挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

ブックマークする場合はログインしてください。

ななこちゃん

作者:三鷹 四郎
「ななこちゃんって知ってる?」

 最近、全国で噂になっている都市伝説ななこちゃん。
 イジメられて自殺をしてしまった子が、自分の友達を探して彷徨っている話だ。ちなみに、ななこちゃんという名前は学校の七不思議の七から取ったもので本名ではない。本名は誰も知らず、人知れず「ななこちゃん」という名前がついて噂が流れている。

 この噂は全国共通の七不思議と成りつつあった。しかし、この噂を作った者がいる。その者の名は、高校2年生の笠井 留美(かさいるみ)。面白半分で作った怪談を友達に話したところ爆発的に広まってしまったのだ。
 最初は全国的に広まってしまったことに狼狽えたが、広まった噂を自分が作ったものだという気持ちが高揚感を生み、狼狽えることも無くなっていた。

 しかし、噂は信じれば信じるほど本物になることがある。プラシーボ効果というものをご存じだろうか。思い込むことでそれが本当になってしまうことである。例えば、このような話がある。とある女性に目隠しをし、切れない刃物を腕の上で滑らせ、その上から水を流し、「これは血だ」と伝えたところ、彼女はショック死をしてしまうという話だ。
 プラシーボ効果とは別にチベットにはトゥルパという霊体がいる。日本語訳で「人工未知霊体」つまり、人間が「無」から霊体を作り出してしまうのだ。実際に作ることは難しいが今回は別だ。
 全国的に噂が広まり、イジメ、自殺が多くなったこの現代では、本当にななこちゃんがいるという思い込みが多くなってしまったのだ。

 結果的に言えば、噂は本当になった。



 9月11日。天気は晴れ。今日もあの噂を聞く。ななこちゃんの話だ。私が作った話が全国的に流れて、みんなが信じ込むのが面白くなってしまった今日この頃。
 今日もいつものように学校に向かう。友達が私に怖い話をしてとせがむだろう。私にこの手の才能があったとは、自分でも驚きだ。
 ただ何となく作った怪談話で、みんながキャーキャー言うのだ、面白くて仕方がない。

「るみっち~! おはよ! 今日も晴れてて暑いね~。……後でヒンヤリするような怖い話、期待してるねw」

 このように友達が頼んでくる。他人に頼まれたら嬉しくなって話しちゃうのが人間の本性だ。

Prrrrrrr

 登校中に携帯が鳴る。自分のだ。画面表示には非通知設定の文字。誰なのか分からないが出てみる。

「もしもし? どちら様ですか?」
「……」
「あのー? いたずら電話ですか?」
「……」

 返事が無い。ただの屍のようだ。ではなくて、いたずら電話だった。私は無言で切った。そうすると、また着信が鳴る。

Prrrrrr

 再び非通知設定の文字。すごく腹が立つ。出なければいいものの電話に出る。

「もしもし? あの何か用ですか?」
「……」
「あの、ほんとにやめて頂けませんか? 次は出ませんから、用件があるなら言ってください」
「……」

 怒ってみたが返事はない。


「ん?」

 私は気付いた。無言のように聞こえるが、ボソボソと何かを言っているのだ。耳を澄まして聞いてみる。

「……ダヨネ」
「あの、もう少し大きな声で言ってもらえますか?」

 女の子の声のようだが、あまり良く聞こえない。
「…モ……ダヨネ」
「あの、ふざけてるなら電話切りますよ?」

 いたずら電話に変わりはなさそうなので、切ろうとすると。

「……マタネ」

 と向こうから告げて切ってきた。
 何がまたねだよ。もう出ないから。なんて考えながら再び学校に向かう。今日話す怪談を頭の中で練り直しながら、電話の内容は忘れていった。



「今日から、今川 妃美(いまかわひみ)は長期休学になった」

 そう告げられたのは朝のホームルームだ。彼女は私にとって親友だと言っても過言ではない。昨日までは元気だったのに。どうしたのだろうか。風邪なんて引くのも滅多にない妃美が長期休暇だなんて、骨折とか大けがでもしたのかな、と考える。
 ホームルームが終え、担任の元へと向かう。

「先生、ちょっといいですか?」
「ん? あ~笠井か。どうした?」
「あの、妃美のことなんですけど。骨折とか何か怪我でもしたんですか?」

 そう聞くと、担任の顔が暗くなる。どうも答えずらそうだ。

「……あの。あんまり、聞かない方がいいですか?」
「い、いや。そうだな、笠井は確か今川と友達だし、幼稚園からの仲みたいだから言うが、笠井の奴どうも精神病になってしまったらしい。もしかしたら、長期休学ではなく退学になりそうな感じなんだ。先生も様子を見に行ったんだが、様子が普通じゃなくてな」

