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【魔法のランプ】

作者: とーよー

ぼくは無人島にいます。

食べ物はありません。

飲み物もありません。


ただ1つ、古びたランプがあるだけです。


「魔法のランプ?」…と、思いたい気持ちは山々ですが実は全然違います。


残念ながら、ただの古びたランプです。


ガラクタです。

ゴミです。

質屋に売っても1円にもならないでしょう。


さすっても、叩いても、「魔神よ。魔神出ておいで。」と、叫んでも、ささやいても、つぶやいても、怒鳴ってみても、ウンともスンとも言いません。


(はぁ~。こんな事になるなら、ボート釣りなんてしなきゃ良かった。まさか、あんな嵐が来るなんて思わなかったよな~。みんなは生きてんのかな~?だれか助かったのかな~?救助隊でも呼んでくれたのかな~?それとも、おれと同じ、この無人島にいるのかな?いやいや、そんなに広い島じゃないし、丸1日歩き回ったけど誰もいなかったじゃん。でも…こんなランプが落ちてるって事は誰か居たって事?うーん。昔は普通に人が住んでたとか?そんなことより、このままじゃ、おれ死ぬんじゃない?ここで。)…等と、無意味で堂々巡りな思考回路に陥っていました。


その時、ポンポンと誰かに肩を叩かれました。


振り向くと、そこには、

長髪でボサボサ頭の白髪にヒゲさんモジャモジャの見るからに「島の仙人です」という様なおじいさんが「おぬしもココに辿り着いた様じゃな」という様な、悟り気味なテンションで立っていました。


「あ!あなたは誰ですか?ここはドコなんですか?」と、僕も基本に忠実な質問をぶつけてみました。


「ここはDoCoMoショップじゃ!!!」


おじいさんからは予想外の返事が帰って来ました。


しかし、「DoCoMoショップじゃ!!!」と言った後のニヤニヤ顔を見る限り、それはウソの様です。


ウソと言うか冗談の様です。


なんとなく

シュールなギャグセンスをお持ちの方の様な気がしました。


☆2☆


「あらためて聞きますけど、真面目にココはドコなんでしょう?」


「わからん。」


「はい?」


「いやー。まったく。わからん。というか、ワシもこの島に来たのは初めてじゃ。3時間くらい前に到着した。到着したというか流されて来ました」


この、おじいさんは島の仙人では無い様です。


「逆に聞きます。ココはドコじゃ!!おぬしは誰じゃ!!ワシはいったい何歳じゃ!!」


仙人どころか、ただのバカなおじいさんです。


僕はゆっくりと聞いてみることにしました。


「あのー。1つずつ聞きたいんですが。あなたはどの様な経緯で、この島に来られたんですか?」


ココからは話を聞いた後の話です。


このおじいさんも、僕と同じ嵐に飲み込まれ、この無人島に流れ着いた様です。


定年退職をしたあと、暇だったので、自家製のイカダで世界一周旅行をしようとした初日に嵐に飲み込まれたという、なんともバカらしい話です。


他にも、サラリーマン時代の話、孫に殴られた話、戦時中に1人で戦争反対の歌を唄い続け日本人と外人両方に殺されそうになった話、バカらし過ぎて少し面白いですが、ここでは敢えて省きます。


