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不正破壊者の我侭姫 作者:桜崎あかり

ステージ1

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エピソード6


 午後1時、デンドロビウムのアウトロー狩りとも言えるバトルが始まった。
味方のプレイヤーが5人いるが、彼らと協力をする気はない。最初に『こちらは任せて欲しい』とチャットメッセージを送った位で。
ミッションはコンテナ争奪戦になっていた。指定位置にあるコンテナを回収し、お互いのゴール地点へ運べば勝利という分かりやすいルールでもあった。
しかし、このルールには大きな落とし穴がある。コンテナの中身が入っている状態でコンテナが破壊される、あるいはコンテナの中身が破壊された場合は無効試合となってしまう。
そうならない為にも連携でコンテナを先に確保し、ゴールまでのルートを確保するのが重要となってくるだろうか。
中にはコンテナを盾にして敵の攻撃を回避するような手段も存在する。これは戦術なので反則にはならないのだが――あまり推奨される手段ではないのは明らかだ。


 最初にコンテナへ到着したのは敵プレイヤー側の軽装アーマーのプレイヤーだった。1人はロングソード、もう1人は鞭を装備している。
ゲームの雰囲気としてはSF等が想定されていそうだが、彼らの装備はファンタジー系のソレだったが――これも反則ではない。
環境に応じて適材適所の装備を選ぶのも、プレイヤーには必要となるスキルだからだ。
世界観の空気に合わせて使いづらい装備を使う位ならば、他のゲームで慣れている装備を使うのが一番と言うのもネット上で広まっていた有効的戦略と言える。
「コンテナは問題ないな」
「全くだ。しかし、相手がリモコン爆弾を仕掛けている可能性もある。警戒を怠るな」
 相手側のプレイヤーは既に別のプレイヤーが到着し、トラップを仕掛けていると考えていた。
その為か、周囲の警戒を重視している。ARガジェットのレーダーなどもフル活用するのだが、反応に引っ掛かるプレイヤーがいない。
どうやら自分達が一番手らしい――そう安心した矢先、突如として上空に現れたのは、予想外の人物だった。
その人物は、このゲームに合わせたかのようなデザインのスニーキングスーツを身にまとい、右腕には警備隊で使う様なシールドの小型版が固定されている。
それに――ARメットを装着している一方で、金髪がちらりと見えるようだが――ロングヘアーなのだろうか?
「こいつ! 何処から!?」
 ロングソードの使い手は、そのまま彼女に突撃をするのだが――何かで蜂の巣にされたかのような倒れ方をする。
その後、彼はスタート地点へと転送されてしまった。一瞬の油断が、こうした所で命取りになると言う証拠だ。
「スニーキングスーツで油断していたが――!」
 鞭の使い手は、スーツを着た人物のスタイルを見て女性だと分かっていた。しかし、女性プレイヤーだからと言って初心者とは限らない。
つまり、ロングソードの使い手が瞬殺されたのは――彼女を外見で油断したからである。
ARゲームでは女性プレイヤーでプロゲーマークラスのプレイヤーは指折り数える以上に存在していた。ネット上の情報を調べれば、そんな事は常識のはずなのに。
「そんな奇襲で――こちらを油断させたと思うなよ!」
 鞭の使い手は、まるでアクションゲームの主人公を思わせるかのようなナイフの連続投げと鞭のコンビネーションを披露した。
スニーキングスーツの人物も、ナイフの動きを見切って左足に固定していたハンドガンのロックを解除し、早撃ちでナイフの全てを叩き落とす。
叩き落とすというよりは、ナイフが銃弾と当たって相殺したと言うべきか。まるで、パズルゲームである。
「――気に入らない」
 彼女がふとつぶやいた一言。それを聞いた鞭の使い手は激怒する。その直後、冷静さを失ったかのように鞭を振るい始め、先ほどまでの判断力を失っていた。
しかし、その鞭はでたらめに振り下ろしたのではなく――彼女のハンドガンを弾き飛ばしたのである。
丸越しとなった彼女を、このまま倒そうとしてブーメランを投げるのだが、今度は彼の方が致命的な部分を見落とす事になった。
「馬鹿な――こんな事が!?」
 鞭の使い手は、ハンドガンを弾き飛ばした後――彼女が自分に向けて投げたナイフを全く警戒していなかったのだ。
それを鞭で振り落とせば――簡単に消滅するだろう、と彼は考えていたのである。
しかし、その考えは甘かった。ナイフは消滅することなく、鞭で叩き落としたと同時にナイフ部分が分離――ビーム刃の部分が直撃する。
「この構造は――スペツナズナイフか!?」
 彼女が投げたナイフ、それは単なるナイフではなく刀身の射出が可能となっているスペツナズナイフだった。
ある意味でも入手が困難と言われるようなナイフを、彼女はどうやって手に入れたのか?
本物のナイフを手に入れるのは不可能なので、おそらくは何かしらのデータを入手したに違いない。
それでも、ここまで実用性を無視したような武器を好き好んで使うだろうか?
おそらくは、こうした一般的な思考や攻略本や攻略サイト通りの戦略を取ろうとした彼に――慢心があったのだろう。
「大正解よ――」
 記憶が薄れていく鞭の使い手は、その先の言葉を聞く事はなかった。その頃には、スタート地点で目を覚ましていたからである。
そして、彼女はいわゆるチート使いと言う訳ではない。ただのプロゲーマーだった。
《ヴィスマルク》
 彼女のネームを確認していたデンドロビウムは、何かの違和感を感じていた。
本来であれば、彼女は《ビスマルク》と入力したかったのだろう。戦艦ビスマルクと言えば、映画の題材になる程の有名な戦艦だ。
デンドロビウムが感じた違和感、それは別のショートメッセージを偶然目撃した事で解決する事になる。
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