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幼馴染の水上とゲーセンに行った翔は、待ち合わせていた友達の仁太に会い、話題のゲームを始めようとするのであった。
ツキミ
作:稀 ヒカリ



第二章―2 破壊


「で、なんで二人でやるんだ?」
 「聞きたい?」
 何様のつもりだ? めんどくさい。でも、正直、慣れた。
 「はい、お願いします」
 「そうか、じゃあ、教えてやろう」
 大げさに深呼吸をして、説明を始めた。
 「なんかね、二つの役割があるみたいなんだ。基本的には、敵をどんどん倒していくんだけど、それをサポートする人がいるんだって。ブレイカーとサポーター。なんか結構、奥が深くって人によってブレイカー向きだったり、サポーター向きだったりするんだって。後は、よくわかんねぇ。まぁ、こんなもんかな」
 仁太のわりにしっかりとした説明だった。わかりやすくはなかったけど、わかりにくくはなかった。いつもなら、途中かみまくったり主語が代名詞ばっかでわかんなかったり、とにかく慣れてなきゃ理解するには難しい。
 「へー、なかなかわかりやすかった」
 少し驚いた俺についで、水上も続く。
 「うん、うん、私も思った」
 いつも話している会話がどれだけレベルが低いのか、この程度の会話で仁太としてはよく出来ましたのレベルだ。バカにされるのもわかる。
 「それだけ、力が入ってんの」
 力を入れてこの程度だ。まぁ、高校行ければ幸いだろう。
 「ふーん、仁太が推薦するんだからな」
 仁太が胸をドンとこぶしで叩いた。
 「そりゃ、もう」
 「面白くなかったら、返金?」
 こういうことには、まず保険をかけとくのがベストだ。それに、どれだけ仁太が推薦しているのかもわかるわけだ。
 「五倍返金だな」
 「へー、妙な自信」
 五倍だ。五倍。二百円のゲームだから、返金は千円だ。でも、俺は返金がないことを確信していた。仁太がここまで自信をもっていることはなかったし、それになにより俺をわざわざケータイで呼び出したんだ。面白くないわけがないと思った。
 「なめてかかると、ショックがデカイぞ」
 「面白すぎると思って、面白くなかったときのショックよりも?」
 「あぁ、甘く見てましたって、土下座するよ」
 またもや妙な自信だ。
 「よし、じゃあその賭けのった」
 仁太が当然といったふうに頭を縦に振る。
 「おう、OK。負けたら千円」
 「こっちは、土下座」
 お互いの賭けるものが決まって、俺は水上と黒い箱に向かっていった。
 「やっしゃ、やるか」
 「うん」
 そうして、俺らは箱の中に入った。
 箱の中はいたってシンプルだった。二つの部屋に、それぞれ一個ずつあるイス、それにモニターが片方にあるだけだった。
 突然、アナウンスが流れ出した。
―ブレイカーは右へ、サポーターは左へ行ってください―
 あまりにも突然のアナウンスだったために、俺も水上もびっくりして足を止めた。
 「ねぇ、私、ゲームとかさ」
 女の子でゲームが得意というのは、はっきり言ってめずらしい。水上は普通一般だ。できると言えばできなくもないが、下手とかそういうレベルだ。
 「わかってるって」
 そう言って、俺は右側の部屋に入り、イスに座った。
 ―このゲームは・・・―
 ゲームについての説明がアナウンスされ、モニターに意味不明なほどの数の英語が映し出された。
 「Breaker・Height・one,seven,o。Weight・five,six。Breaker・Lv,one.free。he is greatest position starter。・・・stand complet」

