帰る場所 星従軍章 速水×森
「森さん」
「森」
「森りん」
「精華さん」
「精華」
「せいちゃん」
二つのお弁当と、コーラを持った速水が、恋人の森 精華を呼んでいるが、森は速水を無視している。
「はぁ」
速水は、上半身を士魂号の中に押入れ、整備をしている森の、Gパンにつつまれたおしりを見ながら、ため息をつく。
森を、怒らせるまねをした覚えはない。
浮気はもちろん、争奪戦も起きていない。
理由がわからないから、どう対処していいのかわからない。
しばらくして、速水は何か思いついた表情をして、森のおしりを、指でつっついた。
「きゃっ」と言う悲鳴と、ゴンと(たぶん頭を打った)音が聞こえた。
「痛い!何するんですか!」
「やっと、こっちを見てくれた」
速水はそう言って、ニッコリと笑った。
森は、「うー」と、うなって速水を睨みつけている。
「僕、精華を怒らせるようなことした?」
「……降下作戦……」
森は、それだけ言うと、すねたようにうつむく。
「……でもそれは、軍機で参加パイロットの僕達と、善行司令、原班長しか……あーっ、原班長!」
速水は、先ほど会った原の言葉『がんばってね。十六時まで、立入禁止にしてあげる』を思い出した。
「あなたが出撃した後、うちがどんな気持ちで待っているか、分かる?帰還した三号機が傷ついているのを見て、うちがどんな気持ちになるか、分かる?いつか、いつか、あなたが帰ってこないかもしれないって、とても怖いの、分かる?」
そう言って泣きじゃくる森を、速水がやさしく包むように抱きしめる。
「ごめん。でも、僕をもう少し信用してよ。この前だって、黄金剣翼突撃勲章と銀剣突撃勲章を取ったし、最近は士魂号も、壊していないでしょ」
そして、森にキスをする。やさしくて、長い、長いキス。
「ああっあっ」
首筋を這う、速水の唇に、声が漏れる。
だが、速水が服を脱がそうとした時、拒絶の言葉が出る。
「ダメ!うち、汗臭い。だから……だから……ね」
「僕はかまわないよ」
いくら言っても、速水の手から逃れようとする。
「きたないから……いや」
キラキラと濡れた瞳で、上目遣いに、速水の目を見つめる。
媚びるような視線が、いじらしく。愛しいと速水は思った。
「そんなことない。ねえ、もっと僕を感じてよ。僕は、もっと精華を、感じていたい」
速水はもう一度、精華にキスをした。
森は、速水が脱がした服を着ている。
さっきから、顔を赤くして目を合わせてくれない。
「精華、僕は必ず生きて帰ってくるから。君のそばに……僕の、帰る場所は君のそばだけだから、信じてよ」
森が、うなずく。
今は、それで十分だ。
「じゃあ、先にシャワー室使ってよ。片付けは、僕がしておく」
森がハンガーから出て行き、後には片付けをする速水と森の残り香が残った。
速水は、すっかりぬるくなったコーラを取り、いきなり、部屋の隅に投げつける。
「そこ!善行司令!原班長!なにしてるんですか」
あたふたと、善行と原が逃げていく。
「ったく。油断も隙も無い」
しかし、速水の口元には、笑みが浮かんでいた。
森の居場所は、原が教えてくれた。
整備員詰所で、仮眠を取っているはずだ。
もう、夜明けまで一時間もないが……
「ただいま」
そう言って、速水は、精華を起こさないよう、その寝顔にキスをし、手に星をかたどった小さな勲章を握らせる。
僕が、関わった人間以外には、決して知られることの無い作戦で、戦い、生き残った証だ。
そして、速水は、森のそばで睡魔に身を委ねた。
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