 妃美が精神病とかありえない。怖い話とかは苦手だけど、そこらの男子なんかよりも男らしい妃美が精神病。嫌なことも寝ちゃえば忘れる、あの妃美が精神病と聞いたら、誰でも意外過ぎると思うだろう。

「そうだ。笠井なら問題ないだろう。今川の家に行って様子を見てきてくれないか? 親御さんも笠井なら許してくれそうだ。今日の放課後は大丈夫か?」
「大丈夫です」

 私は放課後に妃美の様子を見に行くことになった。様子が分かったら学校に戻り先生に報告するという面倒くさい内容が増えたが、幼稚園から仲良しの妃美の様子を見に行かないという選択肢は無かった。

 放課後になり妃美の家に向かう。向かう途中も「なんで妃美が精神病に。どうしていつも元気の妃美が……」と考えながら歩いていた。
 妃美の家に付きインターホンを押す。

「……どちら様でしょうか」
「あの、笠井です。笠井留美です。妃美さんの様子を見に来ました」
「……留美ちゃんね。田中先生から聞いてるわ。妃美のためにありがとう。今、玄関開けるから待っててね」
「はい」

 おばさんの声に元気は無かった。いつも陽気なおばさんだったのに、と少し悲しくなる。

「留美ちゃん。さぁ入って」

 玄関が開き、頬がこけて顔色の悪いおばさんが出て来た。

「おばさん。体調大丈夫?」
「……あの子が心配でね。中々食事も喉に通らないし、良く寝れないのよ。心配してくれてありがとうね留美ちゃん」
「いえいえ」

 会話をしながら、妃美の部屋へと向かう。

「留美ちゃん。今の妃美を見ても嫌いにならないでね……」
「大丈夫ですよ。妃美は私の親友です」

 そう返事をすると、おばさんが妃美の部屋のドアの取っ手に手をかけ、ゆっくりと開けていく。
 ドアが開くと声が聞こえて来た。妃美の声だ。

「ずっと友達だよ。ずっと友達だよ。ずっと友達だよ。ずっと友達だよ」

 同じ言葉を繰り返し、部屋の天井を見つめる彼女がいた。目は虚ろで、口から涎をたらし、両腕は脱力しきって、頬はやつれて、髪の毛はぼさぼさだった。

「妃美? 聞こえる? 私だよ。留美だよ」
「ずっと友達だよ」
「妃美が元気ないって聞いてきたよ。何かあったの?」
「ずっと友達だよ」

 妃美はずっと友達だよ。としか繰り返さない。誰に向かって言っているのだろうか。その様子を見ておばさんは堪えきれず泣き出してしまう。私もこのような姿の親友を見て泣きそうだ。

「……ごめんね留美ちゃん。せっかく来てくれたのに。今日は遅くなるから帰りなさい。また時間を空けてきてくれると、私も妃美も喜ぶわ」
「分かりました……。おばさん何のお役に立てずにごめんなさい」
「いいのよ。さぁ部屋から出ましょう」

 そういうと私とおばさんは妃美の部屋から出た。
 出るときも妃美は友達だよ。とずっと言っていたが最後に聞こえた部分だけ違う気がした。

「ずっと友達だよ。ずっと友達だよ。ずっと友達だよ。………あなたも友達だよ」



 妃美の家から出て、学校に向かう。正直、気分はすぐれないので家に帰りたいが、担任に報告すると約束をしてしまったので律儀にも向かっているのだ。今どきの女子高生なら、そんなことはボイコットだが、親友が関わっているので仕方がない。
 学校に付き、職員室に向かう。時間は6時半くらいだろうか。部活も終わっている時間帯で校舎内に人はいない。少し薄気味悪いが気にしない。
 職員室に付き、ノックをする。

「失礼します。2年3組の笠井です。田中先生はいらっしゃいますか」

 と言いながら入っていくと職員室には誰もいなかった。どうしてだろうか、こんなのおかしい。飲み会で一斉に帰ったのだろうか。そうだとしたら担任は薄情者だ。約束させておいて破るなんて。もう帰ろう。

Prrrrrrrrr

 私の電話が鳴る。画面には今川 妃美の文字。
 妃美からの電話だ。家ではあんな様子だったのに、私が帰ったら治ったのだろうか。
 誰もいない学校と、おかしくなっていた親友からの電話で不安が高まる。しかし、これが本当に妃美なら嬉しいことだ。この電話は妃美であることを信じて電話に出る。

