はあなたも信者としてここにいるんですから、そんなこと言っちゃ駄目ですよ」
「でもお前、魔法使いになりたいんだろ? だったらこんなところにいちゃ駄目だって」
 私は魔奈美をどうにか説得したかった。思えば私は、増田のことなんか初めからどうでもよくて、魔奈美のことが気になったから事件に首を突っ込んだんだ。間違った道に進もうとしている魔奈美を、元に戻したかっただけなんだ。だが、今度は逆に魔奈美から問われる。
「魔理沙先輩。あなたから見て、私はどう見えますか? 魔法使いとしての力があるように見えますか?」
「……大丈夫だよ。お前にはちゃんと魔法使いの素質があるって」
 嘘だった。実際、私から見れば魔奈美の魔力は大したことない。誰もが持ち得る程度の魔力だ。でも魔奈美は努力家だった。魔法使いになりたいって思いは、誰より強かった。だから、ちゃんとした修行を積めば、絶対に魔法使いになれるはずだ。私はそう信じていた。信じたかった。
「ありがとうございます。でも私は増田様を信じているんです。あの方の力は、魔理沙先輩も破るほどだったんですよ? 私はアカデミーではなく、増田様のもとで魔法使いになります」
 魔奈美は増田を完全に信じていた。魔奈美の瞳は希望に満ちていた。自分はここで夢を叶えるんだと信じ込んでいた。
 私にはもう何も言えなかった。それは間違っている、そう言ってやれることが出来なかった。増田に敗れた私の言葉には、何の説得力も無かった。こんなに自分の無力を悔やしく思ったのは、本日二度目だった。


 それから私は、あてがわれた自分の部屋に戻った。少し身体を休める為だ。だが、またすぐに行かなくてはならないだろう。私はインチキを暴きに来たのだから。増田の雑用をやって終わりではない。
仰向けに転がる。全身の筋肉が悲鳴を上げている。最近、少し魔法に頼りすぎていたかもしれない。パチュリーみたいにならないように、適度に体を動かした方が良さそうだ。
 そうして、そっと目を閉じる。頭の中にいろんな思いが巡った。どうやら私の頭は、まだ休んではくれないようだ。眠れやしない。しばらくそうした後、私は部屋を出ることにした。体は疲れているが、止まっていたくはなかった。動いていないと、このもやもやした気持ちに飲まれてしまいそうだった。そして、扉を開けようとそのノブに手をかけた時、今まで姿を眩ましていたパチュリーが、反対側の窓から現れた。
「やっほー。お疲れのようね」
「どっから入ってくるんだよ。つーかお前今までどこ行ってた。大変だったんだぞ、私」
 とりあえず文句を垂れる。それくらいの権利はあるだろう。いくら作戦のためとはいえ、お陰で私はエライ目にあったのだから。しかし、そんなパチュリーへの不信感も、奴が言った一言によって一気に吹き飛んだ。
「トリックの証拠が見つかったわ」
「……! マジか!」
「さすがの私でも手間取ったけどね。増田が自信あったわけだわ」
 マジだ。マジのようだ。さすがパチュリー。やれば出来る子なんだよ、本当は。
「じゃあ、さっそく増田のところに行こうぜ! あ・いや。その前に私にもトリックを教えてくれないか」
「ええ、もちろん。ついてきなさい」
 パチュリーは自信満々だった。やはり、相棒にパチュリーを選んだのは正解の様だったようだ。
 それから私たちは皆が寝静まった中、こそこそと廊下を歩く。ここで不信がられてはいけない。そうしてパチュリーに案内されて辿り着いたそこは、なんとトイレだった。何の変哲もないトイレ。しかも今日私が掃除に入っている場所だ。トイレの中は、換気扇が不調のようで若干臭い。大体、夜の薄暗いトイレはちょっぴり怖い。しかしパチュリーはずんずんと進み、割と大きめな鏡の前で立ち止まる。何をする気だろうと私が思っていると、パチュリーはその鏡を取り外した。
「……何だこれ? 鏡の裏に部屋があるぞ」
 なんと鏡の裏には50センチ四方の穴が開いており、その奥は小さな部屋になっていた。だが、隠し部屋としては広い。私たちが使っていた部屋くらいある。そしてその中には、用途不明の道具の数々が納められていた。
「このトイレと隣の部屋までの間が、丁度一部屋分くらい空いていたのよ。隠し部屋として使っていたようね。ここに例のトリックの仕掛けが隠してあったわ」
