女子が周りに多いからといってハーレムとは限らない
寿「お兄ちゃんお帰り」
俺「ただいま」
寿「……」
俺「?」
寿「お兄ちゃん、私に何か用があったんじゃないの?」
俺「いや、ないよ」
俺は即答した。
寿「……何年経っても、お兄ちゃんのことがよくわからない」
俺「スズは俺検定1級ってところだな」
寿「それ何級まであるの?」
俺「十段」
寿「……。それじゃあ、私帰るね」
俺「うむ、家まで送っていこう」
寿「家、隣だよ」
俺「距離など関係ない。妹の安全を確保するのは、兄として当然の行為だ」
寿「お兄ちゃんは、本当に過保護だなぁ」
言ってることとは逆に寿々花は嬉しそうだ。
寿々花と一緒に外に出る。
寿々花が、俺の顔をまじまじと見つめてくる。
俺「何だよ」
寿「お兄ちゃんが、本当のお兄ちゃんだったら、どんな感じなんだろうなって」
俺「あんまり変わらないんじゃないか?」
寿「そうだね、そんな気がする」
俺「だけど、本当の兄妹じゃ結婚できないじゃないか」
寿「その約束、まだ有効なんだ……」
寿々花は少し呆れている。
俺「何だよ「おとなになったらおにいちゃんとけっこんする」ってスズが言いだしたんじゃないか」
寿「そのようなことを言ったのは覚えているけど、なんか、ちょっと違う気も――」
俺「スズは約束を守る子だと、俺は信じている」
ふぅ、危ない危ない。
本当のことを思い出されるところだった。
本当は「おとなになってもおにいちゃんがモテなかったら、しょうがないからスズがけっこんしてあげる」だ。
事実、俺はモテないのだから特に問題はない。
が、情けないからね、しょうがないね。
寿「じゃあ、お兄ちゃんが他の人と結婚したら、私はどうなるの?」
俺「さあ?」
寿「さあ?って、はぁ……」
寿々花は溜息をついた。
寿「お兄ちゃんって自然と女の子が集まってくるんだから、もっとモテてもいいと思うんだけど」
俺「全くだ」
寿「今日、初めて会った凛さんと一緒に夕飯食べたりするほど、積極的なのに」
俺「うーん。男としてより、便利なロボットみたいな扱いなんじゃないかな」
寿々花は哀れみの目で見つめてくる。
俺「それより、俺と違ってスズはモテモテじゃないか、約束どころじゃないんじゃないか?」
寿「……そんなことないよ」
寿々花の表情が曇った。
まずいな、以前あったストーカー被害のことを思い出させてしまったか。
俺「俺はスズが誰と付き合おうと邪魔をする気は無いし、もしスズが他の男と結婚したら離婚するまで待っててやってもいいぞ」
もっとも、相手が酷い男なら兄として強制介入するが。
寿「また、さらっと嫌なことを……」
俺「スズが誰を愛そうと最後に俺の横にいるなら、それでいいさ」
寿「……」
寿々花は複雑な心境という表情をしている。
俺「ま、中身まで含めて考えれば、俺よりいい男がそんなに沢山いるとは思えないがな」
寿「お兄ちゃん、やっぱり少し気持ち悪い……かな」
寿々花は小声で言った。
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