Chapter 5 episode: Light and Shadow
少し西日が射し込むアパートの一室は、手狭ではあるが日本らしくすべての機能がコンパクトにまとめられていて、嫌いではなかった。
きれいに整えられたその部屋で、〈金色〉の髪をした少女は薄手のシャツにショートパンツというラフな格好で、真っ白な肌を惜しげもなくさらしていた。
取り込んだ洗濯物をしまい終わったところで、背後にふと人の気配を感じた。
「あ、エレナ」
振り返ると、そこにはフリルのたくさんついたかわいらしい服をまとった妹がいた。
だが、どこかいつもとは様子が異なる。表情がなく、常に肌身離さず持っているクマのぬいぐるみを下に落としていた。
やがて右目が蒼く、左目が紅く輝いた。
周囲がすうっと薄暗くなり、いつの間にか窓の外の景色さえ消えていた。
《――指示したことはどうなった?》
エレナの声音が変わると同時に、アイーシャからも表情が消えた。
《貴様らを遊ばせるためにそこへ派遣したのではない。やるべきこをやれ。お前たちは〝駒〟だ。分をわきまえろ》
「――わかっている。これまでのところ、指示どおりにこなしている」
アイーシャの声もいつもとは変じ、低く感情を感じさせないものになった。
《そうだ、命令のみを淡々とこなせばいい。他の何も期待してはいない。貴様も〝E〟も、我々の中でしか生きられないことはわかっているだろう?》
「…………」
《これでも、お前たちには期待はしているんだ。特に例のことにはな》
「…………」
《準備だけはしておけ――〝エッジ〟》
その言葉が終わるやいなや、エレナの瞳の光がふっと消え、糸の切れた木偶人形のごとく倒れかかった。
アイーシャが無駄のない動きで妹を支え、優しく抱きしめた。
「お姉さま……」
「大丈夫、私がついてる」
どこか怯えた様子で震えているエレナが不憫で、背中に回した腕に力を込めた。
紅すぎる夕陽の光が、目に痛かった。