表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
110/123

第110話 貧血

「桃子ちゃん、ありがとう」

 聖君と、聖君のお母さんからお礼を言われ、私はお店をあとにした。それから、初めて桐太の働いているお店に寄った。


「あ、桃子」

 すぐに桐太が気がついた。桐太はサーフィンショップで働いていて、私は買うものもないしって今までずっと、来なかったんだよね。

「これ、どう?桃子に似合うと思うよ」

 桐太はTシャツを持ってきた。


「あ、ほんとだ。可愛い。あ、こっちのトートバックも可愛いし、このストラップも。こんなのも置いてるんだ」

「そうだよ。だから前から店に寄ってって言ってたのにさ」

 なんだ。サーフィンのものしか、置いてないのかと思った。


「誰?桐太の彼女?」

 店の奥から、金髪に染め、真っ黒に日焼けした男の人が出てきた。

「あ、店長、違うっすよ。聖の彼女です」

「え?聖の?」


 聖君のこと知ってるんだ。

「へ~~、初めて会ったよね。へ~~。こんな可愛い彼女なんだ。そりゃ、他の子なんてどうでもよくなるよな」

「え?」

 何?何、何?


「あ、俺の妹、思い切りふられたからさ~~」

「え?そうなんだ、店長の妹さんって、確か俺より一個下」

 桐太がそう言った。

「聖とは中学が一緒。中学から片思いしてて、高校も追いかけていって、卒業前にチョコあげて、見事玉砕」

 店長さんがそう答えた。


「え?チョコを…?」

「俺の妹だと知りながら、ふってくれたからな~~。彼女がいるからってさ」

「聖君と知り合いなんですか?」

 私は聞いてみた。


「小さい頃から知ってるよ。海でよく一緒に泳いだし」

「そうなんですか」

「あいつ、すげえうまいじゃん、泳ぐの。サーフィンもすればいいのに、あまりはまんなかったんだよね」

「海の中が好きだって、言ってました」


「そうなんだよ。そういえば、この前来て、すげえ嬉しそうにスキューバのライセンス取れたって言ってたっけな」

 へえ。そんなに仲いいんだ。

「君は?スキューバするの?」

「はい。来年ライセンス取りたいなって思ってます」

「そうなんだ。へえ」


「店長、このTシャツ、Sサイズってなかったっすか?」

「あ~~。それはMしかないな」

「桃子だったら、Sだよな」

「桃子ちゃんっていうのか。名前まで可愛いんだな~」

「店長、あまり桃子にかまうと、聖怒りますよ。あいつ、ヤキモチやきだから」


「え?そうなの?あいつ、女の子にはクールだけど」

「桃子には、まったく違うんすよ」

「へえ。一緒にいるところ、見てみたいな」

「それより店長、サイズ」

「Sサイズ、頼んでおくよ」


「え?でも、悪いです」

 私が恐縮してそう言うと、

「いいよいいよ。Sサイズも何枚か入れておくか」

と店長さんが、にこりと微笑み、そう言った。

「じゃ、俺注文しておきます」

 桐太は、すぐに店の奥に行き、電話をしていた。桐太、まじめに仕事してるんだな。


「そっか~。君が聖の彼女か~~」

 ぽつりとそう、つぶやかれた。

「ずいぶんと可愛い彼女なんだな~~」

「……」

 どう答えていいのやら…。


「じゃあさ、Sサイズのが来たら、メールするよ」

 桐太が店の奥から来て、そう言った。

「うん、ありがとう。それじゃ、もう行くね」

「ああ。じゃあな」

「また、来て、桃子ちゃん」

 店長さんから、そう言われた。私はぺこりとお辞儀をして、その場を去った。


