チーン!
外は昼過ぎから冷たい雨が降り続いている。
その年老いた男は最近一緒に暮らし始めた『彼女』を待っていた。
『彼女』はある日突然男の部屋に現われた。そして当然のように彼の部屋に居座るようになった。彼は最初、当惑しながらもそれを受け入れた。そして、今や「彼女」なしには生きられない自分を感じ始めていた。
「雨に降られたりして大丈夫だろうか…あの子は傘も持っていないし……」
『彼女』のためにドアはいつも開けてある。
やがて『彼女』ははじめて来たときと同様にすっと玄関に立っていた。
「やぁ、お帰り。寒かったろう」
彼は急いで乾いたタオルを取りに走って、タオルに『彼女』をすっぽり包んで濡れた体を拭いた。
「お前、お風呂は苦手だったよな……」
すっかり水気を取り去っても『彼女』の震えは止まらず、老人はそう言いながら辺りを見回す。やがて彼は部屋の隅の一点を見て微笑んだ。
「そうだ…これはどうかな。待ってなさい、すぐ温かくなるよ」
「ミュゥ~……」
荷物もほとんどない彼の部屋におかれた真新しい白い箱。それは、日々の生活で自分の食事や『彼』のミルクを温めるために重宝しているものだった。
彼はその白い箱の中に『彼女』を入れてつまみを回した。
―――チーン!……――




