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連載小説です。少々グロテスクな場面もございますので苦手な方はご遠慮ください。


自分自身
作:青山 悠月



第1話:合図


─ねえ、─
俺は真っ白な空間に立っていた。
さっきから声が聞こえる。まだ幼い、少女の声だろうか?
─誰だ?─
問うてみる。返事の代わりに忍び笑いが聞こえてきた。
さわさわと波のような波紋が広がる。
─遊ぼう?─
少女がそう、俺に呼びかけてきた。
─やだね─
俺は不機嫌に答える。
─何で?どうして?─
え、どうしてって・・・


ジリリリ・・・
瞳を開けると俺の目の前にはまだ真新しい天井が姿を見せた。
むくりとダルそうに起き上がる。
俺の名前は星井 準│(ほしいじゅん)。
昨日から実家の宮城県を離れ、東京に引越してきたのだ。
今日、めでたく現役で合格した大学の入学式が行われる。
「うわ、やべ。もうこんな時間かよ」
まだ眠たい目を擦り、目覚まし時計を見た俺は慌てた。
早く出ないと入学式早々、遅刻してしまう。
全く、今朝にみた変な夢のせいだ。
・・・俺ってあんな夢見るほど想像力あったっけ?

シャワーをさっと浴びてパンを口にくわえる。
急いで入学式のために買った一張羅を着て、アパートを飛び出した。
(ここから大学って何分くらいかかるっけ?)
バイクのエンジンをかけながら大学までの地図を思い描き、出発した。

10分くらいたっただろうか?どこからか事故があったらしく、
人だかりやら、救急車やらが混雑している道路があった。
俺も野次馬気分の興味半分で現場を覗き込む。
それはトラックと自転車との衝突事故らしい。
トラックに跳ね飛ばされ、無残に壊れた赤い自転車のタイヤがからからと音を出していた。
そのすぐ横には高校生らしき青年が頭と足から血を流して気を失っていた。
「うへ。悲惨だな、こりゃ・・・」
凄惨な光景に思わず俺がバイクのヘルメットを取り、そう呟く。
「そうだよね。跳ねられた人かわいそー」
突然声をかけられ、驚き、隣に現場に釘付けになっていた視線を隣に移す。
声の主はまだ小学生くらいの少女だった。
そのくせ、妙に大人っぽさが漂う。
「あのお兄ちゃん、助かるのかな?」
たった今、救急車に乗せられた青年を指差して少女が言う。
「さあな。運が良かったら骨折だけですむと思うぜ。もっとも、俺が見る限り
あいつは助かんなさそうだな」
「ふうん」
俺が言うと少女はさして興味もなさそうに頷いた。
「おい、小学生は学校の時間だろ?もう8時過ぎてるぜ?」
「そうだね。急がなくちゃ。・・・バイクのお兄ちゃん、今日気をつけてね」
突然の少女の言葉に首をかしげていると少女はさっさと横断歩道を渡って
行ってしまった。
(何だ?あんのマセガキ・・・)
不思議に思いながらも俺は静かにその場を離れた。

そんな俺をさっきの少女が横断歩道を渡った歩道で見ている。
無表情な瞳に少しだけ哀れみの感情が映った。

「なあ、今日さ結構ひどい事故あったよな」
今は大学の入学式の真っ最中だ。
眠たくなるような話しを聞きながらうとうとしかけていたとき
突然後ろに居る男に声をかけられた。
「あ、それ俺現場見てきた。自転車とトラックのやつだろ?」
「そうそう、あれ自転車の方は死んだらしいぜ」
へえ、と頷いて俺は男の顔をまじまじと見た。
整ってもいないが、不細工でもない。いわゆる普通ってやつか。
─逃げなくていい?─
急に夢の中の少女の声が頭に響いた。
え・・・?戸惑いが走る。逃げる?
─早く逃げなきゃ巻き込まれちゃうよ?─
クスクスと少女の声が笑う。そのとき起立の号令がかかった。立ち上がる。
─あーあ間に合わなかった。もうあたし知らない─
ふつ、と少女の声が消えた瞬間、女の悲鳴が鳴り響いた。

それは俺の戦いの幕開けの合図・・・












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