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さ「な~っにっかな~な~にかな!?」
ル「今回は、これ」
『サイクロイド』
さ「え~っと……」
ル「……活用法は? いつもの」
さ「……地属性レベル3機械族通常モンスター攻撃力1000以下且つロイドと名の付くモンスターということで、ありとあらゆるサポートカードに対応している点が一番の長所だね。使いようによってはとおても柔軟な動きが出来る……かもね」
ル「具体的には?」
さ「………………………」
ル「具体的には?」
さ「さだめに何を期待してるの!?」
第四期「精霊界へ。全ての真実」
第四期第三十七話「魂の一撃」
アルカナ~切り札の騎士~



第四期第三十七話「魂の一撃」



「よっしゃあ! そうと決まればこのサイクロイド、こうしちゃいられねえ!」
 今まさにデュエルを始めようかというその時、サイクロイドが叫んだ。
「融合! バイクロイドォ!」
 叫ぶと同時に、何処からともなく現れたチェンジギアモーターがサイクロイドに融合され、以前見たバイクロイド形態に。
「何故、態々バイクに……?」
「おおっと兄ちゃん、この程度で驚いてちゃいけねえなぁ! 俺っちの真の力って奴をぉ……魅せてやるぜぇ! トランスッ! フォーッム!」
 ガチャコンガチャコンと、何やら金属が組み合わさっていく音が響く。見る間にバイクロイドの姿は二輪から人型へと……って。
「なんだそりゃああああああああああっ!?」
 思わず身体の痛みも無視してツッコミが出た。
「どうした兄ちゃん! 俺っちの華麗なる転身に、感動して言葉も出ねえかい?」
「そうじゃねえよ! トランスフォームってお前……」
「うん? ああそうか。『デュエルモードオン! アクセラレーション!』の方が好みかい?」
「ボロチャリの分際で時代を先取りするなぁぁぁぁぁぁっ!」
「あの……セツ?」
「凄い……瀕死だったお兄ちゃんがあんなに元気に……! やっぱり適度なボケは、ツッコミの生命力を活性化させるんだ……!」
「あの……さだめさん? その、今ってそんなアホなこと言ってられる状況じゃあ……」
 ちょい、ちょい。
「え? なんですかルインさん」
「……空気、読んで」
「ってこれ私が空気読めてないことになってるんですか!? いや、ちょ……待ってください! 今はシリアス真っ只中の状況で、私は最大限空気を読んだ結果至極真っ当なツッコミを……!」
「空気……読んで」
「いやそのですから……」
「空気……読んで……っ!」
「私、そんなに悪いことしましたか!? そんな、未だかつて見たことないほど鬼気とした表情のルインさんに迫られるほど、悪いことしましたかねぇ!?」
「……(ふるふる)」
「だからっ!……すみませんでした」
 アテナが折れた。
 それは兎も角、人型になったサイクロイドの向こう側で、希望が納得顔で頷いていた。
「なるほど。まあそもそもどうやって自転車がデュエルするのか疑問だったんだけど、これで疑問が氷解した。実に、スマートな解決法だ」
「っ……ツッコミ、たいですがここは空気を読ん……」
「ほら、ダメじゃんアテナ。折角ボケてくれたんだから突っ込んであげなきゃ」
「アウェー! かつてないほど私アウェーです! 最早何を言ってもKY扱いされる流れです!」
「さて。恒例のアテナ弄りはこの辺にして……そろそろ、始めるかい?」
「おうよ! 俺っちの準備は出来てるぜ!」
 アテナ弄りってなんですかぁぁぁぁ! と喚いているアテナを尻目に、希望とサイクロイドの緊張は高まっていく。
「「デュエル!!」」
 サイクロイドLP4000
 真中希望LP4000
「さて、僕は後攻で構わない。君のターンでいいよ」
「そうかい? なら、お言葉に甘えて俺っちのターン! ドローだ!」
 人型になったサイクロイドが自前のデュエルディスクからカードをドローする。
「うっし! 俺っちはモンスター一体を守備表示でセット。カードを二枚セットしてターンエンドだぜ!」
