第2話:仲間
「きゃあああああ!」
甲高い、女の声。俺は反射的に声のした方を振り向いた。
そのとき、俺の伸ばした背筋にどん、という鈍い重さが圧し掛かる。
「え、嘘・・・だろ?」
新品の黒いスーツに赤黒い染みが広がる。さっき、言葉を交わした
男のものだ。おそるおそる触る。生ぬるい鉄の香り・・・
男は死んでいた。俺の背にもたれかかるような首からおびただしい血を流して。
後ろを見ると、もう一人の男が居て、その男はナイフを片手に持っていた。
きっと、あいつが背後から首を斬ったに違いない。
予期せぬ事態にじわじわと恐怖が襲い掛かる。
しかし準は叫ぶことも、取り乱すこともなかった。
冷静に状況を見定めようとしている。
「ふふっ、準、状況を理解できた?」
少女の声だった。あの、夢に出てきた。そして俺に警告した少女の声。
ぱっちりした瞳に真っ白な肌。背までのびた髪を二つに結んでいる様はフランス人形を
思わせた。
「・・・全然、訳わかんねえよ、こんなん」
呆気に取られながら準は吐き捨てるように言う。
混乱の渦の中、大学には不釣合いな少女を誰も気に留めるはずはない。
「だよねえ。私についてきなよ。教えてあげる、全て」
また、少女が笑った。人一人が殺されたという事実の中で
楽しそうに笑うことの出来る少女の感性を疑わずにはいられない。
「こいつは、どうすればいい?」
さっさと歩こうとする少女を引き止めた。
「そこに寝かせといて。私の仲間が供養してくれるわ」
「わかった」
言われたとおり男を横たえる。たった少しだけ話しをしただけなのに
悲しみが胸の内を浸した。
「ほら、急いで。時間がないよ」
連れてこられた場所は大学内のサークル会館と呼ばれているところだった。
「ほら、入って。皆準を心待ちにしてた」
少女が扉を開けると様々な人々がパイプ椅子に座っていた。
眼鏡をかけた20歳くらいの女性から50歳くらいのおじさんまで
実に多種多様である。
「絢乃│(あやの)、この男の子が星井くん?」
眼鏡をかけた女性が少女に向かって問う。
この子は絢乃というのか・・・と俺は納得した。
「ええ、そうよ。架蓮│(かれん)」
絢乃がうれしそうに架蓮と呼ばれた女性に言った。
「さあ、絢乃も星井くんも座って頂戴。説明するわ」
架蓮が椅子を勧めたので、準が遠慮なく腰掛ける。
「話しが長くなるわ。楽な格好で聞いてね」
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