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赤狐蒼狼琴奏記 作者:レルバル
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はじめてのりょこう その6

「にしてもなんでこんなところにいるんよ」

麓はイライラと足を鳴らして秋生に言う。
秋生は秋生でしれっとした態度を取って

「ん?
 別に私がどこにいようと私の勝手でしょう?
 あなたには別に関係ないわ」

と麓に言い放った。
麓は長い髪の毛をくるくると指に絡ませため息をつく。
なんというかこいつのことが嫌いでたまらないというように。

「別に私は嫌いじゃないけども。
 なーんかね」

犬歯を突きだしてひきつった笑いを浮かべる麓を秋生はにやにやしながら眺める。
何だこの二人。
犬猿の仲みたいになってるな。

「犬猿じゃないわよ?
 私は天狸だもの」

た、たぬき。
あーなるほどそれで。
なんか俺が森に棲んでた時も近所の狐と狸は仲が悪かったもんなぁ。
それはカミサマ同士の間でも適応されるのか。
なんか納得してしまう。

「ま、大体私が勝ってたんだけどね」

意地を張るように麓が秋生にかみつく。
俺は秋生に「そうなの?」と問いかけてみた。

「んー?
 今引き分けでしょ確か」

ダメじゃん。

「何言って胸の大きさでは私の方が――」

「そーんなことよりさぁ、麓」

秋生の声に遮られ麓は口をつぐむ。
なんかこうやって見る部には麓より秋生の方が一枚上に思えるぞ。

「うぐ」

首輪がきりきりと締め付けてくる。
聞いてたんかいやめて。

「ちょっとあんたやめなよー。
 何やってんのさ、虐待?」

頭が真っ白になりかけたときに麓に秋生が食らいつく。
麓はふふんと鼻で笑うと

「こいつMじゃけん、別にええんよ」

といった。
Mってなんだ、Mって。

「はぁ……はぁ……」

緩んだ首輪の部分を手で摩り酸素を求めて肺が収縮したり膨らんだりする。

「あんたね、麓について行くより私と暮らさない?」

地面にうずくまる俺に秋生が唐突に問いかけてきた。
俺は喉を抑えながら頭の中でその意味を考える。

「なっ――!?」

麓が驚いた表情を秋生に向けた。
鬼のような形相をしている。
あの状態の麓を俺は敵にまわしたくない。
だって怖いんだもんあの人。
ちがった、人じゃねぇ。
狐だ狐。
狸さんと一緒に暮らすのも楽しそうだな……。

「たくさん生肉出したげる」

「ほんと!?」

少し悩んでいる俺を見て秋生が俺をこちらにつける完璧な方法を口にした。
そうごはんである。
生肉。
それもたくさん。
すっごいうれしい。

「おにく!」

「ダメ、ウルバルダメ」

狸の方になびきかけた俺を麓の声が押しとどめた。
おにく……。

「お前は私の大事な部下なんだから。
 だからダメ」

俺は自分の首輪を触る。
金属の部分は冷たく、皮の部分は暖かい。
部下の証。
これが。

「生肉すら毎日出してあげないくせに部下?
 笑っちゃうわねぇ。
 ウルバル?
 あんた私のところに来るべきよ。
 私は全部――」

「あのっ、す、少し考えさせてください。
 五分でいいので時間をください」

俺は二人の口論から抜けて近くのベンチに腰かけた。
生肉かぁ……。
正直それは自分の中で大きな要因の一つだった。
生肉食べたいのだ。
毎日たらふく。
麓はそんなことしてくれなかったから……。

「ぎゃーぎゃー!」

「わーわーわ!!」

二人の理解できない言葉での罵りあいを遠くに聞いてはーっと息を吐く。
決めた。

「あの、お二人さん。
 聞いてください」

「ん?」

「決まったかしら?
 当然こんな性悪狐より私を選んだ方が……」

「俺は麓のところに居続けます。
 よく考えたらこの狐さびしがり屋ですから」

「んなっ……!?
 ば、そ、そんなこと……」

「じゃあ俺は秋生さんのところに――」

「ダメ」

俺はやれやれと首を振る。
そしてまっすぐ秋生を見た。

「私の負けね。
 まー二人ともお幸せに。
 私もイケメン狼探してこようかしら」

秋生はため息をつくと俺達二人に手を振った。

「私実はここの神社の髪に任命されたの。
 よかったらまた暇つぶしに来て頂戴?」

歩いて行って、神社の縁側に腰をおろす。
既になんか貫禄がそこには存在していた。
いくつなんだあの人。

「ん。
 また来る。
 ウルバル、行くぞ」

「あ、秋生さん。
 今まで少女の姿で来ていたのは……?」

麓が帰る空気の中俺はこれだけ聞いておきたかった。
気になるじゃんやっぱり。
秋生は俺をまっすぐ見て一言

「ひまつぶし」

といった。
暇つぶしてお前なぁ……。





               This story continues.  
ありがとうございました。
にしてもなんなんでしょうかね、秋生さん。
何がしたいんでしょうか。
わけわかりませんね。
いや、分かるか。

今回は少し麓がおこさまな回でしたん。
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