 意外にも、サイクロイドは堅実な形でカードをセットする。
「……ふむ」
 アテが外れた、と言った雰囲気で真中希望が思案する。
「意外だね。もっと血気盛んに攻めて来るものかと思っていたけど」
「へへっ。俺っちの弱さは俺っちが一番良く知ってらぁな。それに……コイツは俺っちが勝つための戦いじゃねぇ。次に……兄ちゃんたちに繋げるための戦いだ。出来る限り長引かせて情報を頂こうって腹よ!」
 ……そういうことは、堂々と宣告することじゃないだろう。
「なるほど……。確かに僕は好戦的な性格と言うわけでもないし、守りに徹されると少々手間取りそうだ。何より、その情報を得ようとする姿勢には……共感を覚える。僕の、ターン」
 スッ……と自然体でカードをドローした希望は迷うことなく動いた。
「僕は『アカシック・ウォッチャー』を攻撃表示で召喚する」
 『アカシック・ウォッチャー』ATK1300
「アカシック……?」
「ふふ……アカシックは僕の力の根源。知を司り、世界の隅々まで吹き渡る風。さあ、その力の一端を見せてあげよう。『アカシック・ウォッチャー』のモンスター効果を発動する」
 希望がそう宣言すると、『アカシック・ウォッチャー』の目からレーザーサイトの様な光が伸び、サイクロイドの手札を二枚、透かした。
「なんだぁ!?」
「『アカシック・ウォッチャー』は召喚・特殊召喚に成功した時、三つの効果から一つを選択し、発動することが出来る。一つは、フィールドにセットしたカード一枚を確認し、戻す効果。二つ目は相手の手札を二枚までランダムにピーピングする効果。最後に、相手か自分のデッキの上から三枚を確認し、戻す効果。僕は二番目の、手札を確認する効果を発動する」
 サイクロイドの手札二枚が浮かび上がる。
「ふむ……『サイクロイド』と『ゲッドライド!』か。確認した」
「ちぃ……!」
「それでは、早速その情報は利用させてもらおうか。僕は手札から『アカシック・ブレーダー』を特殊召喚する」
 『アカシック・ブレーダー』ATK2000
「攻撃力2000だと!?」
「さて。『アカシック・ブレーダー』の強制効果だ。特殊召喚した時、カード名を一枚宣言し、相手の手札を確認する。僕が宣言するのは『サイクロイド』」
 今度はサイクロイドの手札が全て浮き彫りになる。
「そして相手の手札に宣言したカードが存在しなければ、このカードを破壊し、僕は手札一枚を捨てなければいけないわけだけど……」
 当然、サイクロイドの手札に『サイクロイド』はある。今さっき、『アカシック・ウォッチャー』の効果で確認したばかりだ」
 それ以外にも『ゲットライド!』『チェンジギアモーター』の二枚が露わになる。結局、手札の全てを確認されてしまった。
「バトル。『アカシック・ブレーダー』でセットモンスターを攻撃。『レーダー・エッジ』」
 ブレーダーの手に持つ柄から半透明の刀身が現れ、サイクロイドのモンスターを切り裂いた。
「ちっ……俺っちの守備モンスターは『トライクラー』! 戦闘で破壊された時、デッキから『ヴィークラー』を特殊召喚するぜぃ!」
 『ヴィークラー』DEF200
「リクルーターの三兄弟か」
「へっ、俺っちの舎弟よ!」
「なるほど。では、『アカシック・ウォッチャー』で『ヴィークラー』を攻撃しよう」
 ウォッチャーの目から射出されたレーザーがサイクロイドとはまた少し違う二輪を貫く。
「まだまだぁ!『ヴィークラー』の効果で、デッキから『アンサイクラー』を特殊召喚!」
 『アンサイクラー』DEF100
「ふむ……低レベル機械族による特殊召喚多用型。バーンともビートとも、現段階では判別できず、か……僕はカードを一枚セット。ターンエンド」
「俺っちの、ターン! ドロー!」
 新たにカードをドローするサイクロイド。しかし、既に今ドローしたカード以外は存在が割れてしまっている。
「うし! 俺っちは手札から『機械複製術』を『アンサイクラー』を三体に複製するぜ!」
