浩二のヘラブナ釣り好きは、クラスのだれもが知っていた。そして、徳次郎のことも。
ふたりでヘラブナを釣っていた。
時期は、冬休みの前半になっていた。僕は、徳次郎と一緒にヘラブナを釣りに出かける。
今日も出かける。
クリスマスの前日、僕は、公園で徳次郎と会った。
「なあ、明日、ヘラブナ、また釣りに行かないか?」
「ああ、いいよ。てか、そろそろ行きたいと思ってたんだ。お前と俺で競争しないか?」
「もちろん。久しぶりにライバル関係だな。」
僕達の、ヘラブナ釣りの競争は、冬の寒さをも吹き飛ばす、恒例的行事になっていたのだ。
その日の午後、僕は、徳次郎と待ち合わせの場所で、徳次郎が来るのを待っていた。それは、とある田舎のバス停だった。
「浩司、遅れてごめんな。たった今、じいちゃんが亡くなったんや。」
「お・・・お前のじいちゃんがか?」
「ああ。」
「おい!そんな時に釣りしてる場合かよ?」
「えっ!」
徳次郎は言いにくそうに言った。
「だって・・・俺、浩司との約束も大切だと思ったから・・・・・・。」
「徳次郎・・・・・・。」
「でもな、徳次郎、お前さあ、やっぱり、お前のじいちゃんの面倒みてやれよ。」
「ありがとう浩司・・・。」
「なあに、大したことじゃないさ。それに、お前のじいちゃんにはおれも世話になったしな。」
「ありがとう。」
徳次郎は、泣きそうな笑顔でこたえる。
僕は、笑顔でバス停から徳次郎に手を振った。
「ありがとうな。」
徳次郎は僕に、もう一度言った。誠に面目ないと思ったのだろう。
しかし、僕は気にするつもりはなかった。
徳次郎は、そのまま、行ってしまった。
僕は、ひとりで、ヘラブナを釣りに行くか迷ったが、やめることにした。
だって、ひとりで行っても、面白くないし、第一、徳次郎がいないと、おれの場合釣りにならない。
だから、家に帰るのだ。
しかし、自然と涙が零れてしまった。だって、徳次郎ともっと釣りがしたいから・・・・・・。
だから、ついつい悲しくなってしまう。でもこんなことじゃいけない。もっと、強くなりたい。そう思っているのだけれど・・・・・・。
しかし、しょうがないよな・・・・・・。僕は、思い直す。
徳次郎と二人で釣りをしてきたのは、ずっと前からだ。なぜ始めたのかは・・・・・・恐らく二人とも釣りが大・・・大・・・大・・・好きだったからだと思う。
それは今でも変わらない。だから、今度また誘ってみよう。都合が悪かったのなら仕方ないよな。
だから・・・今、釣りをするのだ。ヘラブナを釣っているときは、一人でも一人じゃないんだ。
そう、僕には・・・・・・徳次郎という大事な友がいる!
完 |