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不正破壊者の我侭姫 作者:桜崎あかり

ステージ2

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エピソード39.5


 松原団地で行われた市民マラソン大会、天気が晴天である段階で何かに気付くべきだった――と言うのは視聴者のコメントである。
ARゲームが雨天だと中止になるという傾向が多い――それを当てはめると、今回のマラソン大会が何かの実験に使われるのは目に見えていた。
「何だアレは――?」
「こちらとは違うランナーなのか?」
「あのスピードは、こちらのスピードよりも速いぞ」
 コースを走っているマラソンランナーからは、このような意見が飛び出す。
走っているランナーが妨害工作を受けたという報告はなく、あくまでも向こうは指定のコースを走っているという感覚なのだろう。
「完全に仕込みレースだったという事か――」
 表情を一つ変えず、ひたすらに走り続ける橿原隼鷹かしはら・じゅんようも――さすがに冷静ではいられなくなりそうだ。
さすがに走っている途中で冷静さを失えば、順位が大きく変わってしまう可能性がある。
それを踏まえると――ペース配分を間違えた段階で、先頭グループからの脱落もあるだろう。


 午前9時、数人のランナーと思わしき人物が指定のコースから走り出した。
しかし、普通に走ると言うには――明らかに市民ランナー等とは比べ物にならない装備である。
そのランナーが装備していた物、それはARガジェットだった。
一般市民には何の事なのかは分からず、普通に走っているようにしか見えない――。
今回のマラソン、動画投稿サイトが主催している段階で何かある事が分かっていた人間もいたのだが――その真相にはたどり着けなかった。
仮にある目的に到達できたとしても、ネット上では虚構ニュースだと言われるのが落ちだろう。それに、芸能事務所の動きを踏まえれば――尚更だ。
「そう言う事か――あれでは、ある意味でもARガジェットがチート扱いではないか」
 先ほどからマラソンの様子を見ていたビスマルクは、今の光景を見て衝撃を受ける。
モニターに表示されていた物、それはARガジェットのスピード特化型とも言えるタイプだ。
時速40キロとは言わないが――マラソンランナーをかなりの大差で引き離している。
それに、ARゲームのシステムは一般人にはガジェットの確認手段がない。
 下手に国際スポーツ大会で使われでもすれば――世界新記録が大量に更新されるだろう。
しかも、ARゲームで大きくリードしている日本が。
「ドーピング検査にかからないようなARガジェットを開発し、スポーツ大会で使う気か? これが――政府のやる事なのか」
 ビスマルクは言葉に出来ない怒りと悔しさがあった。
ARガジェットが軍事転用を禁止しているのは――向こうも承知の上で、今回の利用方法を思い浮かんだのだろう。
スポーツ大会ならば、軍事転用に該当しないと提案した可能性は高い。それがアイドル投資家やまとめサイト勢なのかは定かではないが。


 その翌日、今回の件は大きく取り上げられる事になった。ネット上でもチートの限度を超えていると非難の嵐である。
しかし、動画サイト側はエキシビションの為にARガジェットによる記録は参考記録――と公表した。
参考記録と言われれば引き下がるしかないのだが――それにしては限度を超えている可能性が高い。
「動画サイト側は――芸能事務所に掌握された可能性もあるのか」
 そのマラソンを走っていた橿原は緊急招集で、今回の一件をスタッフに話した。
アキバガーディアンとしても、コンテンツ流通を阻害するような今回の一件は放置できない、と。


 その一方で、今回の一件を全ての始まりと考えている人物がいた。
『芸能事務所も既に万策が尽きた――と言えるような暴走をしている。この様子であれば自滅もするかもしれないが、そこまで待てる状況でもない』
 草加市内のアンテナショップで、タイムライン上のニュースを見ていたのはARメットで顔を隠したジャック・ザ・リッパーである。
彼女はマラソンの方に正体はされていたのだが、諸事情で見送った経緯があった。
しかし、事件の真相を知って――辞退した事が正解だと改めて思う。


 その頃、芸能事務所ではある計画を進めていたのである。
一連の青騎士のデータを揃え、形状を一定にする事で偽者や悪目立ちと言われずに――超有名アイドルが神コンテンツになれる方法だ。
青騎士と言う都市伝説を現実化し、それを超有名アイドルが倒す事で――。
これを誰もが自作自演と言って止める事は出来なかった。それ程に芸能事務所の力が強大なのと、その背後にいる存在が――。


 そうしたニュースを集め、改めて状況を整理したのはデンドロビウムである。
彼女が今いる場所は、草加駅のデパートが見える場所にある――アンテナショップだ。
「ARゲームが本当の意味で正常運営可能な状況を――どうすればいいのか」
 デンドロビウムは悩む。チート勢力を駆逐するだけでは、きりがないだろう。
それを何とか止める為にも――ガイドラインの強化が必要なのか、改めて考えていた。
しかし、保護主義に走るARゲームに未来はあるのだろうか――?
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