間に合いました!
いやー……良かった。また間に合わないかと思いました。一日更新、大変だ……よくもまあ、初めの頃はやってましたね。一日一話。
というわけで、今回のメインはルインとユーキちゃん。ボリュームもそこそこあるので、お楽しみください。
第四期「精霊界へ。全ての真実」
番外編「クリスマス特別編 クリスマス本番」
アルカナ~切り札の騎士~
番外編「クリスマス特別編 クリスマス本番」
昨夜の騒動で、眠りに就くというよりは就かされた俺は、心地良い歌声で、徐々に目覚めに導かれた。
「……ルインか?」
「おはよう」
ふわっ、と微笑むルインの手が俺の髪を優しく梳く。これは……膝枕?
「テーマは癒し」
「はは、そう言えば、そんなこと言ってたな」
「……本当は、妹たちの暴走で疲れた貴方を癒すのが目的だった」
「ああ……まあ、思ったほど疲れなかったな」
珍しく、さだめが然程暴走しなかったし。
「けど、銀騎士の折檻があったから、結果オーライ」
「いや、俺が怪我したことを喜ばれても困るんだが」
それじゃ本末転倒だろう。
「わかってる。冗談」
「ホントか……?」
まあ……膝枕自体は心地良いから別にいいけどさ。
「そういえば、昨日から思ってたんだが……」
「なに?」
「お前ら、クリスマスっぽいデートをする気ないだろ」
雪遊びはまあともかく(それでも、クリスマスっぽいわけじゃないが)、甘えたり、決闘したり(これは俺が誘った)癒しがテーマだったり……。
「仕方ない」
「なんで?」
「作者が、クリスマスデートなんてしたことないから思い付かない」
「切実だな」
普通のデートもしたことない癖に。
「というか、メタ会話をするな」
「貴方から振った」
「そうだけどさ」
その時、ぐ~、と俺の腹の虫が鳴った。
「お腹、空いてる?」
「ああ。そう言えば、昨日はアテナの朝飯以外食べてなかった」
さだめは時間になった瞬間に飛び込んできたし、希冴姫とのやり取りから直接エースに眠らされたので、夕食も食ってない。
「任せて」
ルインはそう言うと、俺の頭を優しく下ろして立ち上がった。
「簡単な朝食なら」
「作れるようになったか?」
「ん」
ぐっ、と小さくガッツポーズしてルインが胸を張る。
「私は日々進化する」
「そりゃ楽しみだ」
まあ、上達するまでには多くの(例、レッド男子)犠牲があったりしたらしいが、奴らも本望だろう。……多分。
「手伝いは?」
「……お願い」
少し考えた後、ルインはそう言った。
「珍しいな? アテナだと嫌がることが多いんだが」
「基本的には私が作る。でも、ミスがあったり指摘するべきところを指摘したりして貰わないと上達出来ない」
「なるほど」
相変わらず、見栄は張らない。向上心もあって尚良し、だな。
「でも、余計な手出しはダメ」
「わかってるよ」
ルインの努力の成果だ。野暮はしないさ。
「……えっと」
ルインは若干たどたどしい手つきながらも、幾つかの器具を動かしていく。
「お、ルイン」
「あ、ぜいご取らなきゃ」
ルインはあっさりと俺が指摘しようとしたポイントに気付き、自分で鯵のうろこを取り除く。
その後も、ところどころ危なっかしかったが、終わってみれば致命的なミスは一つもなく、立派な朝食を完成させた。
「……どう?」
「うん。中々美味い。立派なもんだよ」
ほんのちょっと前まで器具の名前も覚束なかったことを思えば大進歩だ。
「あーん」
「う……まあ、いいか」
ルインが差し出してきた卵焼きを口に入れて貰う。
「どう?」
「美味いよ。味付けも前より丁度良くなったし」
以前は薄かったり濃すぎたりと不安定だったのが、随分と安定した味付けだ。
「よかった」
俺が褒めると、ルインは安心したように胸を撫で下ろす。
「……口移し」
「調子に乗るな」
ビシっ、と軽くチョップを入れる。
「……痛い」
「ったく……」
「じゃあ……」
「それよりルイン、この食卓見て、なんか気付かないか?」
また「あ~ん」とやろうとしていたルインを押しとどめ、俺は食卓を指差した。
「……?」
小首を傾げて食卓を眺めるルイン。
「気付かないか?」
「……わからない」
