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第16話 領主と兵士

20151018

第15話を大幅に改変しましたので、前話をご確認ください。特に、最後のつなぎ部分が変わっていますのでご注意ください。話の変更については、活動報告に記載しましたので、気になる方はお読みください。

ダンジョンコアルームに移動して数十分後、再びダンジョンに戻ってきた。

転がっている兵士の中から一番若そうな者を選んで、灯りを持ってダンジョンの外に連れ出した。

もちろん、その兵士を持っていくのはアサシンドールである。


男はダンジョンの外で深さ一メートルほどの人が入れそうな穴を土魔法で作り、そこに兵士を入れた。

次に、《気付け薬(苦)》をDPで購入し、アサシンドールへ渡し、兵士に飲ませた。


「~~~~」


兵士が何か声にならない叫びを発しているが、無事目が覚めたようだ。


兵士がここまで叫んでいるのには理由がある。

実は、《気付け薬》自体に元々苦みがある。

その《気付け薬》の失敗作が《気付け薬(苦)》であり、効果は同じであるが、さらに苦みが強いのである。

何故その失敗作を選んだのかは、《気付け薬》より安いと理由の他に、実験という意味もあった。


「ごほっ…… い、一体何が?」

「目が覚めたか?」


その若い兵士が、声が聞こえた上の方を見上げると、男と目があった。


「あ、あなたは店の?」

「そうですよ。君に聞きたいことがあるのですが、よろしいですか?」


そう言われた兵士は、視線を動かし、自分の状況を確認した。

自分はどうやら土の穴の中にいるらしく、体は縛られている。

それを認識して数秒後、体の芯から恐怖と震えが起きた。


(これは質問ではない! 下手なことを言うと……)