 こんなところに隠していたとは。全然気付かなかった。何度かこの鏡の前で髪を直したりしてたのに。そしてパチュリーは、その狭い隙間を潜り部屋の中に入る。私もそれに続く。どうやらこの部屋は、手品の道具を入れておく倉庫の様で、中には見慣れないものが沢山置いてあった。しかし、私はその数ある道具の中の一つに視線が釘付けになる。なんと、そには杖と……。
「……何だよ。これ」
 そこにあったのは杖だった。増田がトリックに使っただろう杖。その杖は、床に置いてある鉄板に固定されており、何もない空間に杖だけで立っていた。そして杖の上部、その横からは、薄く平べったい鉄板がくっついていた。ちょうど人が一人腰かけられそうなくらいの大きさだ。
 そう。私が杖だと思っていたものは、杖ではなかった。それは、……それはただの椅子だった。
「おいおい、ふざけんなよ。何だよこれ。増田はこれに座ってただけってのか? 私が空中浮遊だと思っていたものは、ただ椅子に座ってただけってのか?」
「カモフラージュはしていたでしょうけどね。まあ、トリックなんて実際そんなものよ。ついでにほら」
 パチュリーは私に何かを投げつける。それは果たして、
「って、うわああああっ! 変なもん投げるなよ。何だよこれ! 人の足?」
「正確には義足って言うものよ。作りものの足」
 パチュリーが投げつけてきたのは義足だった。よく出来ている。気持ち悪いほどに。つーか投げんな。ビックリするだろうが。しかしパチュリーはそんな私を見て楽しそうに言う。
「これが二つ目の手品のトリックよ」
「……? どういうことだ?」
「魔理沙。貴女私と一緒にここに来て二回目に増田と会った時、違和感を感じたでしょう?」
 ああ。確かに、初めて会ったときとは、どことなく違うような気がした。どこがどう違っていたのかは分からなかったけど。
「身長が違わなかった?」
「え? ……あ!」
 そうだ。確かにそうだ。初めて増田に会ったとき、奴の身長は私と同じくらいだったんだ。でも、もう一度会った時には奴の身長は私より頭一つ分くらい高かった。一体どういうことなんだろう?
「なあ、パチュリー。教えてくれ。あいつはどんなトリックを使ったんだ?」
「ふふふ。もう分かってるくせに。いいわ。教えてあげる。あいつはね、義足付けて浮いているフリをしていただけよ。本物の足は地面に着いていたわ」
 ……。
 やっぱり。そういうことか。増田がやったトリックはこうだ。まず奴は、予め本物の足より高い位置に義足を取り付けていた。だぼだぼローブを着ていれば普通は気付かれない。それから”杖に似せた椅子”から降りたとき、少し足を屈めて身長を低く見せた。その際義足の方が地面に着くくらいまで屈み、それが本当の足だと思い込ませる。そしてそのままを義足の方を見せながら、足を伸ばしていく。もしかして背伸びでもしていたのかもしれない。するとローブの裾から見える義足は浮いて見える。それを本物の足だと思っていた私には、増田が浮いたように見えるのだ。
「しかし、まあ。だぼだぼローブを着ている時点で、何か仕込みがあると思いなさいよね。大方、両手を広げたのも、その後ろにある椅子付きの杖を隠す為でしょう」
「うっ。パチュリーはすぐ分かったのか?」
「当たり前。こんなの使い古しの手品じゃない。あんたから話を聞いた時点で大方の予想はついていたわ。もっとも、証拠の品を探し出すのに手間取ったけど」
 なんだ。分かっていたのか。だったらすぐに教えてくれてもいいのに。もっとも、それをしないところがパチュリーがパチュリーたる所以なのかもしれないが。しかし、こんな単純なトリックだったとは。どうして私は気付かなかったんだろう? こんなのちょっと考えれば分かる。ちょっと調べれば分かることだったのに。どうして気付かなかったんだろう。
「そうだ。義足のトリックの時はちょっと下を見れば分かったんだよな。下に何かあるなんて一番最初に考えてもよさそうなのに。何で私はそれをしなかったんだろう?」
「……それこそがこのトリックの肝よ。あなたはそれをしないように思考を誘導されたの」
 誘導された? どういうことだ?
