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更新が遅れて申し訳ありません!
どうぞ、続きをお楽しみください。
足音がひとつ
作:睦月☆



8 過去の罪


「で? 何か用なわけ??」
誰もいない、教室の片隅で、みくるは眉をひそめつつ言った。

「用? 用はね、うちらの邪魔すんの、やめてくんないって話だよ!」
魅華ともう一人の仲間の千鶴ちづると共に立っていた沙絵が言い放った。 
「邪魔・・・か。うちが、いつあんたたちの邪魔したんだよ?」
「はぁ? 分かってないわけ? 楓の事だよ! 味方につかないでくれる? あいつの」
「何言ってんの? 分かってないのはそっちだよ。なんで友達の味方しちゃいけないわけ?」
「今までなんも言わなかったくせに、いきなりいい子ぶってんじゃねぇよ!!」
「今まで自分の間違いに気づかなかっただけだよ」
「間違い!? 間違ってんのはあいつだろ!! 楓だよ!!」
「何で楓が間違ってんの? あんたらが勝手に言ってるだけじゃん」

みくるは比較的冷静であるが、沙絵とその仲間はもう理性が飛んでいる。
喚き散らしつつ、意見を言ってくるのでワケが分からなかったが、
要約するとこういうことらしい。
『楓がいじめられるような性格をしているのが悪い。
 うちらは楓にそういう性格直せよと教えてあげているだけ。
 この頃せっかく楓が反省してきたんだから、お前は口を出すな』
「いいかげんにしてよ!! そんなの、いじめの理由を正当化してるだけじゃん!」
「いじめじゃないっつってんだろ! とにかく、これ以上邪魔したら、次はお前だからな!」
「そうそう。その腐った性格、叩きなおしてやるよ!」
「・・・腐ってんのはそっちだろ・・・・・」
「あぁ?!」
「信じらんない! いじめをやめろって言えばいじめじゃない、楓の味方をするって言えば邪魔すんな?! 全部自分たちの都合のいいように! 腐った性格?! よく言うよ! あんたらなんか腐るを通り越して、土に返ってるじゃん!」
「何だよ! いきなりキレてんじゃねぇよ!」
「とにかく! うちは楓の味方だから!」

それだけ言うと、みくるはサッと魅華の横をすり抜けて、家に帰っていった。 



「っ・・・!! 何だよあいつ!」
「・・・どーすんの? 沙絵?」
「・・・まずは、あいつを潰す・・・」
「オッケェ〜! クスクスッ・・・」
三人は誰もいない教室の片隅で、妖しく笑った。





---------次の日-----------------------------------------------


ガララララ・・・
朝、みくるは教室の扉を開けた。
目に憎しみをたたえて。



生徒玄関で下駄箱を開けたみくるは愕然とした。
ガサッ、バサバサッ・・・!
音を立てて、ゴミ箱の中身をそのまま入れたかのような大量のごみが落ちてきた。
「っつ・・・・! やられた・・・!」
ゴミ箱を足元に持ってきて、下駄箱の中身をそこに移した。
「はぁ・・・。こんなことしかできねぇのかよ!」
いつになく荒っぽい口調で、乱暴に靴を下駄箱に入れて、上履きに足を入れた。
「っ・・痛っ・・・・!」
上履きの中に、画鋲が入っていた。
手が込んだ嫌がらせだった。
上履きの中敷きを取って、底に画鋲をいれ、上からまた中敷きをかぶせる。
見ただけでは、靴底から少し金色のとげのようなものが突き出ているだけ。
一目見ただけではわからないようになっていた。
靴から画鋲を取り出して、だまって教室に向かった。




何気なく沙絵たち三人に目を向ける。
こちらの反応をうかがっているような目つきだった。
みくるはあえて何にも言わずに、まっすぐに自分の席に向かった。
机には何の変哲もない。
(・・・楓には気づかれずにうちを遠ざけたいって事か?)
それならそれで都合がいい。
楓に余計な心配をさせずに済むだろう。
一人で戦ってみせる。
うちは独りじゃない。
いざとなったら、楓もいるし。








それからは、毎日毎日だった。

ゴミ箱の中身を下駄箱に。
下駄箱の中身をゴミ箱に。

ゴミ箱の中身を机に。
机の中身をゴミ箱に。

落書きとかさ、目立つ嫌がらせモンがないのは、楓に気づかれたくない為?
『それなら受けて立ってやる!』
強がってたのは、最初の一週間だけだった。
だって、ウチはもともと、普通の女の子だった。
例え話をしようか。


例えばさ、
提出物があるとするじゃん?
そうするとさ、

1、出さない
2、きちんと出す
3、出す。けど、真面目にはやらなくって出す

答え、写すとか?
『2』バンの子のさ、プリント。写すとかさぁ。
うちは、『3』だったわけ。もともとはね?



