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赤狐蒼狼琴奏記 作者:レルバル
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はじめてのテレビ。

「鏡はマスターしたな。
 じゃあ次はこれを渡すとしよう」

麓は俺に何やらたくさんの突起が付いたものを渡してきた。
恐る恐る触ってみる。
人間が使っている文字が書いてあり、赤やら青やらカラフルだ。
見ていて目が痛くなってくる。
なんだこれは。
餌か?
うまそうだな。
噛んでみるか?

「噛むな。
 それはリモコンというやつだ」

ふえ?

「リス?」

そう聞こえた言葉を口から出して麓に確認するため首をかしげた。
リスなら知ってるぞ。
あのちょろちょろとうっとおしい小動物だろ。

「それは動物だろ。
 違う、リモコンだ」

リモコン……。
初めて聞いた名前を口の中で繰り返し呟いた。
不思議な響きである。
……で、これで何をするんだろう。
食べてもいいのかな。
個人的にはもみじみたいな色のやつが一番おいしそうだ。
熟れていること間違いないだろう。

「食うな。
 これは口に入れるものじゃない。
 人間が箱の中に入って……ああー!
 説明できん!」

麓はいらいらと体をゆすった。
箱が……え、箱で、人間で?
ほえ?
意味が分からないですばい。

「もーだから。
 もーいいから。
 とりあえず点けてみれば分かるから。
 はい、点けて」

何を。
点ける、え?

「あー……。
 もうお前知らなすぎ。
 ちょっとリモコン貸してみ」

知らないも何も……。
だって俺狼だし。
まぁ、とりあえずほいさ。
俺は麓にリモコンを手渡した。
麓はイライラを隠そうともせずに一番上にある赤いボタンを指差して

「これ。
 これで点けるの」

と俺に二回念押ししてきた。

「お、おう」

とりあえずの返事を返してみたはいいモノの何を点けるのかさっぱりである。

「このリモコンの先をあの箱に向けてこのボタンを押すと……?」

麓は意地悪く笑いながら部屋の隅にある箱にリモコンを向けてボタンを押した。

『いやぁー暑いですね!!』

「!?」

と、突然、その箱がしゃべりだし、俺は後ろへ飛び下がった。
な、なんだよ。
人間が箱の中にいるじゃないかよ!
危険信号が頭の中でくるくる回り、本能的に俺は戦闘意識をむき出しにして

「麓、どけ!
 人間だ、殺されるぞ!」

狼の姿になって箱に向かって威嚇した。

『で、そーなるんですがな!!』

『あははははは』

よく分からないがおそらく笑っているのだろう。
俺のことを。
来るなら来い人間め。
親父を殺したように貴様らを俺が殺してやる。
どうした、こいよ!
さあ!!

「おばか」

「きゃん!」

威嚇を続ける俺の頭を麓がリモコンで叩いてきた。
しかも角だ。
コスン、といい音がした。
にしても本気で殴りやがっただろ、こいつ。
俺のことを。

「人間の姿に戻れ、はよ」

リモコンをぶいぶい振りながら麓は小ばかにしたように鼻で笑う。

「うー……」

痛みに頭を抑えつつ人間の姿に戻る。
なんで叩かれたのかいまいち理解できない。
こっちに来たらまずいから守ってやろうと思ったのにその仕打ちはひどくないか。

「これはテレビだ。
 いわゆる人間の娯楽のための機械だ。
 中に小さい人間がたくさん入っていていつも面白いことをやっている」

「た、たくさん?」

「ああ。
 私が数えただけで百は超えているはずだ」

ひ、百……。
えっと、どれぐらいだ?
どんぐりで例えると森ひとつぐらいか?

「いいから話を聞け。
 私も何回か話しかけてみたなんか知らんがこちらの声は聞こえていないらしい。
 案の定、反応がなかったからな。
 私達はこれを見て笑うってだけだな」

「ほー……」

感心の声が出た。
小さい人間がねぇ。
中に入って……ふーん。
面白いことしてるのか。
というか俺は人間の言葉がしゃべれるのかと。

「ああ、その辺は大丈夫。
 私の呪術でなんとかしてるから。
 今しゃべってる言葉が人間語だよ」

すごく複雑な気分だ。
確かにテレビが何を言っているのかは理解できる……うん。
また俺狼に戻った時狼の言葉わかるのかなぁ。
麓に角で叩かれた頭のところをさすりつつテレビにそろっと近づいてみた。

「おい」

ためしに呼びかけてみるも、テレビの中の人間は無視してお互いくっちゃべっている。

『そんなことあるわけないでんがなー!
 もーしょうちゅんったらいややわーっ!』

「無駄だって言ってるだろ?
 私たちの声は聞こえてないんだよ」

うむぅ。
なんか若干さびしいぞ。

「で、リモコンってやつはなんなんだ?」

俺は麓の手に握られたリモコンをくれくれ、と裾を引っ張った。
好奇心が出てきた。

「ん。
 なんかね。
 私の経験から言うと中の人間を操るためのものみたい」

操る……だと。

「人間を操れるのか!
 貸して、貸して」

俺は麓からリモコンを受け取るとその先を麓に向けてボタンを押してみた。
電源ボタンをぽちり。
これで麓は倒れて人形のように……。

「…………」

だが麓は何してるの、といった顔で佇むだけだ。

「あれ?
 操れないな。
 えいっ」

もう一度ボタンを押して電源が切れないか確かめてみる。
案の定麓は変わらぬ顔で俺をにらんでいるだけだった。

「…………何してる?」

三回目にしてようやく麓は俺が何をしているのか聞く気になったらしい。

「いや、人間が操れるなら麓も操れるんじゃないかなーって……」

素直に胸中を打ち明けた。

「……操れるわけないだろバカめ!」

麓が強い口調で俺をののしると同時にぐぐっと首輪が締まってきた。
すいませんすいません。
勘弁してください。

「というか、私を操って何をするつもりだった?」

三分ほど酸素不足に苦しみようやく解放されたと思うと麓はそう聞いてきた。
何をするって……。
そりゃ決まってるだろう。
俺を生きながらえさせてくれたし。

「奴隷」

これぐらいがちょうどいいかな、なんて。

「死刑」

「ぐああああ!!!!
 ごめんなさい、ごめんなさい!!!」

ちょっとした出来心だったんだよ。
麓にヘッドロックを食らい、薄れる意識の中でこう思った。
人間の道具って面白いな、と。





               This story continues.
ふふふ。
もしかして、と思うのですがウルバルはMなんじゃないでしょうか。
彼、もしかして……ですよ?

Mなんじゃ……ないでしょうか。
怖いですね。
もう、完璧にMですね。

本当にありがとうございました。
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