表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
牙 - kiva -  作者: takasho
11/57

Chapter 1 episode: Onlookers

 暗闇は、人を救うのか、堕落させるのか。

 電灯がないのに物を認識できるほどには明るさがある不自然な空間で、四人の男女がそれぞれ思い思いの姿勢で戦況を見つめていた。

 空間の中央に表示される映像、それが真っ赤に染まり、やがてブラックアウトした。

「あーあ、やられちゃったじゃない」

 左右で髪をまとめた女子高生らしき女が、頭の後ろで手を組み、椅子に背を預けながら言った。

 その口調には、わずかに失笑の色があった。

「仕方ないよ。どうせ眷属だし」

 大きな箱の上に腰かけた黒衣の少年は、肩をすくめた。

「ロミオ、あんた、あいつと接触したんでしょ? なんで本当の力を見抜けなかったの?」

「〝あんた〟って呼ばないで、〈麗奈レナ〉。あのときは――なぜか邪魔が入って」

 邪魔というより最初からそこにいたのだが、土壇場になって急に力を発揮した。未知の存在は、あの眼鏡をかけていた男だけではない。

「どうも――奴が本物らしい」

 そう言ったのは、鉄骨がむき出しの柱に背を預けて立っていたスーツ姿の女だった。暗がりの中でも、その短い髪が赤いのがわかる。

「あの程度の霊力で?」

「麗奈、最後の部分を見ただろう。あれは、まぎれもなく〝王者の資質〟だ」

「何かの間違いじゃないの?」

「それだったら楽でいいが」

 それまで隅のほうで黙っていた男が、空間の中央へゆっくりと近づいていく。

 片手を軽く横へ振ると、先ほどの映像が再び映された。

 駒――眷属の女が勝ったかと思われた瞬間、男の刀を中心に爆発的に霊気が放出されていく。

 それからは、もはや戦いになっていなかった。力、速さ、霊力、すべての面で相手が上回り、奴は遊んでいるようにさえ見えた。

 そして、刀を振り下ろした瞬間、すべてが消えた。

『――――』

 一同、しばらく声もなかった。これが現実だと受け止めるしかなかったからだ。

「でも、私たちでさえ見えない速さなんて……」

「麗奈を基準にしないでよ。僕たちは見えてる」

「ほとんど認識できないが」

 皮肉を言おうとしたロミオであったが、中央の男、省に事実を言われ、ばつの悪い表情をした。

「姉さんはどう思う?」

「ここではミカと呼べと言っている。あれは、今後も注視するしかない」

 今の段階では結論は出せない。その見解は皆に共通していた。

「じゃあ、なんで最初は苦戦してたのよ。演技には見えなかったけど」

「僕が戦ったときもたいしことなかった」

「さあな。それも謎だ」

 今、憶測したところで意味はないと、ミカはきびすを返して奥の暗闇の中へと消えていった。

 それにつづいて、なぜか失望した様子で省も姿を消した。

「そういえば」

 と、麗奈。

「〔あいつ〕はどうしたのよ?」

「さあね。また旅行にでも行ってるんじゃないの?」

「はあ、勝手な奴ばっかり」

「麗奈が言わないで」

「はいはい」

 二人の気配もすっと消えていく。

 そして、光源の知れない薄青い輝きも同時に消失した。

 あとには、黒い闇しか残らない。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