 そのまま、海岸沿いに駅まで歩いた。海を見ると、サーファーが何人かサーフィンをしている。今朝、雨が降り、今は曇っているけど、こんな天気でも関係ないんだな。

 海は解禁になっているけれど、天気もよくないし、波もあるからか、海水浴に来ている人はほとんどいない。


 また、夏が来た。聖君に出会ってから、もう3度目の夏。そんなに月日がたったんだな。

 歩きながら、今年の夏はずっと一緒にいられるって思うと、私はうきうきで、心がはずんでいた。


 大学が夏休みに入り、聖君はサークルで伊豆に泊りがけの合宿に行った。その間は、お店の手伝いは、杏樹ちゃんや、お父さんがすることになっていた。私も手伝いに行こうと思っていたけど、ここのところ、なんとなく調子が悪く、貧血気味で、気分も悪かったので行けなかった。

 もともと低血圧で、朝弱いけど、最近起きるのも体がだるく、食欲も落ちている。それに、たちくらみまでする。


「もう、夏ばてかな」

 そう母に言うと、

「鉄分のあるもの、いっぱい食べなさいよ。あなた、ただでさえ、貧血になりやすいんだから」

と、言われてしまった。


 せっかくの夏なんだから、元気でいなくっちゃと思い、母に言われたように、ほうれん草だの、レバーだのを多く食べるようにした。

 でも、やっぱり、なんとなく変だ。

 体調がすぐれなくて、お店の手伝いにいけず、ごめんなさいと聖君のお母さんに電話をしたら、こっちは大丈夫だから、しっかりと休んで元気になってねと、そう言ってくれた。


 それにしても、4泊5日の合宿。そんなに長い間、麦さんと一緒にいるのかと思うと、胸が痛む。それに昨日は、合宿先からメールもなかった。それだけでも、不安になる。

 菜摘が、聖君がいなくって寂しいだろうと、遊びに来てくれて、そんな話をしたら、兄貴にもっとちゃんと桃子にメールするよう、私からもメールしておくよって言ってくれた。


「い、いいよ。きっとなかなか時間がないんだよ。周りに人がいると、聖君、メールできないみたいだし」

「でもさ、寝るちょっと前とか、一人の時間作ってメールするとか、できるでしょ」

「1年だし、きっと、いろいろと気を使ってるのかもしれないし」

「兄貴が?」


「聖君って、けっこう人に気を使うと思うもん」

「桃子にも気を使えばいいじゃない。寂しいから浮気しちゃうってメールしたら?」

「まさか!そんなこと思ったこともないのに」

「そういえば、昨日は桐太が来てたんでしょ?」


「ああ、お店が休みだし、前に頼んでおいたTシャツが届いたからって、わざわざ持ってきてくれた。それに聖が今、合宿行ってて、どうせ暇だろって」

「桐太ってさ、やけに桃子に優しいよね」

「友達だから」

「ふ~~~ん」


 菜摘の目つきは、いかにも怪しいって感じで私を見ていた。

 本当は、れいんどろっぷすに行っても、聖君はいないし、寂しいのは桐太なんだよね。それで私に会いに来て、聖君のことを話したいんだよね。でも、これは菜摘にも言えないことだ。


「そういえばさ、桃子、顔色悪くない?」

「え?」

「青白い顔してない?」

「うん。最近、あまり食べられなくって」

「なんで?」

「夏バテだよね、きっと」


「8月には、泊りがけで、お店手伝ったり、伊豆にだって行くんでしょ?元気にならなきゃ」

「そうなんだよね」

「ま、きっと兄貴に会ったら、すぐに元気になっちゃうかもしれないけどさ~」

「そうだね」


 これって、もしかして聖君に会えない寂しさや、麦さんのことが気になって、不安になってるそんな精神的なものなのかな。

 

