箒星学院高等部昼休み、
またまた「カレカノいない同盟」の一言から事件は始まる・・・・
「ねぇ、しーちゃん」
「何?」
ポッキーをかじりながら、尋ねられた方向を紫織は向いた。
「色鳥君と付き合い始めたのっていつ?」
「白と? う〜ん、確か中一だったかしら」
紫織は古い記憶をたどっていく。
告白の言葉は印象的だったが、
時期はそこまで覚えてない。
なんせ、生まれたときから一緒にいたので、
自然に恋人になっていたというほうが正しいのだ。
「だけど急にどうしたの?」
もっともな疑問に、クラスメイトは溜息をついた。
「それがね、色鳥君のファンクラブがあるでしょう?
どうもしーちゃんのこと調べてるみたいなのよ。
翡翠ちゃんみたいに呼び出しとかかからないといいけど・・・・」
「心配しなくてもいいだろう? 紫織は空手三段だぜ?」
快が話しに割って入る。
今日の休憩時間は修と将棋。
お互いに一歩も引かないあたり、
この勝負は夜まで持ち越されそうだ。
「だけど、もしもってことがあるでしょう?
そのときどうするつもり?」
鋭い指摘だが、快は平然として答えた。
「修、少し待った。だから心配要らないって。
どうせお前らが動くし、俺達もいる。
何より白のやつが俺たちより早く片付けるさ」
危機感などない。
なんせ、長年の付き合いで白真がどれだけ紫織のことを思っているか、
想像しただけでも怖い。そう、怖いのだ・・・・
「まったく、TEAMは危機感の欠片もないのかしら・・・・」
そして放課後・・・・
「やあっ!」
道場には紫織の声がこだます。
先輩相手にも何のその、快勝だ。
「さすが美原だな」
「ああ、美人だし、才女だし、しかも空手三段!
白の奴が羨ましいぜ」
隣で練習している合気道部の男子からは、
憧れのマドンナ的な言葉が漏れる。
「だけどよ、最近白のファンクラブが怪しい動きをしてるらしいぜ」
「それ本当!!」
翡翠がひょっこり現れた。彼女は合気道部である。
「本当だったら教えて!
紫織のピンチは私のピンチなの!」
親友思いの彼女は食い下がる。
「それがさ、あいつら美原を待ち伏せしてやっちまおうってことらしいぜ。
しかもバスターまで雇ったって噂でよ」
それを聞いたとたん、翡翠はすぐに飛び出した。
バスターが相手となれば、さすがの紫織も手加減できなくなる。
その前に自分が片付けてしまうしかない!
「美原紫織か?」
声をかけられた方向にはバスターと思われる男達と、
ファンクラブの女子たち。
「違うわよ、だけどその子も邪魔なの。やって頂戴」
いつか翡翠を呼び出した上級生。
白の彼女は自分だと勘違いされたこともあった。
だが、いつも紫織が簡単に片付けてくれていた。
自分のやさしさを知っていてくれたから・・・・
「そうか。まっ、可愛ければ問題ないがな」
ぞろぞろと翡翠のほうに攻め寄ってくる。
「私はTEAMのバスターよ!
バスター相手には手加減しない!」
翡翠はさっと構えると、男達は爆笑した。
「はっはははははは!!! あの「TEAM」のか!!
その程度の覇気で何ぬかしてやがる!!」
翡翠に振り下ろされたこぶしは簡単に空を切り、
「やっ!!」
男は十メートル近く投げ飛ばされた。
合気道部であることを、これほど感謝したことはない。
手加減をまだすることができるからだ。
「このアマッ!!」
すべて言い終わる前に飛び蹴りが入る。
「紫織!!」
「翡翠!! ダメでしょ!! 治療兵がこんな奴ら相手にして、
もし怪我でもしたらどうするの!!」
「だって、紫織がピンチだっていうから!」
涙目になって翡翠が言うと、
「大丈夫よ。「TEAM」に手を出したこと以前に、
翡翠に手を出したこいつらに思い知らせてやらなくちゃね・・・・!」
そのときの形相に、翡翠以外のものが悪寒を感じた。
「当分、私達に手出しできないようにしといてあげなくちゃね!」
そして紫織の周りに無数のナイフが出現する。
「ちょっと待てよ・・・・!!
この女まさか「アートの女王」か!!」
「間違いねぇ!! 最悪だ!!」
「アートの女王」。それは紫織の掃除屋界での通り名だ。
とある空間に仕舞いこんであるさまざまな武器を、
自分が取り出したいときに取り出して戦う換装士。
特に紫織は趣向を凝らした戦いをするので、
その名がつけられたのである。
「その通り。タイトル「死の彫刻」!!」
「ぎゃああああ!!!」
そして帰り道・・・・
「まったく・・・・随分ひどいことやったな」
「ごめんごめん、ついね」
快の苦労を一つ増やしたことに対して、
紫織は軽く謝った。
「だが、翡翠も無茶すんなよ。
お前は大事な治療兵なんだからよ」
「ごめんなさい」
傍から見れば間違いなく告白にも取れないこの言動。
しかし、翡翠がそれに気づくわけもない。
「それと、紫織に一つだけいっておきたいことがある」
「何?」
「白とお前が付き合い始めたのは中一の五月十三だ。
白の奴に昼間の会話言ったら嘆いてたぞ」
おそらく泣きついたに違いない。
快の制服がなんとなく詩話になっている気がする。
「そっか・・・・だけどね、
日にち以上にあいつの告白の言葉のほうが印象的だったのよ」
「何って言ったの?」
わくわくしながら翡翠はその言葉を待つ。
快もそれは聞いてないのか耳を傾けた。
「あいつね・・・・」
「はくしゅ!!」
「何だ? 風邪か?」
剣道の防具を脱ぎながら修が尋ねる。
「いや、紫織が俺のことを惚気てるだけだ」
「さいですか」
悪友の惚気などさらさら修は興味ない。
「だけど、翡翠が今日も紫織と間違えられて絡まれたみたいだからさ、
ファンクラブの雇った掃除屋をつぶしにいかねぇとな」
怒ってる! 穏やかに言ってもキレてる!
修は今宵も快の苦労が増えそうだと溜息をつく。
「だからさ、紫織に伝言頼むよ。
『告白の日は忘れても、俺の誕生日だけは覚えてろ!』って」
白真の誕生日は五月十三日だった・・・・
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