 フィールドのアンサイクラーが二体増える。
「そしてリバースカードオープン! トラップカード『ハイレート・ドロー』! 俺っちの機械族を全て破壊して、その数だけデッキからカードをドローするぜ!」
 サイクロイドがデッキから三枚のカードをドローする。
「よし! これで見られていないカードが増え……」
「トラップ発動。『マインドクラッシュ』。僕は『ゲットライド!』を宣言する」
「なにぃ!?」
「それじゃ、折角ブラックカード(見えないカード)を増やしたのに……!」
 再び白日の下に晒されるサイクロイドの手札。新たに増えたのは『機動砦のギア・ゴーレム』『ウェポンチェンジ』『リミッター解除』の三枚。その全てを確認し、希望は確信したらしい。
「……なるほど。『ペア・サイクロイド』や『チェンジギアモーター』、『機動砦のギア・ゴーレム』……つまりダイレクトアタッカーを一気に強化して攻める奇襲型のデッキか。奇襲とわかっていれば怖くないな」
「ぐ……そういうお前さんは、情報アドバンテージ重視ってことかい?」
「その通り。僕のアカシックモンスターたちは、情報を力に変える。そして……そのアドバンテージは、僕にとっても有用だ」
「……バレちまってるなら仕方ねえ。俺っちは『機動砦のギア・ゴーレム』を守備表示で召喚! 更に永続魔法『ウェポンチェンジ』を発動! ターンエンドだぜ!」
 『機動砦のギア・ゴーレム』DEF2200
「よし、とりあえずギア・ゴーレムの守備力ならあの二体よりも上だ!」
「僕のターン、ドロー」
 しかし希望は落ち着いたもので、すまし顔でカードをドローする。
「僕は『アカシック・ウォッチャー』をリリース。『アカシック・リーダー』をアドバンス召喚しよう」
 『アカシック・リーダー』ATK2000
「はっ! アドバンス召喚した割に、『アカシック・ブレーダー』と攻撃力が同じじゃねえか! それじゃあ俺っちのモンスターを倒すことはできねえなぁ!」
 しかし、希望は平然としている。
「さっき言っただろう? 僕のアカシックモンスターは、情報を力に変える……『アカシック・リーダー』の効果。相手フィールドに存在する表側表示のカードの数×200ポイントアップする。『パワー・リーディング』!」
「なんだと!?」
 サイクロイドのフィールドには二枚の表側表示カード。
 『アカシック・リーダー』ATK2000→2400
「さあ、バトルと行こうか。『アカシック・リーダー』で『機動砦のギア・ゴーレム』を攻撃」
「ちっ!」
「更に『アカシック・ブレーダー』でダイレクトアタック。『レーダー・エッジ』!」
「ぐあああああああっ!?」
 サイクロイドLP4000→2000
「僕はカードを三枚セット。ターンエンドだ」
「ぐっ……俺っちの、ターン! ドロー!」
 モンスターがいなければ『ウェポンチェンジ』の効果も発揮出来ない。
「……俺っちは、俺っち自身。『サイクロイド』を攻撃表示で召喚するぜ!」
 『サイクロイド』ATK800
「その瞬間、トラップ発動『連鎖破壊(チェーンデストラクション)』。君のデッキと手札から『サイクロイド』を全て破壊する」
「なぁっ!?」
「君自身が君のデッキのエースであることは百も承知だ。悪いが、根絶させて貰うよ」
「ぐっ……まだよ! 俺っちは手札から永続魔法『前線基地』を発動! 手札の『チェンジギアモーター』を特殊召喚! 俺っちにユニオンするぜ!」
 『サイクロイド』ATK800→1600
「これで……せめて『アカシック・リーダー』には消えて貰うぜ! バトル!『チェンジギアモーター』の効果で攻撃力を更に800ポイントアップだぜ!」
 『サイクロイド』ATK1600→2400
「いっけぇぇぇ! 速攻魔法『リミッター解除』!」
「悪いけど、その『リミッター解除』に対し、速攻魔法『サイクロン』をチェーン!『チェンジギアモーター』を破壊する!」
「なにぃ!?」
 『サイクロイド』ATK2400→800→1600