見当もつかないらしく、不思議そうに俺を見る。仕方ないので苦笑しつつ教えてやる。
「お前の分がないだろ」
「……あ」
初めて気付いたらしく、少し眼を見開いて声を漏らす。
「ったく、俺の分を用意するのに一杯一杯で、自分の分は忘れたのか?」
「……面目ない」
「いや、それだけ俺のこと考えてくれてたんだから、文句はないよ」
俺は席を立ってキッチンへ向かう。
「と、いうわけで、これはお礼だ」
「あ……」
ルインが作っている横で、こっそりと作っていたルインの分の朝食を並べる。
「これ……」
「材料からして、一人分なのはわかったからな。作っておいた」
折角なので、メニューは全く同じ。ご飯に味噌汁。焼き魚に卵焼き。
「……ズルイ」
「え?」
喜ばれるかと思ったら、何故か返ってきたのは不満そうに、拗ねたように唇を軽く尖らせたルインの顔。
「貴方は男なのに、気が利き過ぎ」
「えーっと……」
そんなこと言われても……。
「……みまみま」
ルインは俺の作った朝食をみまみま食べて、また一言。
「……私のより美味しい」
「いや、その……」
「私のより美味しい」
「あー……」
「私のより……」
「いやまあ、ほら。俺はもっと昔からやってたから」
すっかり拗ねてしまったらしいルインの背中に声をかける。
「でも……」
「ふぅ……」
本格的に落ち込んでしまったらしいルインを、後ろから軽く抱きしめてやる。
「口移しは無理だけどな……」
箸を持ち、ルインの肩越しに卵焼きを口に運んでやる。
「これで、精一杯だからな…………あ~ん」
……この台詞を、自分から素面で言うことになるとは。
「……あ~ん」
パクっ、もぐもぐ……。
「どうだ?」
「……やっぱり、美味しい」
「そうか? それな……」
「?」
「お前の作った卵焼きなんだ」
「……え?」
パッ、と驚いたように振り向くルイン。
「ほら」
俺は皿に残った卵焼きを見せてやる。
「本当……」
呆然とした表情で二つの卵焼きを見比べる。
「こんなもんはな。気の持ちようだ」
ポンポン、とルインの頭を撫でながら俺は言い聞かせる。
「ルインの料理、美味かったぞ」
「……嘘」
「嘘じゃない」
「でも……」
「俺は、嘘は吐かない」
「……うん」
暫しの躊躇いの後、ルインは小さく頷いた。
「やっぱり、貴方はジゴロ」
「やめてくれ。今のはかなりクサかったって自覚はあるんだ」
態勢も態勢なので、頬が赤くなる。それだと悔しいので、少しくらいは反撃させてもらう。
「ルインだって、結構子供っぽいところあるじゃないか。拗ねてるルインは、中々可愛らしかったぞ」
「う……」
ルインの頬も赤く染まる。二人して顔を赤くしつつ、その後のデートを楽しんだのだった。
「最後はユーキちゃんか」
結局、ルインは時間一杯までは使わず、そこそこで自ら帰って行った。
『私は十分楽しんだ。貴方は次の時間まで、ちゃんと休んで』
その気遣いをありがたく受け取り、俺はユーキちゃんが来るまでの束の間の休息を楽しんだ。
「……こういうところで好感度稼いでるんだよな。ルインは」
わかっていても、嬉しいものだ。
「ルインさんは優しいから~」
「来たか。ユーキちゃん」
「うん。今日はよろしくお願いします。セツくん」
ぺこり、と頭を下げてくるユーキちゃん。
「ああ、こちらこそよろしく」
まあ、ユーキちゃんなら大丈夫だろう。ルインに休ませても貰ったし、元々ユーキちゃんは無茶言わないしな。
……と、思っていた時期が、俺にもありました。
「うおおおおおおおっ!?」
「御堂~!! 覚悟!」
「テメエコラ御堂~!」
「すまん! ユーキちゃん! もうちょい付き合ってくれ!」
「わ、わかったよ~!」
ユーキちゃんも俺と一緒に走っていた。確かに、ユーキちゃん自身は特に無茶を言わなかった。だが……。
「いい加減にしろこの男の敵~!」
「ルイン様の手料理を~!!」
「っていうか昨日お前何してた!?」
ユーキちゃんとのデートは外でしていたのだが、その所為で眼を付けられてしまったのだ……あの、野獣たちに。
「アテナ様は何処だ!? 隠すとタメにならんぞ!」
「知らん! 今日はアテナと会ってない!」
