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のこるもの
作:張仲景


 その女の子を初めて見たのは図書館の一番奥、あるのはただ厚い辞書、それと毎年一冊ずつ増える卒業文集だけ。
 小学校高学年でも低い身長、学校指定の黒いセーラー服、少しおかっぱぽい髪型以外はなんの特徴もない女の子だった。
 その子は、もうすでに色あせているいつかの卒業文集を立ちながら読んでいた。

 
 僕の中学は百年に近い歴史がある。
 今年、開校以来残っている唯一残っている建物である図書館を取り壊すことを決めた。
 もうすでに新図書館は完成済み。空調完備で、トイレにウォッシュレットを装備、一般にも開放される。
 ちなみに普通に勉強する教室には今だ空調はなく、PTA、僕を含めた生徒ともにご立腹。

 
 あとは旧図書館の本を移すだけなのだが、歴史が長いだけあって過去の記録はめちゃくちゃ。あるはずの本がなく、ないはずの本がある。
 決して人数の多くない図書委員は毎日残って本の記録、運び出しをやっていた。
 その日は他の人の都合が悪く、先生も会議でいないため僕一人だった。ちなみに関係者以外立ち入り禁止。
 そんなわけで女の子を見つけたときはひどく驚いた。注意しようかとも思ったけど、何か話しかけられなかった。
 きっとそのうち帰るだろうと思って僕は作業を続けた。
 案の定、気がついた時にはいなくなっていた。


 女の子は次の日も現れた。昨日と違うのは、一年新しい卒業文集を手にしていたこと。
 幸い、他の委員に見つかることはなく、気がついたらいなくなっていた。
 この後も、この子は僕以外に見つかることはなかったようだ。

 女の子を見つけてから四日目、僕はその場所にパイプ椅子を置いた。  
 他の委員は皆まじめで、それぞれ作業に没頭していたため怪しまれることもなかった。
 作業の合間にのぞいて見ると、女の子は椅子に座って卒業文集を読んでいた。
 そして、また気がついた時にはいなくなっていた。

 
 奥の棚に作業が進んだある日を境に、女の子を見なくなった。
 まだ読んでない文集は半分以上あった。

 作業は三週間程度で全て終わった。
 それから、だれの抵抗もなく旧図書館は取り壊された。
 新図書館は市から管理の人がやってくるために、僕ら図書委員は解散した。
 その後頭の中で、コーヒーに垂らしたミルクみたいなもやもやが残った。それはなかなか溶けてくれなかった。


 学校を卒業して、いろいろ経験して、大人と呼ばれるようになってしばらくした。僕はある学校の図書館の管理を市から任された。
 図書館はあの頃のように新しさは感じなかったけれど、変わりに図書館らしい落ち着いた雰囲気をまとっていた。


 夕暮れ時に再び女の子を見ることができた。
 図書館の一番奥、あの頃と何一つ変わらない姿、読んでいるのも卒業文集だった。
 ただ、今読んでいる卒業文集には見覚えがある。あれの中には少しだが、女の子のことを書いたものがあるはずだった。
 明日からはあそこに椅子を置かないと。いや今持って行ったらどうだろうか?
 そんなことを考えていると、今まで何の表情もなかった女の子が、少しだけ微笑んだように見えた。


初めての投稿です。
いろいろ不憫はあると思いますが、ご指摘、感想あったらよろしくお願いします。













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