窓ガラスを通して部屋に入る月光が、僕の存在を教えてくれる。
僕はもう、半分以上闇に覆われてしまった。影が、僕を抱きしめる…。
腕は、傷だらけだった。生々しい線が僕の存在を肯定してくれる。生きていることを実感させてくれる。
同時に、どうしようもない虚しさが、僕を破壊する。
今宵も狂気に満ちた目で、線を刻む。
僕はどうして、こんなことをしているのだろう。
もうすぐ、虚しさが僕のもとに訪れる…。
目を泳がせると、ある異変に気付く。
「僕が、もう一人いる。」
何故だ?
触れようと、手を伸ばす。
すると、冷たい境界面を介してお互いの指先が重なる。
そうか、これは鏡なのか。
しかし、彼の腕には線がない。鏡に映る彼は、とても嬉しそうだった。
言葉では表現できない何かが、込み上げてきた。
同時に、僕はもう影となってしまった。
今の僕は僕でなく、闇が作り出した影である。そう信じたい。今の状況を直視するのは、あまりにもつらすぎる。
この方が自由になれる。本物の僕は、臆病者で、嫉妬深く、小心者。自分の思うようになんて行動出来ないのさ…。
気が付くと、その鏡に傷を付けていた。
僕の手を刻んだナイフは、再び僕を傷つける。
何回も、何回も…。
必死だった。精神の落ち着きや、余裕はなかった。
鏡を容赦なく破壊し続ける。ぶつけたり、踏んだり。
彼は笑ってくれた。僕に少しだけ、幸せそうに微笑んだ。
僕は泣いていた。大粒の涙を流して。
「ごめんよ。君を傷付けてしまって。」
許してくれ、嫉妬深いだけなんだ。
月光は涙と血と、どちらも鮮明に映し出していた。
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