「なら昨日か!? 昨日、俺たちの知らないところでよろしくやってやがったのか!?」
どうもコイツら、カップル狩りだか何だか知らんが昨日は巡回に出ていたらしく、レッド寮前で雪だるまを作っていたアテナの姿は見ていないらしい。しかも、滅茶苦茶早朝から眼を血走らせてパトロールしていたのが裏目に出たのだろう。アテナがレッド寮に来ていたことすら知らなかったらしい。
「だからって、今日来るかコイツら!?」
「わ、わたし、そんなに、持久走とか、ふぅ、ふぅ……得意じゃ、ないよ~……」
「くっ、ユーキちゃんが限界か……!」
場所はレッド寮近くの断崖。昨夜希冴姫と決闘した辺りだ。
「……ええい! こうなったら……」
ちらりと後ろに迫るレッド男子(数名イエローやブルーも)に眼を向け……覚悟を決めた。
「ユーキちゃん!」
「ふぅ、ふぅ……え?」
「すまん!」
一言謝り、かなり足にきているユーキちゃんを思い切って抱えあげる。
「え、え? きゃあっ!?」
「でぇりゃああああああああああっ!!」
『なにぃ!?』
後ろから、追手の生徒たちが驚愕する声が聞こえてくる。
「せ、せ、せ、セツくん!?」
腕の中からユーキちゃんのテンパった声が聞こえてくる。
「うおおおおおおおおっ!?」
俺は断崖を、ユーキちゃんを抱えて滑り降りていた。
「だあああああっ!」
崖の僅かな突起に足をかけ、勢いを殺しつつ、崖を滑り降りる。
「ぬああああっ!?」
流石の俺もこんな馬鹿げた行為をしたのは二回目(学校の屋上からエスケープしたことはある)だし、しかも今回はユーキちゃんを抱えているので全く余裕がない。
「ずあっ!?」
履いていたスニーカーの踵がメリメリッ、と音を立ててちぎれた。
「ぐはっ!?」
最後は姿勢を崩して、崖下に尻餅をつく。俺はそのままバウンドして、海中に真っ逆さま。最後の意地でユーキちゃんだけは地面に寝かせる。
「きゃわっ!?」
すまん! ちょっと痛いかもしれんが我慢してくれ!
「ぷはっ!」
さ……。
「さむっ!?」
ま、真冬の海……舐めていた。
「や、ヤバい……」
て、手足が悴んで……。
「せ、セツくん手!」
「うくっ……」
震える手をユーキちゃんに伸ばす。
「よい……しょっ!」
ユーキちゃんの手を借りて、海中から上がる。
「す、すまんユーキちゃん……けけけ怪我は……」
「いいから! わたしは大丈夫だからセツくん! 寮に戻らなきゃ……」
「お兄ちゃん!」
「セツ!」
騒ぎを聞きつけたのか、さだめやアテナたちもやってきた。
「我が運ぼう。人一人運ぶなら、我が一番速かろう」
手足が悴んで動かない俺を、エースが背負う。
「冷たっ!? うぐ……」
俺の身体が思った以上に冷たかったことにエースが驚く。
「ひゃっ!? こ、こら! 首筋に唇を寄せるな!」
そんなこと言われても、身体が動かないのでどうしようもない。
「そ、な……」
「う、動くな!? く、くちっ、唇が!?」
「こらそこ! こんな状況でなにラブコメってるの!」
「そんな羨ましい状況になるなら、わたくしが運びますわ!」
そんな、相変わらずのメンバーに囲まれながら、俺はレッド寮の希冴姫たちの部屋に運び込まれた。
「仕方……ないよね?」
暗転していく意識の中で、ユーキちゃんのそんな声が聞こえてきた。
「ん……」
運び込まれてすぐに意識を失った俺が眼を覚ましたのは、気を失ってから一時間程度経った後だった。
「なんだ……?」
身体があったかい。海に落ちて冷え切った体を、何かとても暖かいものが包み込んでいた。
「起きた……? セツくん」
「ユーキちゃん……?」
「わっ! こ、こっち見ちゃダメっ!」
耳元から聞こえたユーキちゃんの声に、振り向こうとしたが、慌てたようなユーキちゃんの声と共に顔が正面に固定された。
「ユーキちゃん、なにして……っ!?」
そこで、気づいた。ユーキちゃんの声が、妙に近くから聞こえたことに。そして同時に、身体を包んでいる、この暖かさの正体に。
「ユーキちゃ、まさっ!?」
動揺のあまり、言葉が最後までしっかり発音できなかった。
「しっ、下着! 下着は……着てるから~」
「い、いやそれ……」
要するに、下着姿なんだろ……!?