頭に浮かび上がった言葉を、頭を振って追い出す。


「な、何でしょうか?」

「まず、この店に来た目的を教えてもらえないか?」


丁寧な言葉遣いであるが、兵士からすると恐怖を煽られる感じがした。

このとき、男の言葉遣いには統一感がなかった。

その理由について説明するために、男の計画について触れよう。



ダンジョンコアルームに戻った男は、今後の方針について考えたが、何もアイデアが浮かばなかった。

それは、現状が全く把握できていないからである。

そこで領主から話を聞こうと思ったが、大抵の場合、ああいう人は(うるさ)いことが多いので、兵士に話を聞くことにした。

ただ、どう話を進めるかということが問題になる。

何しろ時間がない。

夜が明けると、どんなことが起きるのか予想ができない。

そこで、脅迫紛いになるが、口が滑らかになるような環境を用意し、その役に徹することにしたのである。

ただ、性格上、悪役に徹底しきれないので、言動が変になってしまっていた。



「この店の売り上げと料理の素材を持ちは…… 奪うように言われました。また、店主は捕えろ、と。私たち兵士は、荷物とあ、あなたを運ぶように命令を受けました」


兵士は必死に言葉を選んで話した。

この話を聞いて、男は次の質問に対して思いを巡らせた。

男が考えているこの沈黙の時間も、若い兵士にとっては恐怖の時間である。


「街には兵士は、何人くらい残っている?」

「じ、十人です。あと、領主補佐官が一人います」

「そうか…… 君は領主をどう思っている?」


男がそう質問をして、少し態勢を変えたとき、穴の角が少し崩れた。

その土が兵士にかかった瞬間、兵士の顔は真っ青になった。


そこからは、兵士の口は止まらなくなった。

領主の悪事と領主への不満が止め処なく出てくる。


「あ、ま、まぁ、分かった。分かったから」


ついつい男が止めてしまうほどに。

領民の領主に対する感情がよく分かったところで、領主を利用することにした。

そこには、領民に対する同情が含まれていることに、男は気付いていない。

男は、領主を領主から引きずり下ろす相談を兵士に持ちかけた。


「君、領主の悪事を暴き、領主から街を取り戻さないか?」

「そ、そうしたいです。し、しかし、私一人では……」


こう言って、なかなか首を縦に振らなかった。

しかし、領主を断罪したいという意思を示したので、年長の兵士に話を持ちかけることにした。


「狐火。彼を穴から出し、縄を解いてくれ」


狐のお面をしたアサシンドールが現れて、指示通りに作業を行った。

そうして、穴から出てきた兵士に、男は頭を下げた。


「君から話を聞くために、このような脅しのような真似をしていまい、申し訳なかった」

「い、いえ。私たちこそ、申し訳ありませんでした。領主の命令とはいえ、やってはいけないことを……」


二人で頭を下げあっているところに、狐火と呼ばれたアサシンドールが男に話を進めるように手振りをした。

そして、兵士を連れてダンジョンに入り、年長の兵士を持って(・・・)外に出た。

男は、若い兵士と同じように彼を穴に入れようとしたところ、若い兵士に止められた。


「わ、私が説得しますので、それは止めてください」

「そ、そうか」


男は悪役に徹するうちに、自分も気付かぬうちに、なりきってしまっていたようである。

若い兵士に《気付け薬》を渡し、任せることにした。

二人が話し合っている間に、今後のことについて考えを巡らせる。


「あの…… 話が付きました」

「すまなかった。命令とはいえ、あなたに迷惑を掛けてしまった」


若い兵士がそう声を掛けたかと思うと、年長の兵士が頭を下げてきた。


「いえ、私もあなた方に暴力を振るってしまい、申し訳ありませんでした」

「あの場合は仕方がないと思うが…… すまない。話し合う前に名前を聞いてもよいか。名前が分からないと話しにくいので、な。私はリカルドだ」

「ぼ、私はクルトです」


そう言われて男は焦った。

何しろ男には、まだ名前がない(・・)のである。

刹那のうちに、必死に頭を巡らせて名前を考えた。


「私は《シェフ》です」


男は、現在の立場と仕事内容より、前世の記憶より引っ張り出した言葉の《シェフ》と名乗ることにした。

これからは、ダンジョンマスターの男をシェフと呼ぶことにしよう。


「それではシェフさん。今後について話をしたいと思いますが」

「そうですね。リカルドさんは、まず何をしたほうが良いと思いますか?」

「領主補佐官をどうにかすべきだ。領主が表立って行動しているが、補佐官が作戦を考えているのだ」

「なるほど…… では、こういうのはどうでしょうか」


そう言って、シェフは領主補佐官を捕える作戦を提案した。


「それはいけそうだ。呼びに走るのは若いほうが良さそうだな。クルト、頼めるか」

「わ、分かりました」

「時間が経っているので急いで向かった方がいいと思います。また、息が多少切れているほうが、長く説明しなくて済むのではないでしょうか」

「そうだな。今から向かってくれ。連れてくる兵士は五人くらいでいいだろう。その間に、こちらも準備しておこう」

「分かりました」


クルトが街に向かったところで、領主の息がかかっていない兵士を全員起こす。

そして、全員と作戦を共有すると、全員から快い返事をもらえた。


「分かりました、リカルドさん、シェフさん。協力させていただきます」

「ありがとうございます。クルトさんが戻ってくるまで、飲み物でもどうですか?」

「すまない。頼めるか?」


シェフが飲み物を持ってきて、改めて補佐官を捕える手筈を確認する。

その間に、シェフは《モンスターズ アイ》を使用して、クルトの様子を確認する。

実は、クルトの後をアサシンドールが護衛も兼ねて後をつけていたのだ。

どうやら無事に連れ出すことに成功したようだ。

また、ここで《モンスターズ アイ》に新たな機能を見つけた。

どうやら音声も拾えるようだ…… 《モンスターズ アイ(・・)》という名前なのに。



 *   *   *


「間もなく着きます」

「そうですか。それにしても、二十人でも運べないほどのお金と素材とは楽しみですね」


クルトは、領主補佐官と兵士五人を連れて《めしや ダンジョン》に向かっていた。

荷物が運びきれないので追加で兵士を連れてきてほしいと頼まれた、と言って連れてきたのだ。


「ここです。先に行って、ダートス様を呼んできましょうか?」

「いえ、結構です。私が直接行った方がいいでしょう」


クルトは先立って、ダンジョンの中に補佐官と兵士を連れていく。

このとき、補佐官は気付いていなかった。

クルトが少し声を大きくして、ダンジョンの中の兵士に着いたことを知らせたことに。


「捕えよ!」

「な、何事ですか?」

「「「え?」」」


呆気に取られる補佐官と新しく呼ばれた兵士。

次の瞬間には、補佐官はリカルドたち兵士に縄で縛られていた。


その光景をシェフは遠くから眺めていた。

リカルドは補佐官と言い争い、クルトたちは新しく来た兵士たちに事情を話している。

その間に、ダンジョンメニューを操作する。

どうにか領主たちを閉じ込めておける場所を作れないか模索していると、二階に小規模エリアは作れないが、僅かなエリアなら作れることが分かった。

二階にエリアを設置して、階段を作成した。


そうしている間に、両方の話し合いが終わったようだ。


「リカルドさん、この後はどうしますか?」

「夜が明けたら、隣町のサスガ男爵に馬を向かわせる。申し訳ないが、領主たちを預かってもらえないか」

「ええ、いいですよ」


兵士たちは領主他十一名を残して、街に戻っていった。

シェフは領主補佐官を眠らせて、領主たちを二階のエリアに放り込んだ。

このときも頑張ったのはアサシンドールたちである。

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