「貴女は杖のトリックを見た時、こう考えたんじゃないかしら。あの杖に握力でしがみついているんじゃないかって」
 そうだ。私はそう考えた。でもそれは間違っていることには気付いていた。絶対に違うって分かっていた。
「そこですでに罠にかけられていた。杖をこれ見よがしに見せつけることで、違うと分かっていても頭の隅に握力の考えが残り、別の方法を考えることの邪魔をした。さらにそこから、今度は杖なしで浮いて見せた。それで貴女はパニックになったはずよ。自分の考えが外れてしまったから。……人は信じていたものが崩れた時、一番脆くなる。……もっとも、今回の場合は半信半疑だたけどね。とにかく、それでも貴女を混乱させるには十分だった」
 パチュリーの言うことは全部当たっていた。まるでその時の私を見ていたかのように。パチュリーの言葉は核心を突いていた。
「そしてパニックになった貴女は、すでにまともに考えられない。全然違う二つのトリックを、同じトリックとして考えてしまった。本当は別けて考えなくてはいけないトリックなのに、同じ原理だと錯覚してしまった。最初のトリックで下には何も無いことを印象付けられた貴女は、第二のトリックで下に本物の足がないかの確認を怠ってしまったのよ」
 ……そうか。私は杖のトリックの時の印象が強すぎて、30センチの隙間の確認を怠った。杖のトリックの時散々確認したからかもしれない。私はたったそれだけのことを怠り、子供だましの手品を不可解な奇術にしてしまったのだ。
「私自身が、あいつの手品を完璧な奇術にしてたってことか。……いや、それでもおかしいぜ。確かに私はあの時冷静じゃなかった。でも、それで私が絶対に下を調べないとは限らないだろ? そんな危険な橋を渡るか?」
 そう、あの時はたまたまだ。偶然なのだ。たまたま確認を怠っただけ。だって上から吊ってないかの確認は、それでもちゃんとやってるんだ。私が下を調べなかったのは偶然。そんな偶然にすがるトリックを、普通するだろうか。調べられれば一発で分かるようなリスクのあるトリックを、増田は使うだろうか。それに第一、私はマホケンの代理で来たのだ。私みたいにすぐムキになる者が来たとは限らない。そのトリックでは対応できないんじゃないだろうか。
「そうね。たまたま貴女は冷静さを失ってくれた。“だからこそ”義足のトリックをおこなったのよ。もし貴女が冷静でいられたのなら、また違ったトリックを披露したでしょうね。……もしかすると、あの天使の輪っかも羽も、別のトリックの為の仕掛けだったのかもしれない。手品師は、いくつもある手品の中から、その時その状況に最も合った手品を使ってくるものよ」
「……」
「それに、貴女は気付いていないようだけど、増田にはもう一つのトリックがあった」
 もう一つのトリック? まだ何かあったというのだろうか。
「魔法の聖水よ。貴女、途中で増田に聖水の話をされたわよね?」
「ああ、聖水っつー嘘の水飲ませて、魔法が使えるようになるって言ってんだ。そんなわけないのに。ふざけた野郎だぜ」
「ふふふ。いい反応ね。増田もさぞ喜んだでしょう。そうやって聖水の話に話題をすり替えられて、貴女はトリックのことを考えるのを忘れてしまったんじゃない?」
「え……?」
「それもトリックよ。貴女を怒らせて考えさせないようにするトリック。もう少し時間を与えられたら貴女でも見破れたでしょうけど、増田は考える時間を与えなかった」
 ……。
 嘘だろ? あれもトリック? 私はまんまと乗せられたのか? いや、それじゃあまさか。
