標的58 ラヴィーナの死
ハヤトの3才の誕生日パーティー当日、彼女が現れることはない。
誕生日パーティーが終わり、ハヤトはいつものピアノの前に座っていた。小さな足音がハヤトの方へ近づいてくるのが聞こえた。ハヤトの姉のビアンキだ。
「ピアノ、凄かったねハヤト!2曲目なんかとくに・・・私、感動しちゃ」
ビアンキが言い終わるより先にハヤトは思い切り鍵盤を叩きつけた。
「ハヤト・・・?」
「この曲は完成じゃないんだ・・・お姉さんと一緒に弾かなきゃ完成じゃないんだ!」
ハヤトは部屋を飛び出した。
「約束したのにっ・・・」
階段下ですすり泣くハヤトに、白衣の男が話しかけた。
「ったくうるせえなあ!これだからガキは困るぜえまったく」
「シャマル・・・」
シャマルはそっとハヤトの横に座るとハヤトの髪をぐしゃぐしゃにした。
「男が女に泣かされんな、仕方なかったんだよ。あの美人の姉ちゃんは・・・特にな」
「意味わかんねえよぉ・・・」
シャマルは全て知っていた。彼女がハヤトの母親だということを。そして彼女が決してハヤトの誕生日パーティーに来れないことを。
ハヤトの誕生日の5日後、彼女が組織の別荘で誕生日祝いにハヤトと密会するという許可が出た。シャマルが頼んだのだろう。そして頼んだシャマル本人も思いもしなかっただろう、まさかその日を境に、彼女が二度とハヤトと会うことが出来無くなるということを。
そして当日、彼女はあり得ない場所で謎の転落死を遂げた。一切残らなかったタイヤ痕、そう、その死は故意的な物だった。
はじめは父親の組織に消されたものだとばかり思っていた。
=5年後=
8才になったハヤトが屋敷内をうろついていると、お手伝い達の話し声が聞こえてきた。
「今日で5年目ね」
「なにがですか?」
「ほら、ハヤトぼっちゃまのお母様が亡くなられてからよ」
「えっ、ハヤトぼっちゃまって奥様の子じゃなかったの?」
その言葉を聞いて、体が動かなくなった。
「ハヤトぼっちゃまって若いピアニストに産ませた子なのよ」
「オレの母さんて・・・若い・・ピアニスト・・あっ」
本当の母親、銀色の髪、ハヤトの頭の中に甦ってきたのは、一緒にピアノを弾いた彼女の姿だった。3才の誕生日以来彼女は現れなくなった。その時、ハヤトの中で全ての辻褄があった。
「・・・あの人がオレの・・・!」
ハヤトは夢中で走り出した。
(あの人が・・・オレの・・・お母さん・・・本当の?)
溢れだす涙を拭おうともせず、ハヤトは屋敷を飛び出した。
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