表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
牙 - kiva -  作者: takasho
37/57

Chapter 4 episode: Dangerous Classroom 1

 休み時間の教室はひたすらにやかましく、あちらこちらで無意味ともいえる会話がひっきりなしに交わされていた。

「レンレーン……麻生と遊ぼう……」

「ひとりで遊べ」

「あ、そう」

「…………」

 今日はもう帰ろうとサボる言い訳を考えていた蓮に、いつものように光がねちっこくまとわりついていた。

「絡みつく刃……影が……陰る……」

「何を言ってる」

 と返したところで、はっとした。

 ――また〝予言〟か?

 こいつの言葉は九九%意味がないが、ときおり謎めいたことを口にする。しかも、それが後に起こることと奇妙に符合するものだから、無視したいのに無視できない。

「光、お前――」

 本当は何を、と言いかけた蓮は途中で声を詰まらせた。

「きゃっ」

 背中から軽い衝撃とかわいらしい声。

 振り返ると、金髪の美少女がそこにいた。

 アイーシャの胸の感触を確かに得たことはおくびにも出さず、蓮は彼女のほうに向き直った。

「お前か」

「ごめんなさい」

「ちょっと待て」

 謝ってすぐに立ち去ろうとするアイーシャの前に、蓮が立ちはだかった。

「ずっと聞きそびれていたが、お前、どうしてあのときあそこにいたんだ?」

 転校してきた初日、教会で起きた事件。戦い自体はどうということもなかったが、なぜかあのときアイーシャがいた。

 そして戦闘が終わったあと、その姿はなくなっていた。

 ――ま、逃げろと言ったのは俺だが。

 アイーシャは、わずかに逡巡してから答えた。

「夜のお祈りを捧げようと」

「わざわざ改装中の教会に? 敷地内だけでも他にあるじゃないか」

「帰ってきたばかりで知らなくて……」

「ふん」

 どうも要領を得ない。

 そもそも、学園タウンの中とはいえ、あんな時間にこんな少女がひとりで出歩くものか?

 ――それも、お祈りのためだけに。

「お前、本当は――」

「あ、〈やいば〉」

 蓮の言葉を遮ったのは、光の間の抜けた声だった。

「は?」

 相変わらず掴みどころのない表情で、光はアイーシャのほうを指さしている。

「ちょっと、光!」

 怒りの声を上げたのは、美柚をはじめクラスの女子たちであった。

「アイーシャに失礼でしょ! まったく、女の子に向かって――」

「刃」

「まだ言う!?」

 美柚が拳が振り上げても、光はアイーシャではなく中空を見つめ、ぽかんと口を開けていた。

「…………」

 殴る気が猛烈に失せ、美柚はもう相手にしなかった。

「ごめんね、アイーシャ。このクラス、変な野郎ばっかで」

「う、うん」

 はっきりうなずくアイーシャも、けっこう失礼である。

 彼女が凶暴な女子たちに囲まれてしまった。このクラスでは捕食関係の位階で下位に属する男子に、もはや打つ手は残されていなかった。

 ――また、はぐらかされたな。

 結局、本当のところを聞けずじまい。

 二人で会う機会が意外と少なかった。

 それはアイーシャの身を案じ、周りがそう仕向けているせいだということに、まるで気づいていない蓮であった。

「ちっ」

 光の言動も含めて一連のことで不機嫌になった蓮は、わざと周りに聞こえるように舌打ちして、教室の外へ向かった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