9 流歌=楓
美術室。
楓は、床にぺたんと座っているみくるの前に立っていた。
「結局最後までみくるは助けなかったし・・・・」
いきなり楓が口を開いた。失望したような口調だった。
「楓は・・・・・エスカレートしたイジメに耐え切れなくって・・・」
みくるは怯えきった表情で楓を見ていた。
「その命を絶った・・・・・・・・。知ってる? 首をつるって・・・苦しいんだよ」
楓の顔が本当に苦しそうにゆがんだ時、みくるは目に浮かべた涙を一粒落とした。
「でも・・・」
ふっ、とふいに楓の表情がやわらいだ。
「イジメの苦しさよりはましだったって事だよ・・・?」
「今さらこんな事言っても手遅れだけど・・・あの時味方が一人でもいれば・・・・・・」
また楓の顔が一瞬ゆがんだ。
と、思うと眼から一筋の涙が流れ落ちた。
「楓は今、みくると一緒に美術部に居たかもしれないのに・・・・・」
グスッ、と一瞬泣いた後、楓は服の袖で涙を拭いた。
「今度はあたしが、みくるに仕返し・・・」
一度手を後ろに隠すと、また出した。
そしてその手には、柄はこげ茶、刃は銀色。
そして・・・先の方は鮮やかで、艶やかな・・・・・・赤。
血のついたナイフを握っていた。
「楓・・・・・・・ごめんね・・・・・ごめんねぇ・・・・・」
みくるは泣きながら、後ずさりながら、必死で謝った。
「みくるに復讐するのは、無理かもしれないけど・・・・・・・・あたし、頑張ってみるね?」
「ねぇ・・・許してよ・・・・・。お願い楓、ごめんねぇ・・・・・」
ナイフを手に持って近づいてくる楓に対して、みくるは恐怖も抱いていた。
だが、それよりも、楓に対してのすまなさでいっぱいだった。
恐怖と、すまなさで、みくるは謝った。
だが・・・
「クス・・・・無理・・・・・」
楓は微笑を浮かべながら、みくるに向かってすごい速さで近づいてきた。
「お願いお願い・・・・! ごめんねぇ・・・・・!!!」
「クス・・・クスクスクスクス」
とうとう目の前に来た楓は、ナイフを振りかざした。
「フフッ・・・キャハハハハハハハ!!!!」
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
世界が真っ暗になる直前、
ナイフが自分に向かって来るのを、みくるは見た。
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