青の伝説 反抗作戦開始
2000年3月、山口県小野田。
「滝川百翼長、そいつで最後だ、逃がすなよ」
「わかっているよ、茜司令。これで、アルガナだ!」
滝川機がライフルで、きたかぜゾンビを落とした。
「おめでとうございます。滝川先輩」
整備士達が、声をかけてくる。
5121小隊も、だいぶ人員が入れ替わった。
自分以外には、司令の茜大介と、整備主任の新井木勇美だけで、他の者は今年徴兵されたものがほとんどだ。
「バカゴーグル!」
声と同時に、コーラが飛んできた。
受け取ったコーラはよく冷えていた。
「汗流したら、司令室にこい、だって。ほら、あなた達も整備はじめる」
新井木が整備士達に指示を出す。
すれ違いざま、滝川が「サンキュ」と声を掛けると、新井木も「おめでとう」と、小さな声で返した。
「豊浦が落ちた。今後は豊北、美祢、小野田を結ぶ線が、新しい防衛線となる」
司令室で、滝川と新井木に伝えられた情報は、予測できたこととはいえ、ショックなことであった。
「あそこには、遠坂と田辺がいたよな」
「部隊は全滅したが、二人は無事だそうだ」
滝川の問いに、茜が答える。
「ねえ、あの二人、うちに引っ張れない。人型になれているメカニックは貴重だし」
滝川が、少し考えて言う。
「厚志に頼むか、新井木」
「え、厚志君」
「今、竜師らしいからよ。芝村の力をうまく使っているみたいだ」
「それなら、僕も知っている。善行と色々上のほうでやっているみたいだな。一体なにをやっているのだか」
茜がため息をつく。
「でも、頼むなら、新井木のほうがよくないか」
と、滝川。
「ぼく、いやだな。今の厚志君、別人みたいだもん」
新井木が表情を曇らせる。そこに、
「本日付で、5121小隊に配属になった。悠木映百翼長です。ん、どうしたの?そんな暗い顔、YESじゃないよ」
「竜師、遠坂と田辺、両百翼長を5121に配属するよう手配しました。明日辞令が出ます」
「ご苦労だった、善行準竜師。これで5121も小隊としての形になっただろう」
「滝川百翼長がアルガナを取ったそうですよ」
厚志は意外そうな顔をした。
「滝川が…… 思ったより早かったね。確か去年が86だったと思うけど」
「ええ、今月だけで64の撃墜です」
「そうだ、僕からも祝いの品を送ろう。何が良いと思う善行」
厚志は楽しそうに笑った。
士翼号の前に立つ厚志の前に、岩田が現れた。
「あなたは、何を望むのです」
「世界を……」
厚志が答える。
「だが、その前に、僕と舞を利用しようとしたヤツラを叩く。どのみち僕の邪魔をするんだ。その前に潰す。岩田、僕と共に来い」
厚志が右手を差し出す。
「フフフ、もし断ったら」
「無理強いはしない」
岩田は厚志の右手を握った。
「いいでしょう。貴方は舞を、私のシオネアラダを守れなかった。それなりのことはしてもらいますよ、青。完全なる青のあなたには」
「うおー、すげー、この士魂号、新型か」
納入された士魂号の前で、数人の整備士と滝川が騒いでいる。
「違いますよ、滝川君」
「遠坂に田辺さん」
声に振り返った滝川が目を丸くする。
「この機体は、滝川君用にカスタムされたもので、狙撃仕様と言うところです。専用のスナイパーライフルもありますよ」
遠坂の言葉を継いで田辺が言う。
「速水君に頼まれて持ってきました。アルガナ取ったお祝いだって」
「あいつ…… うおー、早速乗ってみるぜ」
言うが早いか、階段を駆け上がる滝川、何か言おうとした遠坂と田辺は顔を見合わせた。
そして、滝川がコックピットに飛び込む。
一瞬の沈黙の後、「いっ・ ・ ・ いっ、岩ギャー!」コックピットで最終調整をしていた岩田に気づかず、飛び込んだのだろう。
おまけに、ハッチまで閉まったらしい。パニックになった滝川の悲鳴はしばららく続いた。
「滝川機、ミノタウロスを撃破。悠木機ゴルゴーンを撃破。敵、撤退します」
指揮車の中に、ののみタイプ、東原望のソプラノが響く。
「5分で撤退に追い込むとは、やりますね彼らも」
「敵、第2波きます」
「あれぐらいの敵、自力で倒してもらわねば困る。善行、後の指揮を頼む」
「また、ご自分で出られるのですか。竜師」
「僕のいるべき場所は、最前線だ。他にもあったかもしれないが、今はない」
厚志が出て行くのを見送りながら、善行がつぶやく。
「結局は、過去にしばられたままか」
「きゃ!」
悠木の1号機が、ミノタウロスの攻撃を受けてしりもちをつく。
「悠木さん、さがれ!」
ミノタウロスと1号機の間に、滝川機が割り込み、アサルトライフルを乱射する。
「くそ!きりがねえ。茜なんとかしてくれ」
「3号機、鷺ノ宮。1号機と2号機の支援。スモーク弾急げ!」
茜の指示が飛ぶ。
「1号機、補給車までさがれ。新井木、今から1号機が行く、補給と応急処置、5分でやれ!」
戦況は膠着状態だ。だが、士魂号L型やスカウト達ではいささか分が悪い。少しづつではあるが、防衛線に穴があき始める。
「茜司令、敵の第5波来ます。か、数おおよそ……」
「どうした、数はいくつだ」
「おおよそ、2500」
「敵増援来ます。数おおよそ2500」
東原の声が響く。
「そろそろいくか、壬生屋、瀬戸口」
両脇に、赤と銀の士魂号を連れ、厚志が青い士翼号を起動させる。
そして、オープン回線で(豊北、美祢に、展開する部隊にも中継される)指揮下にある将兵達に告げる。
「反抗作戦を開始する。目標は九州の奪回だ。全軍抜刀、全軍突撃(オール ハンドゥ ガンパレード)我に続け!」
厚志は、戦場を駆ける風となった。その動き、まさに絢爛舞踏。息をするように幻獣を葬っていく。
その心中には、1つの約束があった。彼が愛した少女との、果たされることのない約束が……
「舞、熊本に帰ってきたよ」
厚志の前には、小さな墓が3つ並んでいる。
「だが、僕の戦争はこれからだ。僕は世界を征服する。芝村ではなく、速水厚志として…… それでも、ついてきてくれるかい?」
厚志が振り返ると、反抗作戦に参加した、旧5121小隊のメンバーが立っている。
そして、だれも厚志の言葉を否定する者はいない。
「それじゃあ、行こうか。世界を取りに……」
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