ガンパレード・マーチ短編集(3/17)PDFで表示縦書き表示RDF


ネタばれ、入っています。
ガンパレード・マーチ短編集
作:金城 ユウ



願ったもの 未来を見る歌、送る歌


「嘘だ!狩谷かりやが……嘘だ!」
 うろたえる速水はやみの腕を握り、まいが走る。
「速水、おのれの目で見たことを受け入れよ。信じたくないが事実だ」
「でも、でも……」
 パシッ。
 舞が速水の頬を引っ叩く。
「覚悟を決めろ、速水。このまま、何もせずにヤツに殺されるか。それとも、生きるために戦うか」
 舞が速水の瞳を、正面から見据える。
「時間がない。急げ」
 それだけ言うと、舞はハンガーに向かって走り出す。
 その場には、頬を押さえた速水が取り残された。



「決まったか?」
 コックピットに、飛び込んできた速水に舞が言う。
「わからない。でも狩谷を止めたい。彼に誰も殺して欲しくない」
「それでよい」
 舞はそっけなく言い。発進準備を続ける。



「嫌、なっちゃん!」
 悲痛な悲鳴にも似た、加藤かとうの叫びが聞こえる。
 今にも、幻獣の前に飛び出しそうな加藤を、ののみと田辺たべがしがみつくようにして、止めている。
「まつりちゃん、めーなの」
「加藤さん、いっちゃダメです」
 そんな三人に気がついた幻獣が、三人の方に向き直る。
「なっちゃん、うちや、祭や。わかるやろ。こんなん嫌や。元のなっちゃんにもど……もど……」
 最後のほうは、もう言葉にならない。ただ泣き声が漏れる。
 しかし、幻獣は三人を一瞥し、魂すら凍りそうな声で言った。
「死ね」
 口に、青白い光が集まる。
そして……



 間一髪で、増加装甲を展開した三号機が割って入り、青白い光の束(精霊リングブレス)を受け止める。
「舞!」
「安心するが良い。三人とも無事だ。今、来須くるすが避難させている。いかん!さがれ!」
 舞の言葉に、頭より体が反応した。装甲を切り離し後方へ飛ぶ。その瞬間、スキュラのレーザー攻撃にすら耐える、装甲が砕ける。
「速水、手加減しては、こちらがやられる。全力でいくぞ!」
「……わかった」
速水は、声をしぼりだすようにして答えた。



 大太刀が、折れると同時に、三号機がしりもちをつく。所々、白い血を流している。
「一号機、二号機は倒され、我等も武器がない。絶体絶命だな」
 舞が苦しげに言う。
「まだだ、止めないと……」
 しかし、機体がまともに動かない。
 幻獣が、止めを刺そうと近づいてくる。
 その様子を見て、五一二一小隊の隊員が、女子戦車学校の生徒達が叫ぶ。
 その時、三号機の右腕が青く発光した。
 そして、幻獣と三号機が光に包まれた。
「精霊手……」
 来須が呟いた。



「なっちゃん、嫌や、死なんといて!」
 加藤が、狩谷の頭を抱きかかえ泣きじゃくっている。
「おかしなヤツだな。俺はお前たちを、殺そうとしたんだぞ」
 傷の痛みにうめきながら、狩谷が言う。
「速水、お前さえいなければなぁ。こいつを、祭をたのむよ」
 静かに言って、目を閉じた。



 狩谷夏樹十翼長 享年十四歳 公式文書には、幻獣との戦闘にて戦死とある。



 舞は、教室の前に戻ってきた。もう、午前二時をまわっているのに、誰も帰宅していない。ただ、席に座り暗い顔をしている。
『わたしは今ひとりじゃない いつどこにあろうと ともに歌う仲間がいる 死すら超えるマーチを歌おう 時をも越えるマーチを歌おう』
 ……ガンパレード・マーチ?
 速水が歌っていた。ガンパレード・マーチを一人で……
「舞」
 速水が舞に気が付いて呼ぶ。
「加藤も、だいぶ落ち着いた」
「そう。今ね、狩谷が何をしたかったのかなって考えていた。何を願ってあんなことをしたのたか。なんて、結局本人にしかわからないけどね」
 そして、さびしげに笑った。
「厚志、私を殴れ。私が、絢爛舞踏けんらんぶとうを取れと言わなければ、こんな事には、ならなかったかもしれない。私を殴れ」
「やだな。僕が決めたことだよ。後悔はしていない」
 夜空を見上げる。綺麗な満月だ。
 しばらくの沈黙の後、速水はガンパレード・マーチを歌いだす。
 速水の歌声に、舞の歌声が重なった。



 教室まで、速水達の歌声が聞こえてきた。
「ねえねえ、みんなで歌おうよ」
 ののみだ。
「いつまでも、泣いていたら、めーなの。生きている人は、未来を見なくちゃめーなのよ」
 速水たちの歌声に、ののみのソプラノが軽やかに続く
「そうだな。みんなで狩谷を送ってやろうぜ」
 滝川の大きな声が、つぶやくように瀬戸口が、一人、また一人と歌に加わる。
 歌は、朝までやむことはなかった。


たぶんドラマCDを意識したのだと思います。たぶん……

はっきりと覚えていない…… 四年前だしなぁ。











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