例えばさ、
イジメがあるとすんじゃん?
そうするとさ、

1、いじめる
2、いじめられる
3、黙ってみている

ううん。見てもいないよ。
知ってはいる。だけど、何も、しない。みたいな?
そうだね、俗に言う、『見てみぬふり』とかってやつ?
やっぱさぁ、うちは、『3』バンだったわけ。
『1』もイヤ。『2』もイヤ。
なら『3』しかねぇじゃん? みたいなさぁ・・・。




今はね、『4』だよ。てか、『4』になりたいと思ってる。
実際は『2』に近いけどね?

4、『2』の味方になってあげる

とかって、カッコよくない?
でも、そんな甘いもんじゃないって知った。
格好イイってだけで、救えるモンじゃない。
だってさ。『1』はまだいいんだ。もうホラ、諦めついてるから。 
問題はさ、『3』だよ。
哀れみを込めた眼で、チラッと見てきてさ。
ヒソヒソヒソッ・・・って?
そんな眼するんだったら、助けてよ。って。
ゴメン。うちが悪かった。
格好だけで行動した、軽はずみなうちが悪かったから、
未来と楓うちらを助けて?
って言いたくなる。助けを求めたくなるけど・・・。
誰も助けてはくれないんだ。って、そう思う。この頃は。






まぁ、とにかくさ、そういう『普通』の女の子がさ、
いじめられて、それに耐え切れなくって。
守ろうとしてた『2』の子は何も知らずに笑ってて。
うちは、身代わりになってたわけ。
もう精神こころがボロボロだった。
でも耐えたよ、耐えた方だと思う。
一ヶ月ぐらいかな?



「沙絵・・・・。もう、やめて・・・・くれない?」



放課後、三人の前で弱音を吐いた。
みくるうちは負けた。
そこからはもうトントンと話が進んだ。
 
『もう楓には話しかけるな』
『もう楓の味方はするな』
『もう沙絵達うちらの邪魔はするな』

そんな条件。
全部呑んだ。
最低だと思う。思った。自分でも。

でも、その時はそんな事考える余裕なくって。
今考えると、最低。

1、いじめる よりも。
3、黙ってみている よりも。




5、味方ぶって、見捨てる







              最低。







「じゃ、もうあんたへの嫌がらせはやめてあげるぅ〜」
勝ち誇ったで、甘ったるい声で沙絵は言った。
「・・・あり・・・・・・・・・・がと・・・ぅ」
言うしかなかった。
「じゃぁ、約束どおり、楓には、もう干渉しないでねぇ〜?」
同じような勝ち誇った瞳で、魅華も言った。
「あんた・・・クスクスッ・・・最低だねぇ〜? 結局偽善者ぶってたってことでしょ〜?」
千鶴に言われた時は、『こうするしかないんだもん』と思った。
でも、やっぱりうちは・・・・・・・・最低だ・・・・・・・・・・・。
「は〜ぁ・・・。フフッ。楓がどんな反応するかなぁ〜?」
沙絵が唇を上げながら、楽しむように言った。
「楽しみだねぇ〜、沙絵?」
「うん!」



「じゃぁ、用事は済んだわけでしょ? さっさと帰ったら?」
沙絵がうちの頭を軽く小突きながら意地悪く言った。

   「バイバイ。『偽善者』、さん」

「・・・・・・・バ・・・イバ・・・・・・・イ・・・・」
「また明日ねぇ〜?」




ガラガラガラ・・・・・・・・・・・ピシャッ!













教室からみくるがいなくなると、三人は不敵に笑った。
「んじゃぁ〜! 邪魔者も排除した事だしぃ〜!」
「やりますかぁ〜!」
「ホントにやるのぉ〜?」
「あったりまえじゃぁ〜ん!! せっかく心優しき未来みくるさんが諦めてくれたんだしぃ〜?」
「バレたら怒られちゃうよ?」
「誰も、あたし達がやったなんて言わないって!」
「だって分かるじゃん! クラスでこんな事やる人、ウチらしか居ないじゃん!」
「だからって、チクるやつなんていないって!」
「でもさぁ〜?・・・」
「る・・・っさいなぁ!! グジグジ言うんだったら抜けなよ! あたし一人でやるから!」
「えぇ?! やるよやるよ!!」

魅華は千鶴の腕を引っ張り、沙絵の後に続いて楓の机に行った。
「あいつ、全部置き勉してるからなぁ」
ガサガサ、と、楓の机の中をあさっていた沙絵はふと手を止めた。
「お、ホラ。筆箱があったよ〜」
「それでいいじゃん。早くしよぉよ〜」
「あせるなあせるなっ」

その筆箱を手に、黒板の前に集まった三人は手に手にチョークを持った。
お決まりの、『落書き』だった。
『馬鹿』
『死ね』
などはもちろん、
『お前に味方なんかいねぇんだよ』
『もう学校くんな』
などなど。
一通り書き終わると、沙絵は教室の隅に向かって筆箱を投げた。
スト・・・ガサッ・・・・・・・
ゴミ箱の中へ。