「だ、だってセツくんすっごく身体が冷たくて……あ、あっためるのは人肌がいいって……だから~……うぅ」
ユーキちゃんの表情はここから見えないが、可哀そうなくらい真っ赤になっているであろうことは容易に想像がつく。そして、それは多分、俺も同じなのだ。
「だからって……これは、不味いだろ……」
素肌に直接感じる以上、俺も半裸なのだ。それくらいは、回転が鈍くなった今の頭でも理解できる。いや、出来てしまう。
「セツくん……」
耳元で聞こえる、ユーキちゃんのこの切なげな声もアウトだ。守護神エクゾードクラスの硬さを誇る俺の理性だって、無敵じゃないんだ……!
「あっそ、そうだ! さだめ、さだめたちはっ!?」
アイツらが、特にさだめが、こんな状況を見過ごす筈がない。両刃の剣だろうが、今はアイツが来てくれることを祈るしか……。
「さだめちゃんは……来ないよ」
「な……」
なんで……。
「今は……わたしの時間、だから~」
「り……」
理由になってない……っ!
「ゆっ、ユーキちゃん! も、もう大丈夫、暖まった! 暖まったから……!」
兎にも角にも、この状況から脱しようと、俺はすっかり火照り始めた身体をアピールして解放を促す。しかし……。
「だめっ!」
「だ、だめって……」
思いつめたような声で抱きとめられる。押し付けられる胸。感じる鼓動が俺の理性を溶かしていく。
「セツくん……」
「お、俺はもう暖まったから……だから」
苦し紛れに繰り返したその言葉は、しかし。
「わたしが……寒いの」
「っ!」
あっさりと、跳ね除けられた。
どくん、どくん……。
トクン、トクン……。
鼓動が重なる。混じり合う。寒いと言うユーキちゃんの吐息は、しかし確かな熱を帯びていて……。
「ユーキ、ちゃ……」
「セツ、くん……」
お腹に回されたユーキちゃんの腕が、徐々にその高度を上げて行き……。
「あjf@おあいhふあひゃづしあ「dヴぁsヴぃでゃshv~~~~~!!」
言葉にならない絶叫に、全ての空気が弾き飛ばされた。
「さ、さだめっ!?」
「さだめちゃん!?」
「くぁwせdrftgyふじこlp;@:」
相変わらず意味不明の言語で叫び続けるさだめの全身が真っ赤だった。興奮し過ぎて全身の毛細血管が破裂しているのか。
「……さすがにやり過ぎ」
「あ、ルインさん……」
思わず俺と離れたユーキちゃんに、ルインがコートをかけていた。その声には、珍しく険が篭っていて、確かな怒りを感じさせる。
「コー……ホー……」
「か、完全にダークサイドに堕ちてらっしゃる……」
充血し過ぎて赤い眼を光らせて、さだめが深く息をする。
「セツ……」
「あ、アテナ……」
「流石に……それはダメです」
「はい……」
静かに、しかし初めて聞くほどに冷たい声色のアテナに身を縮めて返事をする。スッ、と首筋に冷たい感触。
「……辞世の句を詠むが良い」
「え、エース……さん?」
「は、は、は……破廉恥な……くれいじー、だ」
動揺し過ぎてクレイジー、がひらがなになっている。
「お兄tyン……」
「さ、さだめ……」
ようやく多少発音がマシになった(それでも発音し切れてない)さだめがその手を俺に伸ばしてくる。
「うぐっ……」
その手が触れた頬が赤く染まる。掌が血塗れになっていた。
「キ、キキキキキ……」
「さ、さだめさ~ん……?」
完全に眼がイってらっしゃる我が妹に呼びかける。
「キュケーーーーーーーー!」
「ぎゃあああああああっ! トランクスを剥ぐなぁぁぁぁ!」
イっちゃった眼のまま、唯一の聖域に手をかけるさだめから逃げる。
「くぁwせdrftgyふじこlp;@:」
またしても意味不明になったさだめの猛攻を掻い潜りながら、俺はやっぱ最後はこうなるのか、と半ば諦観の溜息を吐くのだった。
こんにちは。
本当はこの後に、全員でパーティを書く予定だったんですが、尺と時間の都合で全面カット。非常に残念です。ルインとユーキちゃんがスペース取りすぎました。
ちなみに、気付かれた方もいらっしゃるかもしれませんが、今回、書くヒロインにはそれぞれ別々のテーマがありました。まずアテナは「ほのぼの」或いは「ほのラブ」。次にさだめが「ギャグ&シリアス」。希冴姫が「シリアス」。ルインが「甘々」。ユーキちゃんが「お色気」です。ユーキちゃん……。
そして、最後のシーン希冴姫が出てませんが、希冴姫は耐えきれずに気絶してました。ウブなので。
それでは、悠でした!
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