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叶雑貨店
作:零桜



一人目:犯したミス


紗枝は家に帰ると早速パソコンの電源を入れた。

♪〜〜

『WELCOME KYOUZAKKA』
オリジナルらしい画面が開き、真っ白な画面が現れた。
紗枝は、デスクトップにある『(きょう)』と書かれたアイコンをクリックした。
其処には、消したいものの入力画面と追加したいものの入力画面が表示されていた。
「わぁ。でもこれで本当にきえるのかな?早速試してみよ!」
紗枝はとりあえず、嫌いな数学を消してみることにした。
「学校の数学・・・っと」

カチッ

「消えたかな?あっ数学の教科書がない!プリントも時間割にも載ってないし
お母さん、数学がなくなったよ!」
紗枝は思わず母親にそう言った。
「はぁ!?紗枝何を言ってるの。数学なんてあるわけないでしょ!?そんなもの私達の時代で廃止したでしょ!?可笑しな子ね」
紗枝はこのとき、実感した。あのパソコンは本物だと。
「フフッこれで、私をからかってる人達を消すんだ。そして私の華の高校生活を満喫するんだ!」
紗枝は引き出しから使わないと思っていた学年名簿を引っ張り出した。
「・・・・・・・よしっ!これで全部ね」

カチッ

「これで消えたはず!明日の学校が楽しみだわ。
あっそうだ消えた分だけ増やさなくちゃ」

次の日

「おはよう」
「あぁ、紗枝おはよう」「おはよう紗枝、早いね」
案の定、紗枝が昨日入力した人物は皆消えていた。
しかし・・・
「ごめん紗枝。今日の掃除変わって貰える?今から彼氏とデートだから。お願いね!」
「ううん。いいの、気にしないで」
自分にとって不都合なこととは、常に起きるものなのだ。
そしてそれを、人に頼む人も・・・。
紗枝の頭にはあのパソコンのことしかなかった。

カチャカチャカチャッ・・・
「よし、この子もいらない。いらない。いらない。消えちゃえフフッアハハハ」
甲高い、狂ったような声を上げながら、キーボードを叩く。
そして電気をつけるのも忘れて、パソコンに没頭する紗枝。
するとふと顔を上げ、思い出したように呟いた。
「そうだ。あの雑貨屋さんにお金を払いに行かなきゃ。バイトでのお金もまだあるし」

カランカラーン
「いらっしゃい。この間のパソコン、いかがですか?」
紗枝は上機嫌で店主にお金を渡しながら応えた。
「もう、最高よ!これからはデジタルの時代ね」
「それは良かった。私も良いモニターを持てて、幸せです」
「利害が一致したってことね!それじゃあお金は払ったから、また気が向いたら来るわ」
紗枝は満足げに笑いながら、手を振り店を出て行った。
「えぇ、お待ちしております」
その後姿を店主が深々とお辞儀をしながら、見送っていた。

数日後・・・
「お母さんってば最近、顔を見れば勉強勉強って!私にはそれより大事なものがあるんだから!・・・そうだ、お母さんも消しちゃおう!そうよ、そして新しい優しいお母さんを入力すればいいんだし♪」
カチャカチャッ・・・カチッ
「よしっ」


次の朝。
紗枝はいつものように上機嫌で学校に行った。
「みんなお早う」
「えっそうなの?初耳ぃ」「私もだよ!」
紗枝の声に気づいている様子も無いクラスメート。それどころか隣を通り過ぎても無視している。
「ちょっとどういうこと!?なんで、私の好きなクラスになったのに!嫌いな人は皆消したはずなのに!み、みんな消さなきゃ!私の楽しい高校生活を作るの!えっあれっパソコンが無い。そうだ、あの雑貨屋さん」
紗枝は思わず学校を飛び出した。しかし、誰も紗枝のことには気にもしていないようだ。

カランカラーン
「すみません。パソコンを売って下さい!いくらでも買うわ!買うから。ねぇ店主さん、ちょっと貴方まで私を無視するの?」
「やぁ、いらっしゃいませ。とても暗い表情(かお)をなさっていますが・・・どうなさいましたか?そんな貴方にはこのパソコンがお勧めですよ」
「パソコンは高くて、私にはとても買えません」
その店主の目は紗枝の後ろを見ていた。其処には、黒く長い髪の少女が立っていた。
「えっ!?どういうこと!私に売って!この子だって高くて買えないって」
「大丈夫ですよ。お金ならいつでも結構ですから。貴方にこのパソコンを1万円でお譲りする代わりにモニターになって頂くだけです」
紗枝の言葉など聞いていないかのように続ける店主。
『会社や学校の貴方の嫌いな事・物・人を消してみませんか?クリック一つで貴方の楽しい生活が待っています』
「本当ですか?だったら、買います」
「ありがとうございます。但し注意点が一つだけ。
決して自分の両親や血縁者を消さないようにしてください」
少女は不思議そうに首を傾げた。紗枝は初めて、自分の犯したミスに気づいた。
「なぜですか?消したらどうなるんですか?」
(えにし)のバランスが崩れて、貴方の存在が消えてしまうんですよ。ただ消えるだけで、消したものの分だけ生きるので、生きながらの死の状態になります。ですので気をつけてください」
「わかりました。気をつけます。それじゃあ」
「ありがとうございました」

「あ・・・あっあ・・・・あ・・・そっそんな」
紗枝は消えたままのこれからの自分の生活を思った。何人消しただろう。
あぁ消さなければ良かった。
紗枝は今更ながらに後悔した。
「い・・いや・・・いや・・・いやぁぁぁぁぁぁぁ」

紗枝の存在を知るものはもういない。













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