「さぁ〜てと、じゃ、うちらも帰ろっかぁ〜」
「オッケェ〜」
「今日はどっか寄ってくの?」

何事もなかったかのような涼しい顔で、三人は自分の荷物を持って教室から出て行った。




----------------翌日---------------------------------------------





ガララララ・・・・・
楓が教室の扉を開けると、みくるがもう自分の席についていた。
ガラララ・・・ピシャ・・・・


おかしいなぁ・・・・。
いつものみくるちゃんだったら、楓が来たらすぐにオハヨウって言って近づいてきてくれるのに・・・・・・・・・・・・・・・・・。


楓は自分からみくるの席に近づくと
「み・・くるちゃん! おはよっ・・・!」
と元気に挨拶をした。
・・・・が、肝心のみくるからは返事が返ってこない。
「・・・お・・はよう、みくるちゃん」
みくるはこわばった顔つきで、目だけで楓を見た。
「・・・・・おはよ・・・・・・」
無愛想に、それだけが返ってきた。

(おかしいなぁ・・・・・。お腹でも痛いのかなぁ)

考えながら自分の席につき、バックをロッカーに入れてきた。
先生が来るまでの間、絵でも描こうかと机の中に手を入れた。




















(来た・・・・。)
楓が。
いつものうちだったら、真っ先にオハヨウ!って言うんだけど・・・。
目だけで何気なく沙絵達を見ると、
『話しかけんじゃねぇぞ!!』
という雰囲気が伝わってくる。

(・・・・・もうあんな目にあうのはイヤだ・・・・・)
だから、声をかけない。

すると、楓の方から机に寄ってきて、
「み・・くるちゃん! おはよっ・・・!」
と言う。
『もう、楓と話さない事』
という条件が頭をよぎる。
なんとも言えず黙っていると、楓はもう一度挨拶をしてきた。
「・・・・・・・・おはよ・・・・・・・・・・・・」
出来るだけ無愛想になるように、目だけを動かして、声を低くして呟いた。
すると、楓はそれで満足したのだろうか、自分の席に戻っていった。













無い・・・・・。
昨日まではあった、楓の机の中に確かにあった。
筆箱が・・・・・・・・・・無い。
沙絵ちゃん達がやったのかなぁ?
この頃は嫌がらせが無くって、安心してたのに・・・・・。
あぁ、でもそうだ、楓はもう独りじゃない。
みくるちゃんが居るから大丈夫だ。








(何? 楓、何でこっち来るの?)
カタンと席を立って、楓はまっすぐみくるの机に向かってきた。
みくるは慌ててうつむいた。
机の上の、彫刻刀で彫られた落書きを見る事に熱中した。

「あの・・・・みくるちゃん・・・・」
(・・・・・何? 楓としゃべったら、またうちが標的ターゲットにされちゃうんだよ?)
ウチは何にも言えなかった。
「・・・・筆箱が・・・なくなっちゃって・・・・・」
「・・・・・・・・・・」
「一緒に探してくれないかなぁっ? よかったら・・・・」
答えてあげたい。でも、斜め後ろから沙絵達三人の視線を感じる。
『しゃべるな。味方するな。独りにしろ、そいつを』
という、痛い、悲しい、怖い視線を。

楓、ゴメンネ。
でもさ、楓、そんなにまでだったの?
そんなにまでうちを頼っていたの?
そんなにまでうちを信じていたの?
楓。あんた馬鹿じゃないの?
人間なんて、いくらでも裏切るんだよ?
人間なんて、いくらでも裏切られるんだよ?

そう思うと、逆にこの、愚直なまでに人を信頼する女の子が憎たらしくなってきた。

「・・・・みくる・・・・ちゃん?」
「もう!うるっさいなぁ!!」
「ぇ・・・・・?」
「もう、うちに話しかけないでくれるかなぁ?」
「えぇ? 楓、なにか気になる事しちゃったのかな?!」
「・・・・・・・・」
「お願い、直すから、悪い所あったら、直すからっ・・・」

自分が悪いと思ってるの?
悪いのは100%ひゃくパーうち。
そんなに必死になられると、今度はそこが憎たらしくなってくる。
やっぱりあんたは、バカだね。


「・・・自分で考えてみればっ・・・!!」


楓に悪い所なんて無いけど、口が勝手にそう言ってしまった。
後ろで沙絵達が笑っているのが分かる。
もうこの教室から出て行きたくって、楓を押しのけて、扉に向かった。



「そんな事言われたって・・・・・」
楓は小声でつぶやいた。
つぶやきながら、視界がどんどんぼやけていくのを感じた。
「わかんないよ・・・」
ポロポロと涙がこぼれ落ちた。
どんないじめを受けるよりつらい。
友達だと思ってたのに、裏切られた・・・のかな・・・・・??
とうとう床に座り込んでしまった。

「わかんないよ、みくるちゃん!!!!」

嗚咽と共に、悲鳴に近い声が自分ののどから出るのを聞いた。















あたしは、やっぱり最低だ。


ののしってもいい。
口汚く、罵られても、いい。
「最低だよ! あんた」
と、軽蔑されても、いい。

あたしは、それだけの事をしたんだ。

ゴメンネ、楓・・・・・・。













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