第十四話 全校集会
毎月月末にある全校集会ではその月にあった大会の結果の発表及び各種受賞報告が行われる。
例年四月の全校集会では基本的に二年生、三年生だけが対象となるのだが今年は違うらしい。
一年生でいきなり表彰される奴が居るなんてな、優秀なやつも居るもんだ。
やはりAクラスの連中だろうか。
「一年Fクラス、神無月君、壇上に登って下さい」
……。
ぱーどぅん?
え? 俺?
なんか司会の先生が俺の名前を呼んでる気がするけど気のせいだよな?
「神無月君、居ませんか?」
「あ、はい!!」
訳がわからないまま俺は壇上へと足をすすめた。
周りの視線が痛い。
なんで三人もいるんだ?とか、誰が神無月なんだ?なんて噂する声が聞こえてくる。
そうだよね、シスとリコって普通は人にしか見えないもんね……。
混乱する頭で校長先生の前に立ち、背筋を伸ばす。
「なんとか間に合ったのでこの席で表彰することになりました。間に合うかどうかギリギリだったので急な話となって申し訳ありません」
「い、いえ。しかし校長先生、一体何なんです? 表彰されるようなことはしていないと思うのですが」
「はっはっは。謙遜は美徳ですが信賞必罰は組織を維持する上で必要なことです。遠慮なく受け取って下さい」
いや、本当に何かわからないんですけど。
「さて、知っている生徒も居ると思いますが」
あっけにとられている俺を放置して校長は演説を開始した。
曰く、その身を顧みない勇敢な活躍で多数の死者発生を未然に防いだ。
曰く、レベルⅢダンジョンのボスを負傷者を多数抱えた状態で単独撃破。
曰く、レベルⅠスタンピードを単独で殲滅。
「以上の功績を表して、剣付き旭日章の授与が先程決定しました」
まばらに起こる拍手と全体に広がる困惑。
俺も困惑してしまう。
「なお、この章の推薦は生徒会からのものであると付記いたします」
え、生徒会?
生徒会席を見ると神宮寺先輩が首肯を返してきた。
あんたかっ!
「私も当校からこの様な栄誉を受ける生徒が出たことを誇りに思います。他の生徒諸君も彼に負けないよう、研鑽に努めて下さい」
なんとか笑顔を取り繕うものの、背中では汗が止まらない。
何故こんなことになってしまったのだろうか。
「さて、神無月君。受章おめでとう」
「ハイ、アリガトウゴザイマス」
「勲章そのものは後日改めて授与するが、めでたいことなので早く伝えたいと思ってね」
「ハイ、アリガトウゴザイマス」
「ではこれからも変わらぬ活躍を期待するよ」
「ハイ……」
俺は混乱する頭で降壇し、なんとか自分の席にたどり着くことに成功した。
混乱していたおかげでAクラスやBクラスからの刺すような視線をあまり気にしなくて済んだのは不幸中の幸いだったかもしれない。
「悟、大丈夫……?」
「顔、真っ青やで。暗くて見えんけど」
「だいじょぶ……」
ふぅ、はぁ。
座るとちょっと落ち着いてきた。
気がつくと壇上では先輩達の表彰が始まっており、俺への注目は既になくなっているようだった。
冷静になると今回の件はとても助かったのではないだろうか。
たしか勲章には年金がついていたはず。
最下級とは言え、生活の足しにはなるはずだ。
「うっし、なんとか回復」
「よかった、保健室に連れて行くか迷ってたのよ?」
「心配かけたな、少し驚いただけだから」
「少しとは思えんかったけどなぁ」
うん、まぁちょっと強がって見ただけだしね。
「それではこれで全校集会を終わります。各自教室に戻りホームルーム後は速やかに下校して下さい」
司会の先生の言葉で体育館には喧騒が広がった。
それと同時に俺の周りへクラスメートが集まってくる。
「神無月すげーじゃん!」
「剣付き旭日章って高校生でも貰えるんだ!?」
「なんで生徒会が推薦してんの!?」
「俺にも生徒会のバイト紹介してくれ!」
「魚取り放題ってほんと!?」
「ちょ、まて、落ち着いて」
一気に聞かれても答えられない。
一つずつ聞かれても答えられる内容はないが。
だって俺もなんでこうなったかわからないんだし。
あと関係ないこと聞いてくんなっ!
「ほら、お前達。早く教室にもどれ」
「えー」
「少しくらいいいじゃん、如月先生ー」
「ほぅ、つまりお前達は閻魔帳への記載を希望するということだな?」
「げげっ、それは勘弁っ!」
「わかったらさっさと行け。神無月、お前もだ。受章したからと言ってあまり調子にのるなよ?」
「はい……」
別に好きで受章したわけでもないし、調子に乗っているつもりもないのだが。
まぁこの場は助かったので良しとしよう。
「神無月君、一緒に行こっ」
「今日も弁当だろ? またおかず交換しようぜ」
「甘い卵焼き、作ってきましたから……」
体育館を出ようとした所で綾小路さんのグループに声をかけられた。
いつもの昼ごはんのお誘いだ。。
「また神無月が女子と遊んでるよ」
「あいつ女好きだよなー」
「だから精霊も人型なんじゃね?」
「かもなー」
うるせぇ、俺も好きで女子とばっか話してるんじゃないっての。
流石に同じクラスの奴は事情を知っているからそんなこと言わないが、他のクラスの奴は好き放題言ってくれる。
「あはは、なんか酷い言われようだね?」
「別に気にしちゃいないけどさ」
「それでこそ男だな!」
「寺門さん、持ち上げても何も出ないぞ? ……、今日は魚肉ハンバーグ何だけど、要る?」
「要る要る!」
「神無月君、ちょろすぎ……」
佐倉さん、意外ときついよね。
彼女達のガードのお陰で俺は特に引き止められることもなく無事、教室に着くことが出来たのだった。
やっぱ持つべきものは友達だな。
……、頑張って男友達増やそ……。
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