Chapter 4 episode: My Hope
「道に迷っちゃった……」
少し癖のある黒髪の少女は、広すぎる校内でさまよい歩いていた。
黒のセーラー服というシンプルな制服を身にまとった彼女は、まったく方向感覚が掴めないらしく、同じところで右往左往していた。
人に道を尋ねようにも、今はもう授業中なのか、それとも場所が悪いのか、周囲に人の姿はない。
途方に暮れて立ち止まったとき、ふと不自然な気配を感じた。
否、これは明確な霊気。
――下へ向かってる?
急速に動くそれは、自分の下方をどんどん移動しているようだった。
――地下なのかな?
階下へ向かいたいのだが、もう一度周囲を見回しても標識や案内図のような物はなかった。
――急がないと。
もたもたしている暇はない。ここに〝彼女〟が再び来ていることはわかっているのだ。
急がなければ、また間に合わなくなってしまう。
焦った少女は余計に動き回り、余計に目的の場所から離れていく。方向音痴な人間にありがちな行動パターンであった。
――助けて、お兄ちゃん……
今はいない兄に、すがるようにして叫んだところで届くはずもない。
自分は道に迷っているという現実に追いつめられ、ついには涙目になってきた頃、廊下の奥にようやく人影を見つけた。
長身の男の影。スーツを着ているにもかかわらず、シャツの胸元をだらしなく開けていたりする。
「あ、あの人は……!」
ようやく顔見知りに出会えた。
少女は喜び勇んで、男の元へ駆け寄っていった。