―南の状況を把握した北の王は、パウストが北の地に来ることを恐れて南に侵攻することを決めた
―area`1、―
 よくわからない早口の英語が終わったかと思うと、視界が黒いなにかに埋め尽くされた。体を動かしても感覚がなくて、動かせているのかもわからない。ただいつまでも変わらない暗黒が続いていてそれに流されていることはわかった。
「うわぁ」
なにを境にか、視界に光が入って黒い世界から抜け出した。はっぽり出された俺は、荒れ果てた草原にいた。
 涼しい風に照りつける太陽。あおあおをとした芝生。どこかにありそうな風景だ。ただはっきりと違ったことは見たこともない生き物が芝生を走っているということだ。きっと、あれはシカとほかのなにか動物が間違って混ざってできたのだろう。
 ふいに耳元でささやきが聞こえた。
 「シカ?」
 「うぉ?」
 誰もいないと思っていたところに不意打ちで聞こえたからびっくりしてしまった。
 「あぁ、ごめんごめん」
 「なんだよ、びっくりさせんな」
 声の主は、水上だ。
 「あはは、ごめんごめん」
 「まぁ、いいけどよ。それより、そっちは普通?」
 「普通って?」
 「いや、俺さ、気づいたらここにきてたみたいな感じでさ、びっくりしたんだけどさ、そっちは普通に地球? つーかゲーセン?」
 「ううん、なんかね、よくわかんない。でも、きっと翔ちゃんと同じ感じ」
 同じ感じ・・・やっぱり普通のゲームじゃないわけか。
 「ね、それより、あのシカみたいなの倒してよ」
 そのシカみたいなのは、芝生をむしゃむしゃ食べていて、凶暴なようにはまったく見えない。と言っても素手で闘えるほどやわじゃないだろう。
 「無理だろ。素手だろ?」
 「え? 翔ちゃん、素手で闘うの?」
 「そりゃ、だって・・・うわっ!」
 驚いた俺の右手には、立派な両刃の剣が握られていた。
 「いつの間に・・・」
 「それね、私が送ったの、って言ってもそれしかなかったんだけどね」
 「へー、そういう役ってわけな」
 要するに名前の通り、サポートするのが役ってわけだ。
 「うん、そうみたい」
 「じゃあ、早速行ってみっか」
 俺はシカみたいな生き物に感づかれないようにこそこそと近づいて、背後から剣を振り下ろした。
 「せいっ!」
―ザシュッ!―
 剣を入れられたその生き物の背中から血は出なかった。その代わり、切られた部分がノイズ化し黒いなにかが見えている。
 もう一度、振り下ろした。
 ―スゥゥン―
 今度は空振った。空振った反動で俺は、前に何歩かよろめいた。思ったよりも剣が重かった。
 そうしている間に、シカっぽい生き物は逃げた。と言っても、目に見える範囲にいてしかも、草を食べている。きっと、鈍感なんだろう。
俺は、目的のために重い剣を肩に担いで小走りでまた近づくことにした。
「翔ちゃん」
今度は驚かなかった。
「なに?」
「体、透けてない?」
聞いたこともない質問だったから、もう一回聞きなおした。
「もう一回言って」
「体は透けてない?」
透けてるわけがない。透けるわけがない。普通はそう思う。でも、ここはなんでもありのゲームの世界だった。
「透けてるわけ・・・!?」
俺の左腰のあたりがうっすらと透けかかっていた。
「透けてる・・・腰が」
「やっぱりね。なんかメーターがね、下がり始めてるの」
「大丈夫なのか?」
ゲーム内のことだから、大丈夫なんだろうけど自分の体がだんだん消えていくのは結構不安になる。
「さぁ?」
無責任な回答に怒る気も失せた。ただ、不安がつのる。それだけだ。
「それより体が消えちゃう前にさ、スタッグ倒してよ」
自分は体が消えてないから不安はないんだろうな。まったく、無責任だ。
「水上は消えてないから、なんでも言えっけどさ・・・」
「・・・私も足がないよ・・・」
!? 正直、びっくりした。
「お前も?」
「うん、さっきからね」
足が透けてなくなったのにも関わらず、水上はあんまり不安そうではなかった。それよりもなんだか楽しそうだ。
「大丈夫なのか?」
「たぶんね、痛くないし・・・それより・・・早くスタッグ倒してよ」
「スタッグって?」
「あのシカみたいのだよ」
さっきは、シカみたいのって言ってたのに急にスタッグって・・・。
「わかってたんなら、早く言えよ」
「・・・それが、さっき翔ちゃんがスタッグを切ったときに、頭に・・・なんて言えばいいのかな・・・ひらめいた! みたいな感じが近いかな」
「へー、急にね・・・」
「信じてないでしょ?」
「えー、いや、まぁ」
「最初っからわかってたら、いくら私だって言うよ。それぐらい」
「そうだな・・・確かに」
「・・・そこは、認めて欲しくなかったけど・・・とにかく、急いで体が消えちゃうから!」
「わかった」
俺は、重い剣を担いでスタッグの背後にまわることにした。あまり離れていないスタッグの群れを焦点にし、気づかれないように近づいた。
近づいてみるとしっぽの付け根のあたりがノイズになっているスタッグが群れの中にいた。さっき攻撃したスタッグだ。俺は、このスタッグを倒すことに決めた。
剣を大きく振りかぶり振り下ろした。
―ザシュ!―
さっきとは違って動かなかったから、大ぶりな一発はスタッグをとらえた。
スタッグの足が完全にノイズ化して、消えた。一本、足を失ったスタッグは逃げることができなくなった。
「・・・!?」
動くことすらできないスタッグは次々と俺の攻撃を受けた。そして、消えた。
「・・・」
一瞬、自分が怖くなった。
スタッグの足がなくなったとき、攻撃をやめようと思った。それなのに、手がいうことを利かなくて勝手に動いて、スタッグを消した。
「・・・」
俺は、自分の手のひらを見つめた。血豆がいくつもできているこの手が、スタッグを消したんだ。自分の手なのに、自分が操っていない。そんな気がした。
また怖くなった。そして、剣を捨てた。
―ガタン―
重いその剣は、鈍い音をたてて地面にぶつかった。そして、スタッグと同じように剣先から消えていった。
「翔ちゃん?」
その言葉で我に返った。
「あぁ、なんだ?」
「もう消えちゃうよ」
もう一度、俺は自分の手を見た。さっきまで、あった左手の中指が半分まで消えていた。体を見ると、もうほとんどが透けていた。
自分もスタッグのように消えてしまうんだ。きっと、いなくなってしまうんだ。
「・・・翔ちゃん?」
また我に返る。
「・・・なに?」
「翔ちゃん、大丈夫?」
消えてしまいそうな自分が大丈夫なのか、そんなこと本人がわかるわけがなかった。聞きたいくらいだった。
「さぁ?」
「大丈夫、帰れるから」
スタッグは大丈夫だったのだろうか。自分が倒しておいてなんて無責任なんだ。自分の意思とは違っていてもやったのは自分なんだ。
「なぁ」
「なに?」
「もう・・・体・・・ないや・・・」
俺は、自分がどこにいるのかわからなくなって、なにがなんだかわからなくなってそして、目をつむった。
 




ありがとうございました。
この話しなんですが、実は中一の頃
つくったものを再編集したものです。
2年かかってこの場にだすことができました。
本当にありがとうございました。













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