第弐拾参話:知らない事情は難とやら
さてさて、この話は数時間前に遡る。
もっとわかりやすく言えば、第弐拾話に戻る。
***
「やはりお前が月見だったのか」
シュナイゼルさんは僕の方をまじまじ見ながら
「あの…『やはり』ってどういう事ですか?」
「…顔は悪くは無い、どっちかと言うと結構良い方だし。それに何か武術をしているのか筋肉がそこそこついている」
僕をじろじろと見ながら、一人ぶつぶつ言い出す。
ってか僕の話を聞こうよ。
「一体全体どういう事?」
沖田さんも戸惑いながらシュナイゼルさんに聞くが
「合格だな」
その言葉を軽く無視ししていた。
ところで『合格』ってなにが?
そう思った時、予想もしていなかった言葉を口にした。
「月見優貴。約束通り、私の『婿』になれ」
「………え?」
「はぃ!?」
気まずい沈黙が場を支配した。
その結果。
「………」
「………」
「………」
こうなってしまった訳です。
なんとも空気が重たい。
人ってその場の雰囲気であらゆる空間を作り出すんだな。
確か前にもこんな状況があったような……
「……ねぇ、月見君?」
笑顔で僕に聞いてくる沖田さん。
いい笑顔……なハズなのにかなりその笑顔が怖いです。
「あの人が言ってた『約束』について……どういうことか、私に解るようにキッチリと説明して」
「いや僕にも何がなんだか…」
僕も『約束』というのは本当に分からない。
「いいから、ほら……さっさと説明しろ」
最後だけ命令口調になっているのは……気のせいじゃありませんね。
ってかなんで僕の事でこんなに怒ってるのだろうか?
謎は深まるばかりだが、ここはあれだ。
少しでも落ち着いてもらわねば身の危険が……
という事で
「いや、ほら、僕にそう言われても…ね〜」
少しでも明るく言って、場を和ませようとしたら。
「ねえ月見君。『膾』と『開き』……どっちが良いと思う?」
額に怒りのバッテンマークをつけて、引きつった笑顔で言った。
「…………」
やばい!明らかに地雷を踏んでしまった!
気分的には地雷というより核弾頭に近いけど、踏んで生き残れないという時点で似たようなものだ。
ってか、これはちゃんと説明をしないと生きて帰れそうにない。
それに一歩間違えたら天国に行き……
「そうなる前に早く話してね」
そうしたいのは山々なんだけどねぇ…
……あれ?
「なんで僕が思っている事が解るの!?」
僕が口に出して喋っていないのに…読心術か?
「月見君。芸能界を生き残るにはね、読心術は基本なのよ」
「………へぇー」
……いやな基本だ。
つーか、芸能界ってどんだけ危険な場所なんだよ。
「だから月見君も覚えててね」
「お断りします」
「まあ今はいいですよ。後で嫌でも覚えさせますから」
僕は断ったはずだよね?
なんでそうなるの?
「それに嫌だったら、さっさと教えてください」
またそっちに話が戻ってしまったか。
仕方が無い。一応知っている事だけでも教えよう。
そう思って、僕が説明しようとした時。
「私から説明しよう」
先にシュナイゼルさんが言った。
「………」
沖田さんは黙ったまま睨んだ。
どうやら、あまり良い感じではないらしい。
ってか、助け船をだすのだったらもう少し早めに助けてほしかったんですけど…
と僕が言ったら。
「なーに、月見が困っている所を見てたら、そっちの方が面白っくてな…」
クックック…と笑いながら言った。
…なんというか、あれだ。
きっと気にしたら負けなんだろう。
「……もういいですから、早く言ってください」
「ならばそうしよう」
そう言いながらも未だに笑っている。
そしてしばらく笑った後、彼女は語り始めた。
「そもそも、これはお前の父親の遺言でもある」
「月見君のお父さんの!?」
沖田さんはかなり驚いた。
だが僕は……それ以上に驚いた。
だってそれは僕の予想外だった。
「僕の父さんが?」
それは一体どういう事だ?
どう考えても嫌な感じしかしなかった。
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