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不正破壊者の我侭姫 作者:桜崎あかり

ステージ2

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エピソード33


 偽者の青騎士を撃退した人物、それはデンドロビウムだったのである。
彼女が青騎士を撃退した理由がチートプレイヤーである事だったのかは――定かではない。
『お前が噂の――』
 青騎士は特に武器を構える事はせず、デンドロビウムの方を見つめていた。
ただし、どんな目で見ているのかはARバイザーの影響で見えないのだが。
声の方もボイスチェンジャーで変えているような男性声であり――この人物の正体は未だに分からない。
「青騎士――と言っても青騎士ブルーナイトではないか」
 皮肉だろうか? 青騎士の表情が見えない事が影響しているのかは不明だが――デンドロビウムは表情を変える事はなかった。
『ブルーナイトは、ネット上の都市伝説が本物であるかのように見せかけた――いわゆるマッチポンプだ』
「マッチポンプなど――既に分かりきっている」
『では、何を――?』
「今回の青騎士騒動自体が――ある勢力を根絶する為に用意されたフィールドと言う事だ」
 デンドロビウムはきっぱり言う。今回の騒動が――マッチポンプその物だと。
しかし、青騎士の方はマッチポンプと言う事には若干の同意をするのだが、全てを認める訳ではない。
それに加えて、一連の騒動を仕掛けたのが運営とは考えにくい理由もあったからだ。
『それだけだと――断言出来る証拠はない』
 青騎士は周囲を見回すのだが、肝心の偽青騎士はスタート地点に転送されているらしく、この場にはいなかった。
何とかして探しだそうとスタート地点へ向かおうとした青騎士を遮ったのは、何とデンドロビウムである。
「お前も青騎士の外見をしている以上――同類と否定された訳ではない」
『青いカラーリングであれば、誰でも青騎士だと思うのか?』
「そうではないが――デザインが似すぎている」
『デザインが似ているのは仕方がないだろう。これがオリジナルだからな』
 青騎士の衝撃的な発言に視聴者は驚きを隠せないのだが、デンドロビウムは無反応である。
この差は一体何なのか――。


 この中継を見ていた他の青騎士は、リーダーと思わしき人物が倒された事で降伏する者もいた。
事実上の便乗勢力は壊滅したと言ってもいいだろう。しかし、それでも倒された青騎士をリーダーとしていた勢力だけである。
SNSが草加市内で使用不能なのは――まだ戻っていない。
「青騎士がジャミングを仕掛けていた訳ではないとすると――状況はさらに複雑化するのか」
 ペットボトルのスポーツドリンクを飲みながらアンテナショップで中継を見ていたのは、インナースーツ姿のアイオワだった。
彼女もチートプレイヤーの何人かを撃退したのだが、そちらは青騎士とは無関係である事が判明している。
青騎士の便乗勢力を壊滅させたとしても――チートプレイヤーの数割を減らしただけで、全てを一掃した訳ではない。
「やはり、あの噂は本当だったと言うべきなのか」
 アイオワが聞いた噂とは、チートガジェットを生み出した人物の事だ。
ネット上ではアイドル投資家や芸能事務所がARゲームコンテンツを終わらせる為に拡散していると噂されている。
しかし、アイオワが手に入れた情報では違う理由が存在し――それは今までのネットで語られている常識を覆す物だった。
 彼女が手に入れた情報、それはアカシックレコードで書かれていたレベルの噂なのだが――チートガジェットも元々は人間が生み出したという物なのである。
チートガジェット自体が異世界から流れてきた物という認識がある訳でもないのだが、ARゲームを生み出したのも人間であるならば、チートガジェットを生み出したのも人間だろう。
それを生み出した人間は誰なのか――と言う部分は、未だに様々な議論をされている中でも明確な答えは出ていない。


