表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
牙 - kiva -  作者: takasho
34/57

Chapter 3 episode: Nonplussed

 部屋はいつもの薄暗がりのままであったが、その空気は明らかに常時とは異なっていた。

「――どういうこと?」

 麗奈の問いに答える者はいない。中途半端な沈黙に、麗奈はいら立った。

「なんでこういうことになるの?」

「僕たちとは別の誰かが動いてるってことでしょ。そんなこともわかんないの?」

「わかってるに決まってるでしょ、ロミオ。そうじゃなくて、その誰かが誰で、なんのために動いているかってこと」

「それはわからない」

 答えたのは、立ったままのミカだった。

「ただの偶然かもしれないし、誰かのいたずらかもしれない」

「それは楽観的すぎる」

 意外にも、姉の意見に省が反論した。

「相手は、こちらの術を瞬間的に上書きしてみせた。そんなことは、狙ってやらなければできないはずだ」

「そうだね。かけた術を上書きするには、それを再構成してかけ直すか、いったん前の術を完全に消すしかない」

 ロミオの意見は正しかった。

「でも、結果的に狙いどおりになったんだからいいじゃない」

「麗奈は楽観的だなぁ。そういう問題じゃないだろ? 今回は、僕たちに被害がなかったからよかったけど、もし敵対したら大変なことになるかもしれないじゃないか」

「敵対するかどうかわからない」

「それこそ憶測だよ、それも希望的な」

「全部憶測だ」

 ソファに座っていたミカが立ち上がった。

「最悪の事態を想定することも大事だが、警戒しすぎて過剰に反応していては時間の無駄だ。我々にはやるべきことがある」

 正論であった。

「ところで」

 省が、姉から麗奈たちへと視線を移した。

「お前たちはどこへ行ってたんだ? あのとき、学校にいたんだろう?」

「私は、もう外に出てた」

「僕は小学校に戻ってたよ。授業あるし」

「そうか」

 もっともらしい答えに、省ももっともらしくうなずいた。

「それにしても、〔あいつ〕、どういうつもりなの?」

 と、麗奈。

 どこか怒りをにじませた様子で、ローファーのかかとを使って床を叩いている。

「彼には彼なりの考えがあるのだろう。我々は、自分の役割をまっとうするだけだ」

「でも、ミカ――」

「麗奈」

 ミカの声は相変わらず静かであったが、有無を言わさぬ迫力があった。

「自分の目的を思い出せ。他人の詮索をすることが狙いではないはずだ」

「……わかってる」

 無駄話はこれで終わりだとばかりに、ミカは別の部屋へと消えていった。

 それぞれも、それぞれの方法で去っていく。

 省だけが、そんな彼らを見送っていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