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不正破壊者の我侭姫 作者:桜崎あかり

ステージ1

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エピソード10


 それは唐突な出来事と言っても差し支えのない物だった。
一瞬にして、平和とも言えるような光景は地獄絵図へと――変わったのだから。
「――非常警戒? どういう事だ」
 山口飛龍やまぐち・ひりゅうは唐突にARメットに表示された非常警戒の警告表示に驚く。
次の瞬間には山口の目の前に赤チームのプレイヤーの一人が飛ばされて来たのである。
飛ばされても、特殊フィールドで防御されるのでギャラリーに被害が出ない――と周囲のシステムを知っているプレイヤーは誰もが思っていた。
「まさか――システムのハッキングか?」
 即座に男性スタッフも離れた事もあり、被害はベンチの損傷だけで何とかなったのだが――明らかに何かがおかしい。
本来であれば起動しているはずの特殊フィールドが一部分だけ展開されていなかったのだ。
しかも、ご丁寧にバリアが展開されているように偽装した上で――。
ARバイザーで見ればすぐに見破れる系統のトラップだが、ARバイザーを持っていない一般市民にとっては致命的である。
「ハッキングとは――穏やかではない」
 今回の一件をフィールド内から見ていたのは、ガーディアンのプレイヤーである。
彼は赤チームに所属しているのだが、目的はチートプレイヤーの発見等ではない。
今回に限って言えば、ARゲームの初心者講習をアンテナショップと共同で行っていた。
一連の事件を起こしたのはアイドル投資家や悪乗りでネットを炎上させるような勢力とも違う。どう考えても、計画性があったのである。


 ハッキングを行った人物は、今回の事件とは関連性がないと分かったのは犯人を捕まえてからだったと言う。
「興ざめだ。あのチート連中は――どう考えても、狙いが自分にあると言えるだろう」
 この光景をフィールド外から見ていたのは、私服姿のデンドロビウムだった。
ARメットを装着していないので、その素顔は目撃できるような物だが――誰も見向きさえしない。
どうやら、デンドロビウムどころの話ではないようだ。逆に、それが彼女にとっても許せないと言う事だったのだろうか?
「自分達だけにスポットライトが当たるように細工しているような連中は、いつしか自分達の行動がブーメランとなるだろうな」
 そして、彼女は足早に別のアンテナショップへと向かった。
一方で、その姿を見てストーカーのように追跡しようと考えた人物もいたと言う。
それがガーディアンなのかは、周囲も確認していなかったのだが――。


 男性スタッフは、この状況を見て手が震えていた。まるで、自分の見ている光景が――。
「街が燃えている――平和だった街が!」
 彼は手が震えているのだが、この怒りを何処にぶつけるべきなのか――そう考えていた。
目の前の光景は、まるでカードゲームアニメで見たような燃える街、その物だったのである。
「目に見えている街はAR映像――作り物の街だ。リアルとゲームを一緒にするな――!」
 山口は男性スタッフを正気に戻そうと肩をたたくのだが、その程度で彼の震えは収まらない。
さすがに周囲の一般市民のように動揺して逃げまどう様な行動はしないのだが――。
彼以外の別スタッフが一般市民を安全な場所へと誘導し、ガーディアンへと緊急連絡を行おうとするのだが、ジャミングの影響でスマホは使えなかった。
「あのスタッフ――ARゲームフィールドやアンテナショップではスマホの電波が圏外になる事も知らないのか?」
 山口は避難誘導をしているスタッフ以外が新人で、このような状況に適応していないと言う現実を目の当たりにする。
やはり、桶は桶屋という事なのだろうか? 自分の様な人物が踏み込むべき場所ではなかったのか?
「あの暴れているプレイヤーを止めればいいのか?」
 男性スタッフは気が動転しているのかは不明だが、先ほどの口調とは全く別の表情を見せた。
まるで、何かが憑依したかのような展開である。これもガードゲームではよくある事なのか――。
《ARシステム――チェック》
 彼が右腕に装着しているのはARガジェットではなく、カードゲームで使用するガジェットと言うべきか。
そのガジェットが変形し、カードゲームのフィールドを形成すると言う訳ではない。
次の瞬間にはARガジェットから光が展開され――男性スタッフには西洋の甲冑を思わせる鎧が装着された。
《ARガジェット――システム正常。アーケードリバース――乱入許可、承認しました》
 まさかの乱入である。男性スタッフは、メンバーの欠けていた赤チームの助っ人としてフィールド内へ突入したのだ。
「馬鹿な――このタイミングで乱入だと!?」
 青チームのトラックを襲撃していたプレイヤーは、乱入プレイヤーの出現に驚いていた。
しかし、プレイヤーネームがデンドロビウムでもネット上で話題のアルストロメリアデモなかった事には、青チーム内でも一安心をしている。
「こっちとしては、お前達の様な力で訴えるような人間には愛想が尽きている――」
 男性スタッフはロングソードと思われる剣を展開するのだが、そのデザインを見て一部のプレイヤーはログアウトをしようとサレンダーボタンに手を――。
「サレンダーなど、させるものか!」
 彼は何をされたのか分からないような状態で、スタート地点に戻されていた。
まさか、ロングソードの一撃だけで倒されるなんて――それこそチートと言われても仕方のない事である。
しかし――彼の武器はチートが使用されている訳ではない。
「ペンドラゴン――そう言う事か」
 男性スタッフは、自分が呼び出した剣の名前を見て若干驚いていたが――すぐに気持ちを切り替えた。
ペンドラゴン――プレイヤーネームを入れる暇もなかった彼は、ネームエントリーを求められた際――頭に浮かんだ名前を入力していたのである。
手に持っているロングソード、それがエクスカリバーであると自覚したのは――勢いに任せて青チームのプレイヤーを倒し、ゲージを割ってからの事だった。
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