僕は今、自殺をしようとしている人を見かけました。
「どこかへ消えろ。自殺するんだよ」
そう言い放つ少女。
学校の屋上。
せっかく美術部の課題の絵を描こうと思ってきたのに、何故か見つけたのは自殺をしようとする少女でした。
「だから消えろ。今から死ぬんだよ」
屋上に広がる少女の声と、耳に劈く風の音。
「あ、けど……だめだよ。死んじゃったらっ」と僕は言う。
「お前には関係ない。それよりお前は誰だよ? 私が今から死のうと関係ないだろうが」
「ぼ、僕は2−2の島田幸って言うんだ。君もここの高校の制服を着てるからこの高校の生徒でしょ? だったらもう仲間だよっ!」
僕は自分で何を言っているのだかすでにわからない。
「2−2……。私は2−3の奴だけどさ……あんた私の名前を知ってるかい?」
「え……いや……」
「名前も知らないくせに仲間だとかほざいてるんじゃない」
「じゃあ名前教えてっ」
僕は言う。
「いやだ。っていうか消えろ」
少女はにらんでくる。
「で、でも何で死のうとするのさっ? だってまだ若いんだから……」
「若かったら自殺しちゃいけないのかよ?」
「まだこの先可能性はあるし……」
「はっ? 可能性だ? ふざけるな。可能性なんてものがあれば私はこんなところに立っていない。というよりもお前みたいな存在もむかつくんだよ。何も出来ないくせに絡んできやがって」
少女は苦々しげに呟く。
「でも……原因は何なのさ?」
少女はその言葉を聞いたとき、ギッと一瞬僕をにらんだ。
しかし少女は重たい口をあけ……
「いじめだよ」と言い放った。
僕は驚く。
2−2ではいじめなんてものはない。
どちらかというと仲間意識の強いクラスだとも思う。
「別に私がいじめられたって言うわけじゃない。私の……親友がいじめられてたんだよ」
少女はギッと唇をかんだ。
その唇からはタラリと真っ赤な血が流れている。
「親友が……?」
「あぁ。私は親友を助けてやる事が出来なかった! 先生にも周りにも訴えたけど……だめだった! それで……今、あいつは自殺未遂をして、病院で意識をなくしてるんだよ!」
少女は叫ぶ。
「でも……もしかしたら死なないかもしれないでしょ?」
僕は言う。
「……」
少女は黙りこんでいる。
「だからもしその子が目覚めたときに助けてくれる子は誰もいなくなるじゃないか! それにいじめがなくなったとしても君が自分のために死んだ……って罪の意識に縛られたらどうするんだよ……」
僕は訴えた。
「……けどもう私は世界に失望してるんだよ」
少女はその一言を発すると、グラリと体を揺らしながらフェンスから手を離した。
「ぁっ……!」
僕は触れない指先を必死に伸ばした。
少女の体は空を舞い、ドサリと落ちた。
僕はすぐさま階段を駆け下りた。
少女の周りには人が群がる。
「うわー、こいつついに自殺しやがったぜ」
「きもっ」
などと周りは酷い事を言っている。
そして先生たちも群がり
「今、救急車を呼んでいる」と単調な声で伝えた。
周りの奴らはこの少女がどんなに苦しんでこの決断を下したのか、気付いていない。
僕はギュッと手を握り締めた。
そして僕らの耳に救急車の音が聞こえる。
僕は救急車を目に映す。
救急車に少女が乗せられる。
僕の耳には「この状態だったら助かるだろう」と声が聞こえた。
ホッとした。
けれど周りの奴らのほとんどは関心なさそうに話している。
先生も学校の評判が落ちる……などと喋っていた。
僕は悲しくなった。
確かに少女がこの世界に失望する理由もわかった。
そして……
「大丈夫?」と僕は微笑む。
「……お前は確か……」
少女はボーッと病院の白い天井を見つめて呟いた。
「島田幸。今日は君の喜ぶ人を連れてきたんだ」
僕はその子を呼んだ。
少女は目を見開く。
「真紀!?」
少女は叫んだ。
「有香……ごめんねっ。逝かないでよっ……私、一人になっちゃうよ」
真紀と呼ばれた子は目に薄っすらと涙をこらえている。
「真紀……お前、助かったのか?」
少女はギュッと抱きしめる。
「うん。目を覚ましたら、この島田君て子が居て……」
少女と真紀さんは僕の方を向いた。
「あはは」
僕はニッコリと笑う。
そして僕は思い出したかのようにたくさんの本を取り出した。
「いじめについての……本?」
「そう。いじめがなくなるように協力するよ。僕のクラスの担任は結構生徒について親身になってくれるし、それに僕の友達も協力してくれる! だから、もう負けないで」
僕は優しく微笑んだ。
少女は優しく微笑み……
「私は雪野有香」
「えっ?」
「名前を知ったからもう仲間だろう?」
ニヤリと笑う。
僕は弾む心で……
「うん。そうだね!」
窓に差し込む光が希望を映し出していた。 |