ガンパレード・マーチ短編集(12/17)PDFで表示縦書き表示RDF


瀬戸口×壬生屋で書きましたが、瀬戸口×椿姫になってしまった作品。
椿姫についてはあとがきにて。
ガンパレード・マーチ短編集
作:金城 ユウ



記憶  What she hoped for.



 空中要塞スキュラのレーザーが1号機に直撃した。
「みおちゃん、応答してなの」
 ののみの呼びかけにも、1号機パイロットの壬生屋から応答はない。オペレーターの瀬戸口が、指揮車を飛び出していく。
「瀬戸口君、待ちなさい」
 司令の善行の声も無視された。仕方なく、善行がマイクを握る。
「1号機大破、パイロットの生死不明。今、瀬戸口十翼長が向かっています。各員、1号機周辺の安全を確保して下さい。若宮戦士、もし、壬生屋十翼長の戦死が確認できた場合は、瀬戸口十翼長を指揮車まで連れ戻してください」
「了解」



 両足を失い、焼け焦げた士魂号が、横たわっていた。装甲こそ焼け焦げているが、コックピットブロックは原型を留めている。
「壬生屋、無事か。返事しろ」
 瀬戸口が、コックピットハッチを叩いて叫ぶ。だが、返事はない。
 コックピットハッチを開こうとするが、融解し歪み、開かない。
 瀬戸口は、ハッチの隙間にカトラスを差込、力を込める。
 コックピットハッチがきしみ、一際大きな音を立てて開いた。
「壬生屋!」
 コックピット内は、サウナのようになっている。その中に壬生屋が横たわっていた。
 瀬戸口は壬生屋を、コックピットから引きずり出し、首筋に手をあてる。少し速いが脈が感じ取れ、呼吸もある。
 安堵のため息をつき、瀬戸口は通信機を口に当てる。
「壬生屋十翼長の生存を確認。これより離脱する」
「キョキョキョキョキョ」
 通信を終える前に、奇声が響く。振り向くとゴブリンが5匹、両腕を振り上げている。その手に握った得物があやしく光る。
瀬戸口は腰に手をやった、しかし、そこにあるのはカトラスが1本。指揮車から飛び出してきた為、他の武器を置いてきたらしい。
 瀬戸口は、カトラスを構えた。気を失っている壬生屋を守り、5匹のゴブリンを倒さねばならない。
「力が使えないのはきついが、通してもらうぞ」
 瀬戸口は、ゴブリンに切りかかった。



「ぐはっ」
 2匹目を切り倒したところで、背後から切られた。その衝撃に瀬戸口が前のめりに倒れる。カトラスが手を離れ、1メートルほど前に転がる。
 すぐに、起き上がろうとするが、ゴブリンがのしかかってきた。身動きができない。
「キョキョキョキョキョ」
 完全に押さえ込まれた、こうなっては人間の力ではどうしようもない。瀬戸口は、覚悟をきめた。
「すまん、壬生屋」
「キョキョッ?」
 突如、瀬戸口にのしかかっていたゴブリンの首が飛び、赤い血液のシャワーが降り注ぐ。
 瀬戸口が、顔を上げると迷刀鬼しばきを構えた、壬生屋の姿があった。
「み、壬生屋か?」
 瀬戸口が、呻くように問うが、壬生屋の様子がおかしい。
「お立ちなさい。祇園童子! 貴方の力は、そんなものではないはずです」
「椿……」
 瀬戸口を祇園童子と呼ぶその声に、はるか昔に別れた佳人の名を口にしていた。
「そうだ、やっと気が付いたか、キッド。いや、気付かぬふりをしていただけ、だな」
 巨大な猫が、瀬戸口の脇に現れる。5121小隊のマスコット的存在のブータだ。
「おっさん」
「さあ、我らの姫に助太刀しようぞ」
「ああ、まだ死ねなくなった」



「椿……」
「いいえ、今の私は、壬生屋 未央です。あなたが、瀬戸口 隆之であるように」
「だが俺は」
 椿は瀬戸口の言葉をさえぎる。
「あなたには、知られたくありませんでした。わたくしは、まだ自分の気持ちを、何も言っていませんから」
 瀬戸口に向かって微笑む。
「その時は、ちゃんと答えてくださいね」
 そして、ブータをそっと抱き上げた。
「わたくしの最後の願いを、守ってくれたのですね。ありがとう、ネコ大将。お願いついでで悪いのだけど、わたくしの記憶を封印してください。昔の記憶なんて邪魔ですから」
「姫…… 御意、仰せのままに」
「さようならです。童子、いえ、瀬戸口君、昔のことは忘れてください。もう、あなたを、縛るものはないのだから、あなたは自由です」



「起きんか!このたわけ共!」
 芝村 舞の大声で、壬生屋と瀬戸口は目を覚ました。
 周りを見回すと、5121小隊の面々が遠巻きにして見ている。
「我らが、どんなに心配したと思っている。それなのに、そ、そ、そんなことをしているとは、こ、こ、こ」
 怒りのためか、それとも他の理由があるのか、舞が顔を真っ赤にしている。
 壬生屋は、まだはっきりしない頭で、自分を見た。
 すると、瀬戸口の腕が背後から回り、まるで包み込むように抱きついている。ずっとこのままの格好だったらしい。
 壬生屋の顔がみるみる真っ赤になる。そして、壬生屋が、瀬戸口の頬を引っ叩く。
「不潔です!わたくしの意識が無いことをいいことに」
「ちょ、ちょっとまて、俺はおまえを助けにいってだ」
「問答無用!あなたを成敗して、わたくしも自害します。覚悟なさい」
 瀬戸口は逃げ出した。周りからは無責任な歓声があがった。
 椿姫の願いが、叶うのはまだ先になりそうである。


最後までお付き合いありがとうございました。

瀬戸口×壬生屋の予定で書きましたが、瀬戸口×椿姫になってしまった作品(笑
そのため瀬戸口×壬生屋は、後日書き直しております(汗

椿姫はドラマCDに登場した先代のシオネ・アダラ(以下、シオネ)です。人族の代表が、その名を語る。
壬生屋は、椿姫の記憶継承体(転生体)です。
そして、瀬戸口は『鬼』と呼ばれる幻獣の一種で、先代のシオネに仕えた戦士の一人。
ブータは、猫神族の英雄で先代のシオネに仕えていた。椿姫からは『猫大将』と呼ばれていた模様(5121小隊にいるブータは、芝村家で飼われていた、ただのニャンコとの情報も)











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