「まさか。増田は私を怒らせるためだけに、冷静さを奪うためだけに、魔奈美に話題を振ったのか? あいつの気持ちを知っていて、それをトリックに利用したっていうのか?」
「そうね。それが貴女にとって一番効果的だと判断したんでしょう」
 馬鹿な。何で。そんなのって、……ない。
「何だよそれ。あいつ必死だったんだぜ? これで魔法使いになれるって信じてたんだぜ? そんな奴を、そんな奴さえトリックとして利用すんのかよ? ふざけんなよ。ふざけんなよっ!!」
 許せない。どこまで人を馬鹿にすれば気が済むんだ。あいつは魔奈美の魔法使いへの夢を、踏みにじってやがる。それでもまだ信じている魔奈美を嘲笑ってやがる。もう我慢なんかできなかった。
「ちくしょうッ! 今すぐぶっとばしてやるッ!」
 私は八卦炉を持って部屋を出る。そのまま増田のもとを目指す。絶対に許せない。マスパで宇宙の彼方まで吹っ飛ばしてやる。しかし、
「ん? 冷たっ!」
 急に上空から滝のような水が落ちてきた。ずぶ濡れになる私。おそらくパチュリーの魔法だろう。一体、ここまで来て何を躊躇う必要があるというのか。
「何するんだよ! 邪魔するな!」
 抗議する私。いくらパチュリーでもここで邪魔するなら容赦しない。
「今ぶっとばしても信者たちを敵に回すだけよ。全員の前でインチキを暴いてからじゃないと」
 とパチュリー。さらに
「でも今からじゃ無理よ。皆、寝てるでしょうしね。ただの雑用の言う事を聞いて、集まってくれるとは思えない。強引に集めようとしても無理ね」
「何でだよ」
「あのねえ。あんた増田に借りがあるでしょう? 5万円」
 あ・そうだ。そういえばそんなこともあったような気がする。すっかり忘れていたが、いつ、増田がその話を切り出してくるかわからない。
「それがあるお陰で、こっちは随分不利なのよね。いざとなったら、その話を持ち出して私たちを追い出そうとするかもしれないし。とにかくタイミングは慎重に計った方がいいわ」
 確かにそうかもしれない。ここで騒ぎ立てれば、私達の話を聞いてもらえないかもしれない。トリックは分かったが、今はそれを知らせる方法が無い。増田は信者たちを味方につけているんだ。まず信者たちをこっち側につけないと勝負にならない。
「……わかった。パチュリーに従うよ」
 仕方なく頷く。本当は今すぐにでも増田をぶっ飛ばしてやりたいが、私は今までそれで罠にはまっている。
「明日の朝で勝負よ。朝、信者たちは一度集まって集会を開く。そこでトリックを暴露しましょう。それで全て終わるわ」
 明日の朝。私は納得いかなかったが、パチュリーがそう言うならそうした方がいいように思えた。全てのトリックを見破ったのはパチュリーだ。つまり、増田の考えを一番深く読んでいるのもパチュリーなのだ。確かに追い出されてしまったら、対決の機会すらなくなるかもしれない。私ははやる気持ちを抑え、なんとか踏みとどめた。
 ――だが、結論から言おう。その判断は失敗だった。それは、増田に新たなトリックを用意する準備期間を与えるだけに終わったのだった。



こんなトリックでいいのか不安で仕方ない作者です。一応もう後編は出来ているので読みなおしが終わった後、続けて更新しようと思います。多分、そんなに時間はかからないと思いたい。

挿絵(By みてみん)


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