「今年、水着と浴衣新調しようと思って。桃子も買いに行かない?」

 菜摘が聞いてきた。

「水着、去年買ったの、まだまだ着れるし。でも、浴衣はもう少し、大人っぽいのがほしいな」

「え?桃子なら、可愛いのが似合うよ」

「…。子供になっちゃうもん」

「大丈夫だって~~」


「花火大会、1日だよね?それまでに浴衣買おうかな」

「うん。私、今ちょうど生理だから、よかったよ。その日にぎりぎりあたらなくって。桃子は、大丈夫なの?」

「え?」

「先月、確か前半じゃなかった?バーベキューに行くときには、生理が終わっててよかったって言ってたよね?今月はいつ来てたの?来月の1日あたりって、当たらない?」

「生理?」

「うん」


「……」

「どうしたの?」

「え?えっと」

 いきなり、頭がくらくらした。今月、まだない。

「遅れてるの?」

「うん」


「え?でも今日21日だよ。かなり遅れてない?」

「……えっと、本当なら、10日にはきててもいいはずだから…」

「あ、でも桃子、たまに遅れることあったよね?前にもなかった?ほら、修学旅行のとき、なかなかこなくって、それで当たらずにすんだじゃない」


「うん、2週間遅れてた」

「今回は10日くらい?あ、ほら。夏バテしてる時とか、貧血とか、そういうときって、体のリズムも狂うみたいだし」

「1週間くらいは、遅れることあるけど、でも…」

 10日も遅れるなんて、そうそうない。


 どうしよう。ものすごい不安が押し寄せてくる。もし、もし妊娠していたら?

「桃子、兄貴とは、最近いつ…」

「え?」

「だから、その…。生理前?それともあと?」

「先月の真ん中あたりに」

「じゃあ、生理のあと?」

「うん」


 生理が終わって、数日してから。車で家まで送ってくれて、母がいなかった日。

「…、まださ、わからないよ。こういうのって精神的なことでも、遅れるみたいだし。桃子、もしかして麦さんのこと、そうとう気にしてるんじゃないの?」

「え?」

「そういうストレスから、遅れるってあるよ」


 菜摘は私を安心させようと、いろいろと言ってくれた。私はそれでも、怖さの方が勝ってしまい、なかなか菜摘の言うことを、受け入れられなかった。

「もし、もしそうだったら」

 そればかりが、頭をよぎる。


「検査してみる?」

「え?!」

「検査薬、あるじゃない。あれ、買って」

 私は思い切り、首を横に振った。


「どこで買えばいいの?買う勇気もないよ」

「私が買ってあげようか?」

 私はまた、首を横に振った。

「そういうの、誰かに見られたら?菜摘に迷惑かけられない」


「じゃ、とにかくさ、兄貴にメールで報告したら?それから、どうするかを決めても」

「できないよ」

「なんで?」

「だって、まだ確定したわけじゃないのに、心配かけられない。それに今、合宿中なのに」

「だけど、こういうのは兄貴にだって、責任あるんだし」


「……」

 涙が出そうになった。ものすごく怖くなって、震えも来た。

「桃子?」

「私、そんなこと言って、聖君に嫌がられたら」

「え?何それ?」


「聖君が、困っちゃったら?それがもとで、去っていったら?」

「兄貴がそんなことするわけないじゃん!」

「怖いよ」

「でも、桃子!」

 菜摘が何かを言おうとして、やめた。そしてため息をつき、

「そうだよ。確定してないし、遅れてるだけかもしれないんだから、そんなに思いつめないで」

と、優しく言ってきた。


「うん」

 私は泣くのをこらえ、菜摘に言われたように、悪く考えるのはやめようって思った。

 本当に貧血だったり、夏バテで、遅れてるだけかもしれない。そうだよ。2週間遅れたことだって、あったんだから。


 菜摘は、またメールするし、電話もするねって言って、帰っていった。

 聖君に、メールをしようかと思った。でも、できなかった。

 何を書いていいかわからなかった。明るいことも書けなかったし、寂しいなんて言葉も、送れなかった。


 今は、一気に会うのすら怖くなった。一人でいると、不安に襲われる。

 大丈夫、大丈夫、大丈夫だから。そう自分に言い聞かせ、自分の部屋で私はずっと、音楽を聴きながら、何も考えないようにしていた。


 夜、メールが来た。

>桃子ちゃん、起きてる?