 デンドロビウムは、青騎士にショットガンを突きつけた。しかも、問答無用に――。
『分かりやすいリアクションだ――それでこそ、こちらも全力を出せる』
 何かが割れる音と同時に青騎士のアーマーが変化――その形状は、青騎士のソレとは全く違う物が下に隠されていたのだ。
「何処かの超人じゃあ――!」
 ショットガンの引き金を引いたデンドロビウムだったが、青騎士にダメージを与える事は出来なかった。
ショットガンが命中したと思っていたのは、上に装備していたアーマーの一部にすぎない。
 そして、真の姿を見せたアーマーは――北欧神話モチーフであり、今までの青騎士ともデザインが全く違うと言ってもよかった。
つまり――彼らが便乗して真似していたのは、不正確な青騎士だったのである。まるで、二次創作された作品を一次創作と勘違いするような――初歩的なミス。
『この姿を見せた以上は、こちらも加減はしない!』
 青騎士の装備、それはあるプレイヤーの装備とほぼ同じだったのだが――それをデンドロビウムが即座に思い出せるはずもない。
それ程に、彼女の思考は焦りもあって鈍くなっていたのだ。実際、それは彼女の動きにも表れている。
「まさか――スレイプニルがアーケードリバースにエントリーしていたのか」
 そのプレイヤーの名前はスレイプニル、有名プレイヤーと言う訳ではないので複数人が使用していた。
スレイプニール、ファフニール等の揺らぎもあるかもしれないが――それを即座に思い出せない状況が文字通りに追い詰められている証拠だろう。
『スレイプニル――確かに、その通りだ。しかし、プレイヤーネームが分かったとしても――!』
 スレイプニルが呼び出した装備、それは一種のクロスボウ型のビームライフルだった。それをデンドロビウムに向け、照準を定める。
それ程に向こうの方が落ち着いており、余裕もあるのだろう。今のデンドロビウムのメンタルで勝てるような相手ではない。


 しかし、次の瞬間にはプレイ終了を告げるアナウンスが流れだした。
『まもなく、フィールドを次のプレイヤー仕様に変更いたします。ゲームを終了したプレイヤーの皆様はログアウト準備をお願いします――』
 そのアナウンスを聞き、スレイプニルはビームライフルを構えるのを止めた。それと同時に――。
『デンドロビウム、今のお前では――真相に近づく事は出来ないだろう――過去の事件にこだわり続ける限り、は――』
 男性声が途中からは女性声に変化したように感じた。明らかに、女性声の方が地声である可能性も高い。
だが、スレイプニルの正体が女性と決まった訳ではないし――スレイプニルが事件の黒幕と関係があるのかも分からなかった。
 他のメンバーがログアウトしていく中、デンドロビウムは悔しさのあまりに言葉にならないような叫びをあげたのだが――それは誰にも聞こえていなかったのである。
この頃には中継も終了しており、エラーで接続できない状態だったSNS各種も回復していた。
「何故だ――何故、自分はあの時と同じ過ちを――」
 デンドロビウムの脳裏には――ある走馬灯が見えていた。
それは、数年前に同じような青騎士のプレイヤーと遭遇し、そこでボロ負けした事である。
どのような理由で負けたのかは分からない。相手の方も勝率が4割位と低かったのを油断していた事はあるだろうか。
他のプレイヤーもそれで敗北したので、そう感じても不思議ではない。
 しかし、デンドロビウムの場合は違っていた。他のプレイヤーは、実際にはチートを使っていたから負けたのである。
正規プレイの範囲では勝率8割に近いスレイプニルに勝つ事は――まだ初心者から抜け出せたばかりの彼女には、無理ゲーだったのかもしれない。


 その後、例の動画も拡散していたのだが――デンドロビウムを『西雲』と言った青騎士の言葉はカットされていた。
厳密にはカットと言うよりは録音トラブルと言う扱いになっていたのだが、SNSの方でエラーが相次いでいた事もあって、そこを追及する動きはなかったのである。
「あの青騎士は、何を知って消されたのか――気になる所だが、そこは別の問題と言う事か」
 ARアーマーをフル装備し、別のARゲームを始めようとしていたジャック・ザ・リッパーは、話題の動画として拡散していた例の動画を見ていた。
そこに映し出されていたデンドロビウムとスレイプニルを見ても、ジャックは無反応である。
ジャックの気になっていたのは、あくまでも青騎士の方だった。あの人物の正体が何者なのか――という意味で。
【大手芸能事務所のプロデューサー、一連のマッチポンプに関与か?】
 動画を視聴していた際、動画の上に表示された1行ニュースには衝撃とも言える文章が表示されていた。
何と、大手芸能事務所のプロデューサーが逮捕されたというのである。その原因は、マッチポンプとは書かれているが、何を示すのかは不明だ。
「まさか――あの人物が、プロデューサーだったのか?」
 ジャックは驚くのだが――その表情が周辺の人物に知られる事はない。
周囲の人物も有名男性アイドルグループを手掛ける、あの事務所と言う認識なのだが――そちらとは違うと分かると、周囲は各自解散していくような様子だった。
「超有名男性アイドルグループの、あの事務所じゃなかった。はい、解散!」
 その一言で周囲のギャラリーがバラバラになって行くような――そう思わせる状況だったのは間違いない。
実際には、該当するような発言は一切なかったのは間違いないと断言出来る。
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