「拙い、あの攻撃力じゃあ……!」
「迎え討て。『アカシック・リーダー』。『リーディング・ブロウ』!」
 攻撃力が2400の『アカシック・リーダー』の拳が、『チェンジギアモーター』を破壊され、勢いの落ちた『サイクロイド』を迎撃する。
「ぐおおっ!?」
 サイクロイドLP2000→1200
「ぐっ……俺っちはターン、エンドだ」
「サイクロイド……」
 サイクロイドにもう、反撃の手立てはない。それは、サイクロイドの手札を確認している希望も、良くわかっていることだろう。
「僕の、ターン。ドロー」
 しかし、希望はそこで初めて、迷うように動きを止めた。
「……僕は、君の手札を全て把握し、その手に反撃の手段がないことを知っている」
「…………?」
「だが、僕はまだ、君に勝ったとは思わない。この状況で、反撃出来るとは思っていない。思ってはいないが……」
 希望はサイクロイドの後ろにいる俺たちを眺め、サイクロイドに視線を戻す。
「君は、例え僕に負けようと、決して絶望することはないだろう。君の後ろに、セツたちが控えている限り。だから僕も、全てを終わらせ、世界を救うまで、決して勝ったとは思わない。尤も……」
 希望が見るのは、サイクロイドが一ターン目から伏せていたリバースカード。
「リバースカードが何なのか。それすらわからずに勝った気になるのは早すぎるというものだからね」
「…………用心深いねぇ、どうも」
 希望は微笑み、昔を懐かしむように視線を上げる。
「それは当たり前のことだ。例え実力が大きく離れていようと、人は何時の世も神へと挑み、絆で、想いで、祈りで、愛で、勇気で。絶望の中に希望を見出し、奇跡を呼び、活路を開き、未来を紡いできたのだから。そんな人間たちを相手に、どうして驕れる? どうして勝ちを確信できる? 僕は驕らない。僕は勝ちを確信しない。全てが終わるその時まで、僕は策を巡らし続ける」
 ゾッとした。コイツは、今この瞬間も考えている。思考を進めている。勝つために。自らの望みをかなえるために。ただ愚直なまでに、思考し続けているのか。
「……それなのに、俺は」
 停滞している。思考も、身体も。折角サイクロイドが全てを賭して時間を稼いでくれているのに……!
「サイクロイド。君は人間ではないけれど……。僕は決して、君が僕に勝てないとは思わない。未来のために、自ら動く者を、僕は決して侮らない」
 だから。と前置きし、希望はサイクロイドに手を向ける。
「見せてみろ。君の出した答え。君の掴んだ未来。君の、進むべき結末を」
 希望は微笑む。
「超えて見せよう。僕が。君たちの可能性を。その結果、君たちの未来が、例え終焉に彩られたとしても。僕は僕の望みを叶えよう」
 希望の挑発に、サイクロイドは奮い立つ。ここで立ち向かわねば、男じゃないと。
「……アンタ、すげえよ。アンタみてぇな男は見たことねぇ。良いぜ。やってやらぁ! 見やがれ! これが俺っちの、最終最後の一撃だ!」
 サイクロイドは、リバースカードをオープンする。それは、サイクロイドが見せる、最期の抵抗。魂の一撃。
「リバースカード、オープン! トラップカード『ジャンク・ストリーム・アタック!』! コイツは俺っちの墓地に、攻撃力1000以下の機械族同名モンスターが、三体存在する場合にのみ発動出来る! 三体をゲームから除外して、相手ライフに、その攻撃力の合計分ダメージを与える!」
「墓地の、同名モンスター……」
「おうよ! アンタがさっき、俺っちを全員、墓地に送ってくれたお陰で使えるぜ! 喰らいやがれ! 俺っちの全身全霊、魂の一撃を!」
 蒼い燐光に包まれたサイクロイドが三体、光の軌跡を描きながら向かっていく。希望はそれを眺め、その手をデュエルディスクに伸ばし――、
「いっきやがれぇぇぇぇぇぇぇぇっ!」
「……フッ」
 ――苦笑し、その手を止めた。
 ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドッ!!