>うん。

>今日さ、海、潜ったんだ。すごかった。感動したよ。こっちは天気よかったけど、そっちはどう?

>あまり良くなかった。夕方雷雨もあったし。

>だけど、きっともう梅雨も明けるね。


>そうだね。

>桃子ちゃんも、早く海潜れるといいね。

>うん。


 ねえ、麦さんは?どうしてるの?

 ねえ、聖君、私ね、私、もしかすると妊娠したかも。

 ううん、大丈夫。そんなことない。でもね、ずっと体調が悪いよ。

 聖君に会いたいの。今すぐ。でも会いたくないの。どうしたらいいの?


 頭にはそんな言葉が浮かんでいる。不安で涙も出てくる。でもそんなこと書けない。

>疲れてるでしょ?もう休んで。私ももう寝るね。

>うん、おやすみ。

>おやすみなさい。


 携帯を閉じた。ベッドに潜り込み、また恐怖に襲われそうになり、必死で大丈夫って自分に言い聞かせた。

 お願い。遅れてるだけなら、もうきてよ。こんな不安なの、もう嫌だよ。


 翌日はメールがなかった。菜摘は電話をくれて、ひそひそ声で、

「生理きた?」

と聞いてきた。

「まだ」

「そっか」


 菜摘も無言だった。

「お母さんには言ってないの?」

 やっと菜摘が、口を開いた。

「うん、言ってない。それに、言えないよ」

「そうだよね」


 また菜摘は黙った。そして、ちょっとため息をつき、

「兄貴が帰ってきたら、相談しなきゃ。それまでに生理がきたら、それはそれでいいけど、もし、まだだったら」

「うん」

「大丈夫だよ!兄貴がついてるんだからね」

「うん」


「兄貴を信じようよ」

「うん」

 怖い。怖い。今は何も考えたくない。


 そして、翌日の夜、聖君からメールが来た。

>明日帰るからね。明日は会えないかもしれないけど、その次の日にお店に来ない?俺、多分店の手伝いしないとならないから、会いに行けそうもないんだ。

>うん。わかった。

>じゃあね、店で待ってるね。


 あさって、会える。どうか、明日には生理になって、私。

 でも、そんな願いもむなしく、貧血でくらくらする中、菜摘と一緒にれいんどろっぷすに私は行くことになった。


「生理きた?」

「ううん」

「顔色悪いよ。今日大丈夫なの?」

「わかんない」


「え?」

「くらくらしてる。それに聖君に会いたくない」

「じゃ、何でいくの?」

 もう私たちは、江ノ島に向かう電車に乗っていた。

「会いたくないけど、会いたいから」

 私は震える声でそう言った。


「そっか。うん、わかったよ」

 菜摘はそう言うと、黙って窓の外を眺め、

「具合悪かったら、よっかかっていいからね」

と言ってくれた。


 片瀬江ノ島の駅には、葉君がいた。

「やあ、桃子ちゃん、久しぶりだね」

「うん、今日仕事は?」

「土曜だよ、今日」

「あ、そうか」

 曜日の感覚なんて、まったくなかった。


「桃子ちゃん、顔色悪くない?」

「貧血だって。夏バテしてるらしい。だけど、兄貴に会えない寂しさからかもね」

 菜摘はそんなことを、葉君に言ってくれた。

「大丈夫なの?そんなで江ノ島まで来て」

「うん」


「それだけ、早くに聖に会いたかったのか。あ、帰りは車で送ってあげるよ」

「え?」

「な、菜摘。桃子ちゃんも乗っていってもらって、いいよな?」

「うん、もちろん」

「ありがとう」


 菜摘は寄り添いながら歩いてくれた。

 駅はすごい人混みだったし、暑かったし、それでさらに私はふらついてしまっていた。

 

