第1話 追憶
薄桃色の梅の花が、雨に濡れている。
凍える冬も過ぎて、雨がほんのり温かく優しい。
先生の横顔を最後に見たのも、こんな雨の日だったっけ…
あれから毎年、梅が咲く頃になると、私は新聞記事に目を凝らす。
『教職員〇〇人異動』
びっしり並んだ名前から、私は野崎先生の名前を探す。
―あった―
野崎先生が、私の卒業と同時にこの街を離れて、これで三校目の異動。
そして、教頭先生に昇任している。
野崎先生が教頭先生…?
何だか、想像が付かなくっておかしい。
どんな先生になったの?
また、あの頃の様に、遠くから見つめられたらいいのに…
夕暮れの下校時。
校門をくぐる時、私はいつも振り返っていた。
校門の真後ろに生徒玄関があって、そのすぐ隣に国数準備室がある。
そこにはいつも、机に向かっている野崎先生の横顔。
―先生、さようなら―
心の中で、そっと呟く。
でも、先生は私の姿に気付いていない。
私の気持ちにも気付いていない。
誰も知らない、私の片思い。
心から溢れる想いを、言葉に出来なかった。
「好きです…先生」
この気持ちを伝えられたら、私は違う道を辿っていたの? |