「なるほど。じゃあ荷物はなにも持たず、イカダに乗ったって事ですか?」


「まぁ。そうなるな」


「それって、嵐に飲み込まれなくも死ぬでしょ。飢え死にして。いやいやムリでしょ!フツーに!」


「それが大丈夫なんじゃよ。ランプがあるから。」


「…らんぷ?」


「あ!そうじゃ!そうじゃ!ワシのランプをしらんかね?」


そうです。


あのランプです。


このランプです。


このランプ

実は凄いランプだったんです。



☆3☆


「いやいや。だからー。魔法のランプってねー。おとぎ話の世界ですよ?」


「だ!か!ら!何回言えば分かるんじゃ!本物じゃ!ワシは本物を持っとるんじゃ!」


「…で?3つの願いを叶えますと?」


「だ!か!ら!ワシのは、おとぎ話のランプではない!3つや5つなんてケチなもんじゃないんだよ!無限じゃ!無限!無限!永遠に!何個でも!願いは叶いまくりじゃ!!!」


「ふーん。で、いまはなくしたと?」


「…そうじゃ。」


「この島のどこかにあると?」


「…そうじゃ。」


「しかも電池式だと?」


「…そうじゃ。」


「魔法のランプがアルミ単3電池を入れて『アブラカタブラ!よよいの!よい!』で、動くと?」


「…そうじゃ……えーい!うるさい!信じんならエエわい!ワシはランプを探す!どうせ電池は抜いてある!オマエさんが見つけたところでなんにも出来んわい!!」


こんな感じでおじいさんはドコかへ行ってしまいました。


まぁ、ランプをポケットに隠し持っていた、ぼくも相当な悪ですが。


しかし、こうなったらランプを1人締めです。


おじいさんが見えなくなったのを確認したぼくはポケットからランプを取り出しよーく見ました。


あります。


確かに電池を入れる箇所があります。


もちろん電池は入っていません。


しかし、まったく問題ありません。


電池を持っている人は、ヨボヨボで頭の悪いおじいさんです。


しかも、いまから走れば3分後には出会える距離に居ます。


無論ぼくは全速力で走りました。



☆4☆



「とぉいやー!!!」



全速力で走ったぼくは、その勢いで、おじいさんの背中にドロップキックをお見舞いしました。


おじいさんは5メートル程吹っ飛び、大きな栗の木の下に顔面を強打し、そのまま倒れ込みました。


近寄って見てみると顔面からはダラダラと鼻血を流し、気絶しています。


「よし」


ぼくは、おじいさんが肩から掛けている黄色のカバンをゴソゴソとあさりました。


すぐに電池は見つかり、早速ランプにハメ込みました。


「アブラカタブラ!よよいの!よい!」


呪文を唱えるとランプの先からモクモクと煙が挙がり、絵に書いた様なランプの精が現れました。


「ご主人様。願いはなんでしょう。なんなりとお申し付けください。」


きみは

本当にランプの精?


本当に

願いが叶うの?


おじいさんは

いままで

どんなお願いしてきたの?


…聞きたいことは沢山ありますが、めんどくさい

事は一切ナシです。


願いが叶うか叶わないか、とりあえず願ってみるしか無い訳で無論僕もそうします。


「コーラとチーズバーガー出して…」


ボンと出ました。


チーズバーガーです。

コーラです。

食べました。

飲みました。


本物です。

本物でした。


正真正銘、願いは何でも叶います。


「ヨッシャーーーー!!!!!!!!」


ぼくは生まれて今までで、ダントツ1番嬉しいなんてもんじゃありません。


そのくらい、表現出来ない位、最高な気分になりました。


そして、ここから、ぼくの無人島パーティーが始まります。


☆5☆


酒に女にごちそうに、今のぼくは世界1の幸せ者です。

アハハハハハハハハ。


「ラーメン出してー」


「寿司出してー」


「テレビを出してー」


「さっきの車いらないから消してー」


「このブスうざいから消してー」「もっとかわいー女に変えてー」


「名前とか分かんないけど超高級ワイン出してー。1番高いヤツねー」


やりたいことは

やりました。


やりたいことは

やってます。


さっきまでの落ち込みが嘘の様です。


思ったことを口に出したらソッコーすぐさま思い通り。


これ以上の幸せが他にあるでしょうか?


家に帰りたい。

無人島から出たい。

なんてちっぽけな悩みだったのでしょう?


そんなもの

慌ててお願いする必要もありません。


いやイヤ。

むしろ出たくはない。

なんなら

一生この無人島で生活してやろうじゃありませんか。


だれも

いない無人島上等ではありませんか。


なんていったって、ぼくにはランプがあるのです。


「うーん。つぎなにしよーかなー?」


「ご主人様。願いは無限になんなりと」


「うーん。じゃあ。特大花火100連発!!!」


「かしこまりました」…と、いう台詞を最後に事件が起こりました。


☆6☆


「アブラカタブラ!よよいの!よい!」


「アブラカタブラ!よよいの!よい!」


「アブラカタブラ!よよいの!よい!」


キレイな花火が挙がる中ぼくは何度も言いました。


何度言ってもランプの精は現れません。


花火100連発をお願いした直後にランプの精がスッと消え、ぼくは不安な気持ちになりました。


何故なら初めに呪文を唱えてから、今の今までランプの精は1度も僕の前から姿を消したことはなかったからです。


ぼくの不安は的中しました。


何度言っても

何度叫んでも

何度呪文を唱えてみても

ランプの精は現れません。


「おい!ジジイ!どーなってんだよ!」


ぼくは大きな栗の木の下で気絶しているおじいさんを右足の爪先で小突く様にして起こしました。


「…んーん…イタタタタ。なんじゃ?なんじゃ?いま。なんじゃ?」


おじいさんは頭をさすりながら寝ぼけています。


今の状況を全く分かっていません。


「ランプの精消えたぞ。出てこねーぞ。どーすりゃいいんだよ」


「ら…ん…ぷ?…みつかったのか!!?」

ぼくはなにも分かっていないおじいさんに最初から説明しました。


最初からというか、ぼくがおじいさんの背中にドロップキックをお見舞いした辺りからです。


おじいさんは初め、怒り狂っていましたが、嘘を交えつつ、うまい具合になだめました。


バカなのですから、その辺は楽勝です。


「なるほど。ワシの背中に付いていたチョー猛毒ケムシを退治するために仕方なくワシごと蹴り倒したのは分かった」


「ワシが目覚めた時に喜ぶ様に勝手にカバンから電池を取り出しランプを使い、ご馳走やその他、色んなものを出したのは分かった。」


「突然ランプの精が消えてしまったのもわかった。そして、その理由もワシには分かる。」


「…なんなんですか?」


「フハハハハハハ!心配するな!ただの電池切れじゃ!」


「…はぁー…なるほど…で?…替えの電池は?」


「そんなもんない。もちろん最初にお願いしたんじゃろ?」


「……なにを?…ですか?」


「替えの単3電池を」


…と、おじいさんが言ったところで100発目の花火が大きな音と共に挙がり終えました。


終わりです。



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― 新着の感想 ―
[一言] すごい! あなたの話、とても面白いですね。 これもお気に入りに入れておきます。
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