 店にようやく着いた。ドアを開けると、

「あ、いらっしゃい、桃子ちゃん、菜摘ちゃん」

とお母さんが元気に、出迎えてくれた。私は無理して笑顔を作った。


「暑かったでしょう?さ、どうぞ座って」

 テーブル席が空いていて、そこにお母さんが案内してくれた。

「あ、いらっしゃい」

 キッチンから聖君が顔を出した。すごい。真っ黒に日焼けしている。そのあとに、麦さんがキッチンから顔を出した。


 麦さんもいたんだ。

「あら、今日も手伝いに来たの?」

 麦さんが私に聞いた。

「いえ、私は」

「え?」

 また小さな声だったからか、麦さんは聞き返してきた。

「冷たいもの、飲む?あら、桃子ちゃん、平気?」

 聖君のお母さんが聞いてきた。


「はい、ちょっと暑かったから、くらってしちゃったけど、大丈夫です」

「なんか、体弱そうだもんね、見るからに」

 麦さんがそんな会話を聞き、私に言ってきた。う、なんかほんと、何を言っても、ひっかかるものの言い方をするんだな。


「お昼は?」

 聖君が聞いてきた。

「すませてきた。きっと混んでるだろうと思って、時間ずらしてきたんだ」

と菜摘が答えた。

「正解。まじで、15分くらい前まで、めちゃ混みだった。今、ようやくすいたところ」

 

「聖、麦ちゃん、お昼食べちゃって」

 聖君のお母さんが、カウンターに二人分のランチのセットを置いた。

「は~~い」

 麦さんは聖君と一緒に、カウンターの席に座り、お昼を食べだした。麦さんは、べったり聖君に寄り添い、笑い声をあげながら、食べている。


「なんか、これみよがしって感じ」

 菜摘は小声でそう言った。葉君が、

「気にすることないって、桃子ちゃん」

と言ってくれた。


 クラ…。また目が回った。駄目だ。今日は特にくらくらする。

 カラン。そこへ、ドアが開き、

「よう!聖、帰ったんだな」

と桐太が入ってきた。


「ああ、昨日帰ってきた」

「あ、穀物女もいるの?」

「何よ、それ~~」

 桐太はこっちも見ず、カウンターに座り、麦さんと聖君を真ん中にして、言いあいを始めていた。


「あ~~、うるさい女」

「うるさいのは、そっちじゃない。ああ、気分害した。もう帰るわ」

「麦ちゃん、手伝いいきなり頼んでごめんね」

 聖君がそう、麦さんに言った。


「いいの、いいの。どうせ暇だったし。あ、でも、店すいてるし、今なら駅まで送ってもらえるでしょ?」

「え?」

「いいでしょ?話もあるし」


「いいわよ、聖。店なら今、すいてるし。送ってあげたら?」

 聖君のお母さんにそう言われ、聖君は、私たちの方を向き、

「ごめん、ちょっと行って来る。おみやげあるんだ。ここで待ってて」

と早口でそう言うと、麦さんと店を出て行った。


「あ、なんだよ、桃子いたんだ」

 桐太がこっちに気づき、私たちのテーブルの方に来た。

「あの女、うざいよな、ほんと」

「……」

 やばい、さっきよりもくらくらする。


「桃子、顔色悪くない?」

 桐太が気がついた。

「真っ青だ。桃子、大丈夫なの?」

 菜摘も聞いてきた。


「桃子ちゃん、大丈夫?本当だ、顔が真っ青よ。リビングで休んだら?」

 聖君のお母さんにそう言われ、はいって答えて席を立った瞬間、目の前が真っ暗になった。

「桃子!」

「桃子ちゃん?」


 菜摘の声、桐太の声、それにお母さんと葉君の声も聞こえたような気がする。でも、遠くで。私は一気に意識をなくしていた。


 




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