「もしもし。妃美?大丈夫なの?」
「……」
「妃美? 妃美なんでしょ?」
「……私ななこ。あなた私の友達?」

 妃美の声ではない。しかもこの子、今ななこって言った。ななこは私が作った噂の子だ。そうか、これはイタズラなんだ。

「妃美の携帯を使ってイタズラするのやめてよ!」

 そう怒鳴ると電話は切れた。それと同時に校内に設置されているスピーカーから、キーンコーンカーンコーンという間の抜けた音が校舎に鳴り響いた後。

「留美ちゃん。私達友達だよね」

 さっきのいたずら電話と同じ声がスピーカーから聞こえた。これはイタズラなんかじゃない。いたずらで校内放送を使うバカなんていない。
 不安が募り、冷汗が出る。心臓の鼓動が徐々に激しさを増し、動悸を覚え、息苦しい。頭から血が引いていく感覚と共に、自分の後ろから誰かの息遣いが聞こえてくる。
 振り向けない。振り向いたらいる気がする。でも、振り返らないと逃げられない。

「私とあなたは、友達だから逃げないよね?」

 その声が聞こえたと同時に後ろを振り返った。

 そこには身長が153㎝くらいで、髪が肩くらいにかかっている女の子が立っていた。しかし、その顔には靄がかかり、辛うじて分かるのは醜く歪んだ笑っている口と、そこから垂れている涎だった。

「きゃああああああああああああああああああ」

 私は叫び、彼女を突き飛ばす。突き飛ばせたことに驚きだが、そんなこと考えている余裕もなく。走り出した。

 どのくらい走っただろうか。気付いた時には家についていた。
 部屋に入ると、ベッドに入り込み、布団を頭からかぶり隠れる。
 どうしてあんな化け物がいるの。どうして私なの。どうしてどうして。いくら考えても理由が分からない。しかし、一つだけ分かったことがあった。それは、妃美はななこちゃんと友達になったということだった。妃美の言っていた友達だよ。は、ななこちゃんに向けていっているものだと気付いた。そうなると、私が妃美の部屋から出る時に言った「あなたも友達」の言葉が私を襲う。
 私もななこちゃんの友達になるということなのだろうか。嫌だ、妃美みたいになりたくない。

 布団の中に潜り込み時間が経つ。ドアが開く音も足音も聞こえない。きっともう来ないだろうと一息つく。

Prrrrr

 電話が鳴る。怖い。またななこちゃんかもしれない。携帯の画面表示を見るとお母さんも文字が浮かんでいる。
 私はとっさに出た。

「お母さん! 早く帰ってきて!」
「嫌ね、あなたったら。もうとっくに帰ってきてるわよ。ずっと呼んでるし、扉をノックしても出てこないじゃないの。だから電話したのよ」
「……へ?」 

 どうやら怖がりすぎて母親の帰りにも気づいていなかったようだ。
 私は携帯を投げ出し、布団から出る。当然部屋には、ななこちゃんなんて存在がいるはずもなく、安心して扉へと向かう。

 そして扉を開く。

「お母さん。ほんとにこわかったんだか……え?」

 お母さんがいない。そして背後から声が聞こえた。それは携帯から溢れて聞こえてきたものだった。

「……私達トモダチダヨネ」

 後ろを振り向くと、目の前にはななこちゃんの顔があった。












 この話を読んでどう思っただろうか。これは俺が笠井はこう思っていたんだろうなと考えながら書いた憶測の話だ。
 笠井も今井もおかしくなってしまった。俺も二人と仲が良かったからショックだ。でも、俺はおかしくなりたくない。ななこちゃんと友達になりたくない。だから、ななこちゃんのことを知ってもらうためにこの話を書いた。
 ななこちゃんは自分のことを考えている人間のことを友達だと思う。だって、友達ってそういうものだろう?
 俺は読んでくれるみんなにななこちゃんのことを広めて、ななこちゃんに許してもらう。どうか、友達になってあげてくれ。あの子から俺が逃げるために、みんながななこちゃんの友達になってあげてくれ。
 大丈夫だ。1人じゃないから。みんな友達になる。君だけじゃない。だから安心して、ななこちゃんの友達になるんだ。

 それじゃあ精一杯今を楽しんでくれ。明日には、ななこちゃんが君を迎えに行くから。

ノンフィクションです。どうか俺のためにななこちゃんの友達になってください。









 って書きたいけどフィクションなので安心してください。拙い文章でしたがここまで読んでいただきありがとうございます。

評価や感想は作者の原動力となります。
読了後の評価にご協力をお願いします。 ⇒評価システムについて

文法・文章評価


物語(ストーリー)評価
※評価するにはログインしてください。
― 感想を書く ―

1項目の入力から送信できます。
感想を書く場合の注意事項をご確認ください。

名前:

▼良い点
▼気になる点
▼一言
お薦めレビューを書く場合はログインしてください。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