決戦前夜 速水×舞
熊本城戦を明日に控え、校内は、活気にあふれている。
プレハブ校舎の屋上から、整備員達が走り回っているのが見える。
休憩に出てきた速水は、そのまま横になり、夜空を見上げる。
目の前には、綺麗な星空が広がっている。
明日は、いや、もうすぐ日付も変わるし、数時間後には、戦場に移動する。
そのわりには、落ち着いているものだと、自分でも思う。
慣れてしまったのだろうか。
かすかに、プレハブ校舎の階段を、上ってくる音がする。
この足音は、多分、恋人でもあり、同じ3号機のパイロットである、芝村舞のものだろう。
「ここにおったか、厚志」
「舞、星空が綺麗だよ」
舞は速水を、あきれた表情で見つめる。
「どうして、おぬしは、そう、ぽややんなのだ。少しは、芝村らしくできぬものか」
「あはは、周りがどう変わっても、僕は僕だからね。そう簡単には変わらないよ」
舞は、何も言わず隣に座る。
「舞、僕等もうすぐ、撃墜数3百だよ」
「絢爛舞踏か。私が人類の決戦存在になれと言ったこと、後悔しているのか?」
速水は、肩をすくめた。
「まさか」
「そうか、私は、後悔しているかもしれない。今回のことも、おぬしを失ったらと思うと……」
「舞らしくないね」
速水の声は、いつもと変わらないが、そこにはもう、いつもの、ぽややんとした速水はいなかった。
「らしくないよ。僕は、舞のカダヤだろ。なら、僕の命も、賭けて勝負しなよ。僕は負けないよ。君と同じ道を歩むと、決めたときからね。僕は負けないと、決めたんだ」
一瞬、ほうけた舞が、表情を引き締める。
「たわけ、ならば、そなたの力、見せてもらおう。明日の戦いでな。いくぞ厚志、はるかな高みへ」
舞は、立ち上がって、手を差し出す。
速水は、あの歌の、ガンパレードマーチの歌詞のように、舞の手を取った。
今なら私は信じられる
あなたのつくる未来が見える
あなたのさし出す手を取って
わたしも一緒に駆け上がろう
幾千万のわたしとあなたで
あの運命にうち勝とう
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