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スライム転生。大賢者が養女エルフに抱きしめられてます  作者: 月夜 涙(るい)
第一章:【魔術】のエンライト、オルフェ・エンライトは紡ぐ
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第一話:楽しいスライム生の始まり

 棺桶でぐっすり眠り、朝が来た。

 ベターっと、液状になったスライムボディに力をいれる。

 貧弱すぎて、力を抜くと液体になるから困る。

 そして、見事なスライムボディになった俺は棺桶から飛び出す。

 この体、妙に動きが遅い。

【無限に進化するスライム】は、成長と適合と進化に全振りしているので初期状態はひどく弱い。

 だけど、我慢だ。この身は最強に至る可能性が存在する。


『当面の目標は人間の姿に化けること』


 大賢者としては魔術の一つでも使わないと洒落にならないし、やっぱりもとは人間なので人間の楽しみをしたい。人間の姿になればできることは広がる。


 スライムボディに力を入れてみる。体がうねうね動いて、変形する。

 手を作ろうとしたが不格好な太い棒にしかならない。

 力の入れ方を変える。ちょっと赤っぽくなった。


 そう、鍛錬次第では自由自在に形と色を変えて、進化さえすれば硬度の調整も、質感の再現まで変える。

 スライムのボディはなんにでもなれる。魔術回路を形成することで人間だったときに使いこなした魔術の再現だってできる。……魔術回路を形成できれば。


 そのためには【進化】だ。

 俺の死体を取り込んだように、魔物をどんどん【吸収】してその力とスキルをいただいていく。

 なので、やることは一つ。魔物狩り。

 新たなスライム生の第一歩。さっそく外にいこう。

 その前に……。


『武器の調達だな』


 悲しいことにこの柔らかい体には攻撃力なんてものはない。

 唯一の武器はこの体で包んじゃうことだけど、消化するまえに逃げられる。

 だから、スライム用の武器をたっぷりこの部屋には用意してある。


『たしか、この辺りに』


 棚の上段にポーション瓶がたっぷり並んでいた。

 それを口の中に放り込む、お腹の中に力を入れて器用に瓶のふたを外して中身をお腹に貯めていく。

 どんどん、お腹にポーションが溜まっていく。

 このポーションの正体は、超がつくほど強い酸のポーション。

 これがスライムボディの強い武器になる。

 貧弱な体の数少ない長所の一つはすべての毒や酸が効かないこと。

 それどころか……


『案外、この体はすごいな』


 食べたポーションの材料が手に取るようにわかる。

 頭のなかに、成分表ができる。

 材料を食べればお腹のなかで合成できそうだ。良かった。このポーションを配合したのは俺だけど、今の不器用なスライム体で調合することは難しい。


 だけど、材料を食べてお腹のなかでぐちゃぐちゃするだけならなんとかなりそうだ。

 そんなことを考えながらポーションをばくばくする。 

 ふう、お腹いっぱい。自分の体積以上のポーションを飲んだからな。


『いったい、どういう原理だか』


【無限に進化し続けるスライム】は俺が作った魔法生物だが、ベースがちゃんと存在する。

 そのスライムの特徴は食べた獲物を吸収し、その能力を得ることと、異次元に食べたものを収納しておく能力の二つを持っていた。収納したものは一切、口に入れたときから劣化しないし、ちゃんと個別保存出来て混ざり合わない。

 もちろん、このスライムボディにはその機能もある。

 体に吸収するか、ただ保管するか、どちらかを選べる、すごい便利なスライムだ。


『さて、娘たちに会わないように外にいこう』


 ある程度強くなるまでは、この屋敷を拠点するつもりだ。

 そして、この部屋は遺言で俺が死んだあと誰も立ち入らないように頼んであるので拠点にしても見つかることはない。

 か弱いスライムが野良暮らしをするのはつらい。


 体を潰して、ドアの下をくぐったり、鍵穴をにゅるっとしたり、スライムらしさを生かした動きで誰にも気づかれずに外に出た。

 馬車小屋の近くを通ると、【剣】のエンライトこと、狐獣人のシマヅと【医術】のエンライトこと、天使のヘレンの馬車が消えていた。

 シマヅは剣客としてとある国に招かれているし、ヘレンも王宮医師として他国に出ている。二人は仕事に戻ったのだろう。

 あの子たちは外でその才能を鍛えるように俺が手配していた。

 ちゃんと、やるべきことをやろうとしていてうれしい。残り二人、エルフのオルフェとドワーフのニコラの様子もあとで見に行こう。あの二人は姉妹の中でも甘えん坊だ。俺の死に囚われていなければいいが……。

