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第15話 領主軍来襲

20151018 展開の見直しにより大幅に改変しました

この一週間、お客がたくさん来るようになり、料理の用意をすることが大変になった。

男は、お客がいなくなってから、夜を徹して料理を準備するのが日課になりつつある。


「従業員がほしい」


ダンジョンマスターであることを活かした仕組みもあるので、無理なことも承知であるが、そう思わずにはいられなかった。


何か解決手段はないかなと思い、なんとなくダンジョンメニューを開いてみると、項目に《New》が付いているものが増えていた。

その項目は《モンスターズ アイ》とあり、モンスターの視点を映像で見えるという機能のようである。

男は気になって、その項目を選択して、適当にドールを一体選んだ。

すると、目の前に映像が表示され、そこに植物が成長していく様子が見て取れた。

それは、テレビでよく見る植物の成長を早送り再生しているのに似ている。

ただし、こちらはリアルタイムである。


「おぉ! これはすごいなぁ…… ん? んん!?」


視覚を共有しているドールが作物を収穫している手が映ったかと思ったときに、映像の隅に別のドールが見えた。

別のドールが映ることに何も問題ない、むしろドールの数からいって映って当然なのだ。

だが、そのドールの動きに問題があった。

手足を動かし、屈んだり跳ねたり、かなり激しい動きをしている。


「あれはダンス…… か?」


と言っている間に収穫を終えたのか、映像が階段に続く通路に切り換わった。

男は、先ほどのドールの行為が気になって、《農耕の間》に向かった。


《農耕の間》に向かう階段でドールとすれ違った。


「あ、ども…… え?」


二体目のドールとすれ違ったとき、頭を下げてお辞儀をされた。

ついついお辞儀を返してしまったが、よくよく考えるとおかしい。

男は、ドールの仕草に戸惑いつつも、先に進んだ。

《農耕の間》に着くと、男はドールを探した。


すると、それぞれのドールで違いがみられた。

先ほどの踊っていたドールだけでなく、木でできた剣や槍の素振りをするもの、土魔法を使うものなど様々だ。


「まさか個性でも出てきているのか……」


男は、ドールたちの変化を不思議に思いつつも、その変化を楽しく思っていた。

今後の成長を楽しみにしつつ、《農耕の間》を去って行った。



 *   *   *


「ダートス様、あの両親が快く(・・)娘を送り出してくれました」

「そうか。領主である私の嫁になることができるのだ。当然のことだな」

「もう一つ、ご報告がございます」

「なんだ?」

「街で噂になっている店のことを知っておりますか」

「ああ。耳にしたことはある」

「その店が出す料理の味は一級品で多くの客が入っているようです。また、その料理には、見たこともない素材が使われているらしいです」

「…… 何が言いたい?」

「その店は国から認可を受けていません」


補佐官がそう言った瞬間、ダートスと呼ばれた男はこの話の意図を理解した。


「つまり、その店がどうなっても?」

「国に漏れることはありません。もし問われても、証拠さえなければ問題ありません」


領主ダートスとその補佐官は、顔を見合わせて、厭らしい笑みを浮かべた。



ある日の夜、領主軍が二十名近くで街を出ていくのを、市民の一人が見ていた。



 *   *   *


今日も冒険者がいなくなって、料理を作り始めて一時間、突然警報が鳴り始めた。

こんな時間にお客が来ることがなかったので不思議に思ったが、とりあえず侵入者の映像を確認した。

すると、装備を固めた兵士が二十名ほど見えた。


嫌な予感がしつつも、何もせずにはいられなかったので、顔を出すことにした。


「何か御用ですか」


そう声を掛けると、兵士の間から一人の男性が出てきた。


「私は近くの町の領主である。この店は認可を受けていないらしいな」


いつかはこういう時がくると思っていたが、まさか開店から三週間も経たずに領主に伝わるとは予想できなかった。

しかも、その領主が軍隊を連れてくるとは思っていなかった。

だが、気持ちの準備ができていたので、すぐに応対した。


「認可は受けていませんね。罰則は受けますよ。売り上げの何割を払えばよろしいですか?」


はっきり言って、男に必要なものはお金ではない。

DPの収入さえあれば、ダンジョンとして存続可能なのだ。

しかし、返ってきた答えに男は耳を疑った。


「何を言っている? 全てに決まっておろう。金も素材も全てだ!」

「え?」

「やれ!」


領主がそう言うと、兵士の一人が男を攻撃し始めた。

残りの兵士は、奥に向かっていった。


男は状況を全く理解できていなかった。

しかし、状況は男に都合の悪いほうに傾きかけているのは間違いない。


兵士の一人がキッチンの中に入ろうとした瞬間、事態は急変した。

その兵士が何か強い衝撃を受けたかのような声を発して倒れた。

それを皮切りに、いろいろな場所で兵士が倒れ始めた。


「な、何が起きてっ……」


男に攻撃していた兵士も、他の兵士と同様の結末を迎えた。

唖然としていた領主が最後に倒れて、この騒ぎは終息した。


男が起き上げって、周囲を見渡していると、人の形をした何かが目の前に現れた。


「気絶させただけだな?」


男がそう声をかけると、その何かは頷いた。


・モンスター《アサシンドール》

土で構成された人型のモンスター。

能力は俊敏性に特化しており、目で捉えることは困難である。

ドールの進化系で、マスターの指令を忠実に実行することができる。


このモンスターは、お客がたくさん来るようになって、作物をより速く収穫する必要があったために四体購入したものである。

忍者や必殺仕事人への憧れがあったことも、このモンスターの選択には関わっている。


アサシンドールたちは黒装束を纏い、顔には仮面を付けていた。

ただ、その仮面は、狐や猫などそれぞれ別の動物の絵柄が描かれていた。

その姿は、不気味さに覚える一方で、滑稽に思えなくもない。

ただ、ドールとは認識できず、注視しなければ人間に見える。


「まさか、自分に小説みたいなことが起こるとは……」


主人公が馬鹿な領主に翻弄される。

小説ではよくある内容だが、自分の身に降りかかるとは思ってもみなかった。

ただ、ダンジョンマスターになった時点で、小説のような展開ではあるのだが。


「さて、この後、どうしようかな」


さすがに、この状況では溜め息しかでなかった。

とりあえず目が覚めたときに、また襲い掛かられる可能性もあるので、全員縛ることにした。


全員を縛り終わった後、今後の方針を決めるために、男はダンジョンコアルームに移動した。



 *   *   *


「あらあら。あの人は、この後どうするのかしら」

「面白くなってくれれば、私は満足ですわ。それにしても、あの領主は相変わらず(・・・・・)ですわ」

20151019 誤記修正

(旧)

「国に漏れることはありません。もし問われても、証拠さえければ問題ありません」

(新)

「国に漏れることはありません。もし問われても、証拠さえなければ問題ありません」

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