表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/110

第十一話 魚を取りに行こう

 神宮寺先生達に別れを告げ、俺達は一度昼食を取りに寮へと戻ることにした。

 たまの休みだし外食したいところではあるが、予算がないので仕方がない。


「一度靴に履き替えないと寮へ行けないってのはめんどくさいよな」

「そうね」

「ちょっちめんどいやんなー」


 そんなことをシス達と愚痴りながら靴に履き替え、昇降口を後にする。


 それにしても気をつけてと言われても何に気をつければ良いのだか。

 死なないようにとか?

 そんなバカな。

 早々即死するような自体に遭遇するなんてありえないだろう。

 そもそも幸運があるのだから。


 ひゅんっ! バリン!


「……」

「すみませーん、大丈夫でしたかー?」

「あ、はい……」

「悟、大丈夫? 危ないわね」

「ますたーは大丈夫やで。うちが居るもん」


 野球のボールが飛んできて俺のすぐ脇を抜けたかと思うと後ろのガラスに直撃。

 窓ガラスは大破していた。


 え、もしかして今のって即死する内容だったりする?


 ガシャンッ!


「あぶねっ!?」

「大丈夫ですかー?」

「えっと、大丈夫……?」

「ますたー……」


 今度は植木鉢が降ってきた。

 幸運、仕事しろよぉ……。

 いや、していたからこれで済んだのか?

 それとも不幸の改変?

 それとも即死回避?

 くそ、わからないぞ!?

 とりあえずこの能力を当てにするのはやめておいたほうが良いだろう。

 気が付かない所で残機を使ってる可能性あるし。


「リコ! ほんとに能力は幸運なんでしょうね!?」

「ほんとやし! うち嘘ついとらんもん!!」


 幸運の前に一文字余計なものが付いてるんじゃないよな?

 少し不安になってしまう。


「ますたー! 信じてや!?」

「おぅ、信じる信じる。とりあえず飯食ったら魚取りに行くからそこで実力見せてくれ」

「おおきに! 大船に乗ったつもりで期待しといてや!」

「泥舟じゃなければいいんだけどね」


 ちょっとシス、言い過ぎじゃないか?

 気持ちはわからないでもないけどさ。


「シスの意地悪……。ぐすっ……」

「あー、ごめんごめん、言い過ぎたわ」

「わかればええんや!」

「騙したの!?」

「何のことやろなー?」

「むきいいいいい!!」


 とりあえず、腹減ったし早く飯食いたいな。



 昼食後、自転車に乗って俺達は海に来ていた。

 リコが籠に乗り、シスが後ろの荷台に腰掛けての三人乗り。

 普通なら怒られるところだが前後の二人は人じゃなくて精霊だからセーフセーフ。


「うっみー!!」

「海やー!」

「海だなぁ」


 四月の海はまだ風が少し冷たい。

 幸い空には雲一つない青空が広がり、暖かな太陽の日差しがあるおかげでそれほどでもないが。

 砂浜に反射する光が少し眩しい。

 風もそこまで強くなく、沖にある島の神社の鳥居までよく見えるほどに天候には恵まれていた。


「それで、リコ、どうやって魚を捕まえるつもりなんだ?」


 リコがそんなもの必要ないと言うので釣具は一切持ってきてない。

 唯一持ってきたのは魚持ち帰り用の折りたためる保冷バッグくらいだ。

 これで『魚を取りに来ました』だなんて言ったら魚屋を紹介されるだろう。


「ふふん、うちにおまかせやでー!」


 彼女はそう言うと俺達の一歩前へと進む。


「幸運発動! お魚さんいっぱいきてや!!」


 えーっと……?

 もしかして、幸運だけで魚取ろうとしてます?

 いや、それはいくらなんでも。


「来たで!」

「え? マジ?」

「ますたー、保冷バッグ開いて!」

「お、おぅ!!」


 ビチビチビチッ!!


「うわっ!?」


 砂浜で立つ俺の持つ保冷バッグ目掛けて魚が飛び込んでくる。


「どやっ!」


 真面目にすごいです。

 魚を買うのが馬鹿らしくなるな。


「ぐぬぬぬ……」

「これでうちが役立たずじゃないって証明できたやんな?」

「元から役立たずなんて思ってはいないけど、助かるよ。ありがとう、リコ」

「へっへー」


 胸を張るリコの頭をなでてやる。

 今日は魚パーティーだな!


「ん? あの黒い影は?」

「なんか結構大きい?」

「ああ、この魚はあれに追われて海から飛び出してきたのか」

「そうみたいね。それにこっちに向かってきてる?」

「あれが取れれば食いでがありそうでいいよな」

「流石に食べきれんやろ」

「それもそうか」


 そう言いながら笑いあっていたのだが。

 その黒い影は砂浜、もっと言うと砂浜に立っている俺達の方にまっすぐ突っ込んできて……。


「こいつモンスターじゃないか!?!?!?」

「ええ!? なんでダンジョンの外にモンスターが居るのよ!?」

「スタンピードか!? しかし近くにダンジョンなんて無いぞ!?」

「と、とにかく倒さんと!!」

「くっ、システムウィンドウ!!」


 俺は慌ててシステムウィンドウを展開し、突っ込んで来たサメ型モンスターの攻撃を防ぐ。


「他にもいっぱい来る!!」

「なっ!」


 システムウィンドウを多重展開しモンスターの波状攻撃を防ぐも防戦一方だ。


「敵が、速すぎて、補足できない!!」

「く、ランクアップしたばかりでウィンドウの動きが遅い……っ!!」


 ランクアップ前、覚醒度SSSの状態であれば高速で動き回るモンスターにウィンドウをぶつけられたかもしれないが、覚醒度Dの現在ではかなり難しかった。


「リコ! 俺のポッケの中に携帯入ってるからそれで神宮寺先輩に連絡してくれ! 緊急通話ボタンで直通になってる!」

「わ、分かった!」


 リコが神宮寺先輩に連絡し援軍の要請を行っている中、俺は必死にモンスターの襲撃を捌き続けた。


「ますたー! 後三十分くらいで援軍が来るって!」

「三十分!?」


 くそ、日曜日だったのが祟った(たたった)か。

 スタンピードを迎撃するための戦力を集めるのに時間がかかるのだろう。

 どうすれば、どうすればいい?

 このままだとジリ貧だぞ。


「悟! 更に追加が来てる!!」


 ジリ貧どころかドカ貧じゃねーか!?

 焦る俺の視界の隅に河口が映る。

 もしかしたら、いや、でも……。

 くそ、やれるかわからないが、やるしかないか。


「シス! リコ! 河口へ移動するぞ!!」


 俺は二人に指示を出すとモンスターをひきつけながらゆっくりと河口へ向かって移動し始めた。

お読みいただきありがとうございます。

ブックマーク、評価、感想等いただけると励みになります。

あと↓のランキングをポチってもらえるとうれしいです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