「っ……かはっ」
 希望LP4000→1600
 頭と腹、脚にそれぞれ直撃するサイクロイドの特攻は、確実に希望のライフを削っていた。
「と……」
「徹……った?」
 信じられない、という様子で俺たちはその光景を見つめる。今まで、鉄壁を誇り、誰にもダメージを与えられなかった希望が、よろめいている。額と、口の端から血を流し、直撃した腹を抱えて。
 しかし。
「これで、終わりだね」
「……ああ」
 サイクロイドLP1200→0
「なっ!?」
「どうして、サイクロイドさんのライフが……!?」
「……『ジャンク・ストリーム・アタック!』は、その効果と引き換えに、除外したモンスターの攻撃力の合計の半分を、ダメージとして受ける。わかるだろう? サイクロイドは文字通り、今の一撃に全てを込めたんだ」
 バキンッ、と何かが壊れる音がする。まさか、と思ってサイクロイドを見る。
「サイクロイド、お前身体が……!?」
「……限界、って奴だな」
 へへっ、とこんな時でも無駄にニヒルな笑いを漏らしながら、サイクロイドの身体が崩壊していく。チェーンが外れ、エンジンが小さな爆発を起こし……。
 ガシャンッ、と大きな音を立ててタイヤの外れたサイクロイドが倒れる。慌てて駆け寄り、その身を剣士と協力して起こす。
「悪い、兄ちゃん。やっぱ無理だったわ」
「そんなこと……」
 サイクロイドは、誰にも出来なかったことをやってのけた。あの真中希望に一矢報いるという形で。
「どーかねぇ……どうにも最期の一撃も、敢えて受けてくれたっぽいぜ? そこら辺どうよ?」
 サイクロイドの問いかけに、希望は幽かに笑う。
「……漢の、魂の一撃だ。それを、無粋なトラップなんかで汚すほど……僕は野暮じゃない」
 そういう希望は最後に伏せられていたリバースカードを黙ってデッキに戻した。コイツ……。
「だが、謙遜することはない。少なくとも君は、僕にライフで受けさせる気にさせた。結果として、僕はこのザマだ。全く……非効率極まりないな」
 これからセツたちや、終焉とも戦わなくちゃいけないのに。そう言って希望は苦笑した。
「よぉ……兄ちゃん」
「……なんだ?」
「まだ、迷ってそうだな?」
 サイクロイドの言葉に、ズキンと胸が痛みを訴えた。そうだ。俺はここに至って尚……。
「……ああ。そうだ。俺は、まだ迷ってる」
「なぁ。なんで兄ちゃんはそんなに迷ってんだい? 俺っちは馬鹿だし、良くわかんねえんだが……ちょっと前までの兄ちゃんなら、きっと迷わなかっただろう?」
「それは……」
「それってよ。兄ちゃんが変わったってことだろう? それなら、自分が変わったきっかけとか、変わった後の自分とか、そーいう奴を考えれば、わかるんじゃねえかなぁ」
「俺が……変わった?」
 俺は、変わったのか? いや、確かに以前とは考え方に違いがあるのはわかる。だが、それは何時からだ? どうして変わった? どう変わった? 誰が……変えた?