 そんなことを考えているうちに、魔物が出る平原までたどり着いた。

 

『魔物はいないかなっと』


 感知能力が低いので地道に歩きながら魔物を探す。

 この辺りの魔物は弱いが数が多い。


 そう遠くないうちに魔物が見つかるだろう。

 なので、とりあえず道草を食ってる。もぐもぐ、草美味しい。

 俺の屋敷という、むだにいつも魔力溢れるスポットがあるおかげで、このあたりの生態系が変わり、いろいろと貴重な薬草が生えていたりする。


 それをスライムボディで取り込み、消化。成分ごとに『収納』しておく。霊薬の成分をストックしておけば、いつかどこかで使えるだろう。

 そんな風に道草を食べていると、いつの間にかそっちに夢中になってしまっていた。

 スライムになると草が美味しく感じるのは意外な発見だ。

 そして、ぱっちりと目が合う。


『立派な牙ですね』


 つい、うっかり魔物への注意を忘れていた。

 思ったより、魔物に染まって本能に引きずられている。もう少し理性を働かせよう。

 目の前にいる魔物は、それはそれは大きな紫色のネズミだった。

 中型犬ぐらいのサイズがある。


「チュウ!」


 凶悪な外見からは想像もつかない実にネズミらしい可愛い泣き声だ。

 この魔物は知っている。

 フォレスト・ラット。低級の魔物だ。


 前歯が長く伸びている。

 人間の頭蓋骨を一発でぶち割りそうな一撃がスライムボディを襲う。

 その一撃は、容易くスライムボディを貫通した。


『だから、なんだって話なんだけどね』


 もとよりこの身は不定形。

 別に貫かれようが、切り裂かれようが問題ない。

 むしろ、異次元に【収納】してあった強酸ポーションをスライムボディに浸透させると、やつの前歯が溶け始める。

 驚き逃げる前に、全力でスライム飛び、フォレストラットに飛びつき、全身強酸ポーションボディで包む。


「キュイ、キュイイイイイ」


 溶かされながら悲鳴を上げるが、もう遅い。

 もともともっている消化液ならあっさり振りほどかれて逃げられただろうが、この身に宿すのは大賢者が生み出した特製のポーション、低級の魔物が逃げられるはずがない。


 数秒で絶命する。

 体から、強酸ポーション成分を【収納】。完全に溶かすと【吸収】できなくなってしまう。

 いったん離れて、死体になったフォレスト・ラットをばくっとする。


 もぐもぐ、さすがネズミだけあって少々生臭いけど、がまんできるレベルだ。

 体内の消化液でフォレスト・ラットが消化されていき【吸収】する。

 生意気にも毒をもっていたので、そっちはちゃんと【収納】する。毒というのは便利な武器だ。在庫は欲しい。他にも適当に骨や皮なども何かの素材に使えるかもしれないから【収納】し残しておこう。

【吸収】し終わると体が熱くなった。


『おっ、ちゃんと適応する能力があったか』


 魔物を喰らったことで、スキルを一つ手に入れた。

 それは【気配感知】。


 地味だが、便利なスキルだ。周囲の敵に気付きやすくなる。

 ありがとう。フォレスト・ラット。君のおかげで強くなった。

 スキルをゲットしただけじゃなく。スライムボディの動きが俊敏になっている。


『もう、二、三匹食べたら家にもどろうかな』


 そんなことを考えながら、道草を食い始めた。様々な薬草の成分も忘れずにストック。

 強くなるにはこういう地道な運動が必要なのだ。



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種族:フォビドゥン・スライム

レベル:2

名前:マリン・エンライト

スキル:吸収 収納 気配感知

所持品:強酸ポーション 各種薬草成分 フォレスト・ラット素材

ステータス:

筋力G 耐久G 敏捷F 魔力F 幸運F 特殊EX

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