足音がひとつ(3/12)縦書き表示RDF


足音がひとつ
作:睦月☆



3 恐怖




毎日、だった。
毎日、流歌と帰った。
毎日、他愛ない話をした。
毎日、あっという間に時間は過ぎ、
そして、毎日・・・・・。






今日は、雨だった。

「じゃあ、みく、ばいばぁい」
「う・・・ん、ばいば・・・い」

流歌と別れたら、気を引き締めないといけない。
楓が、この頃毎日やってくる。
ひたひたひたひたと、ついてくる。
振り向いてはいけない。
何事もないように、ふるまわなければならないのだ。

ぱらぱらぱらぱら・・・・・
傘に雨が当たる。その音が、心地いい。
楓の足音そんざいを、消してくれる。
ぴちゃぴちゃぴちゃっ・・・
わざと、水を跳ね飛ばしながら歩く。

ぴちゃっ、ぴちゃっ・・・

ひたっ、ひたっ、ひたっ・・・

あぁ、でもやっぱり聞こえるんだよね、どうしよう。

もう、みくるは慣れてきていた。
自分の後ろに足音がすることを、恐れなくなった。
だが、
自分の後ろに、楓がいると思うと、やはり怖い。
あの、寂しそうな、悲しそうな、青白い表情かおをして。
歩いていると思うと、やはり、足音を恐れずにはいられない。


ガチャッ、
「ただいまぁ〜」
バタンッ
ガチャッ、ガチャッ。
カチャカチャ、カチャンッ。
うん。そうなんだ。
もう、うちには日課になってるよ。
何事もないようにただいまを言う。
その直後、扉を閉め、鍵を二つ掛け、チェーンまでする。
それは、やっぱりあいつが怖いからなんだろうね。


今日は、ちょっと違った。ほんの少し違った。
扉を閉める時に、隙間から外を見た。

あぁ、そっか。
足音が、一人分多いっていうことは。
足跡も一人分多いってことなんだね?
泥の上についている、足跡。
足跡が、足音が、ひとつ。
余計に。


楓は、きっと、ずっとついてくるだろう。
楓は、きっと、怒っているんだ。
怒って、そして悲しんでいるんだ。
あの、暗くて悲しい、寂しくて青白い表情かおの中で。

バタンッ。
足跡を視界から消して、鍵を掛けた。
チェーンも掛けた。

そして、
みくるは、きっと、何事もないようにふるまい続ける。
みくるは、でも、鍵も閉めるしチェーンも掛ける。
みくるは、楓を恐れているから。
自分のした事と、過去の思い出と共に。












ケータイ表示 | 小説情報 | 小説評価/感想 | 縦書き表示 | TXTファイル | トラックバック(0) | 作者紹介ページ


小説の責任/著作権は特に記載のない場合は作者にあります。
作者の許可なく小説を無断転載することは法律で堅く禁じられています。




BACK | TOP | NEXT


小説家になろう