「あ……」
 俺は後ろで心配そうにこちらを見ているアテナたちに振り返る。
「そう、か……」
「答え、出たかい?」
「お前の、お陰でな」
「そうかい。それなら……俺っちも、身体張った甲斐が、あったってもんよ……」
 いよいよ限界が近いのか、サイクロイドの言葉が途切れ途切れになって来た。
「サイクロイド……!」
「へ、へへ。心配いらねえよ。所詮……俺っちは機械族。修理すりゃあまた、元通りよ」
「なら、全てが終わったその時に、俺が直々に修理してやるよ」
「今よりカッコ良く頼むぜ」
「それは……保証できないな」
「そう、か……」
 最期に満足そうに微笑んで、サイクロイドはその機能を停止した。
「……待ってろ。必ず俺が直してやる」
 サイクロイドの残骸を横たえ、俺は希望に向き合った。
「よう。悪かったな。態々待って貰って」
 律儀に俺とサイクロイドの会話が終わるまで口を挟まなかった希望に軽く礼を言う。
「さっき言っただろう? 僕はそこまで野暮じゃないよ」
 肩をすくめ、希望は改めて俺に問う。
「それで……君の選択は?」
 俺はその問いに、直接は答えない。
「俺は……」
 思い起こすのは、今日までの戦い。俺たちの物語。
「俺は二度、切り捨てた」
 さだめを守るため。エンヴィーを守るため。俺はアテナたちを切り捨てた。
「だけど、それが間違いだったって、知った。教えられた」
 後悔。さだめにアテナを倒されて。アテナたちと敵対して。俺は後悔ばかりだった。
「俺にとって、どちらが大切かなんて比べられない。ただ、俺は今までそういう生き方しかしてこなかったから……」
 妹を守ることだけを目的に生きてきた。そんな俺には、アテナたちがどんなに大切でも切り捨てるしか出来なかった。それしか、俺の頭にはなかった。
「……けど、今は違う」
 さだめを守ることは当然だ。俺がその役目を放棄することは一生あり得ない。だが……。
「そうだ。俺はもう切り捨てない! アテナたちを。エンヴィーを。……全てを。何かを切り捨てて戦って、勝てるわけがないんだ。俺は……!」
 最初にアテナを切り捨てた時はネイキッドに。次に皆を切り捨てて、ユーキちゃんに。エンヴィーのために切り捨てて、アテナに。
「だから俺は、切り捨てない! 何かを切り捨てたその先に、勝利はない!」
 俺は答えを出した。今までの戦いの果てに、アテナたちやサイクロイドたちによって変わった俺が、最後に出した答えがこれだ!
「……切り捨てた先に、勝利はない、か。本当に君は、僕とは正反対だな」
「なに?」
「例えば……例えば全てを守ろうとした結果、全てを失ったとして。それでも諦めきれず、もう一度……失って。それでも君は、全てを守れと。そう言うのか」
 その時の希望の目は何処までも空虚で、失ってしまったものの大きさを窺わせるものだった。
「切り捨てた先に負けた? いいじゃないか負けたって。その結果何一つ失わず、今こうして僕の前に立っている君は、本当に選択を誤ったのか? それは、正しい選択だったんじゃないか? 僕には、そう思えてならないよ」
「……お前の過去に、一体何があったのか、俺は知らない。お前の言っていることが、正しいのかもしれない。でも俺は……もう、揺らがないさ」
「まぁ、いいさ。もう、今更君たちを言葉だけで止めようとは思わない」
 希望はバッ、と黒いロングコートを翻し、掌を上に向ける。
「さあ……君たちも構えるといい。最終決戦に相応しく、それぞれ戦うべき相手と!」
 希望が指揮者のごとく手を振ると、闇の大地に幾つもの魔法陣が出現する。そこから現れるのはこれまでの戦いで、俺たちがそれぞれ因縁を持つ相手たち。
「更に、だ」
「ぁぐっ!?」
「エリアル!?」
 希望が視線を向けると、突如エリアルが苦しみ出し、その杖に付いていた儀水鏡が妖しく輝く。
「邪法・水鏡写し」
「ぁああぁあああっ!?」
 儀水鏡に映り込むエリアルの姿がいくつもの姿に分裂していく。
「喜ぶといい。君に家族を増やしてあげよう」
 分裂したエリアルの姿が、それぞれ紅い髪の女性二人と異国風の銀髪の女性に変化した。
「『リチュア・エミリア』『リチュア・ノエリア』『リチュア・ナタリア』……リチュアに潜みし終焉の残滓……君たちに晴らすことが出来るかな?」
「お前……!」
「僕は僕の為すべきを為す。君が揺らがぬならば……僕はもう、躊躇わぬ!」
 希望は両手を広げ、宣言する。
「さあ……最終決戦(ラストデュエル)の始まりだ!」
 こんにちは。
 本当にお待たせしましたお待ちかねのサイクロイド回です!
 今回の『ジャンク・ストリーム・アタック』ですが……まあ元ネタは言わずもがな。皆さんご存じのアレです。
 そして希望のデッキのテーマですが……本編中で言われている通り、情報アドバンテージ重視のデッキです。謂わば指名ハンデスのテーマデッキと言うことですね。実は以前セツ相手に使ったデッキは割と本気だったのです。

 そして次回から本当の最終戦。その緒戦を飾るのは果たして……!?
 それでは、悠でした!


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